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妹が波乱万丈な恋愛をしていた。一方、ヒードランは壁や天井を這いまわっていた

めちゃ簡潔に言うと、妹がホスト兼ストリーマーと婚約してた。

相手はとある離島の父子家庭で育った、30手前ながら若々しいイケメンだ。
ウィッシュの方のDAIGOと鬼龍院翔を足して2で割り、少し素朴にしたような顔立ちをしている。

最初オレと母親は彼の職業を「配信者」として紹介されていた。

妹は随分経済的なワガガマを彼に叶えていてもらっていたようだし、疑いもしていなかった。
だがそれは真実でありウソでもあった。彼の本業はホストで、配信は副業だったのだ。

彼が本職を隠してた理由はただ一つ。「真剣な恋愛だと信じてもらえないだろうから」。

では何故発覚したのかというと、それは妹の後押しが原因だった。
「本気で私と結婚したいなら、実家に挨拶に来て」
そう彼に言い放った。

彼は悩んだが、遂には母親へ会い、告白した。
そして母親はこう返した

「じゃあ人とナリを見に行こう 職場まで」

かくして、彼の勤めるホストクラブに50代母親と20代妹の親子2人客が訪れることになった

は?

ホストクラブは一時ザワつき、異様な空気に包まれたという

彼は同僚・店主などには前もって「婚約者とその母親が来る」と言っていたが、いざ実際にそれを目の当たりにすると混乱するのだろう。
(当然他の客には「婚約者」という素性は明かせないので、親子でホストへ遊びに来た変な客扱いになる)

妹の隣には売上トップ5ホスト(彼の事だ)、そして母親の隣にはトップ4のホストがついたが
2人とも「義理の母親による職場見学」という異常事態に、新人かと見紛うほどに緊張し空回っていた。

見かねて店長が母親の横に付き対応したという。

年代も近くバツ1同士なこともあって意気投合し、それからは和やかで話も弾んだ。

他の客が頼んだシャンパンタワーが気になって見に行き、「他所をジロジロ見るな、構うな」と妹に言われた後「全然見ても大丈夫ですよ」と店長にフォローされたらしい 何してんだアンタ

ともかく職場見学は無事終わり、しっかりと誠意を魅せた彼はこう言った。

「俺の地元まで嫁いできて欲しい。そこで昼の仕事に転職する」

次は妹が応える番だった。

日本国内とは言え、離島は離島だ。東京で生まれ育ち、蝶よ花よと甘やかされた妹。彼の精一杯の誠意を見なければ苦渋の選択だっただろう。

果たして妹は了承した。

こうして妹の婚約はふわふわとした未来から、地に足の付いた現実へと変わっていった。


そして、俺は一切それに関わらなかった

妹の将来は妹のモノであり、兄だからといって口出しなんて以ての外だ。


なんてカッコつけは建前で。

社会に一度も出てない1浪2留大学生という事実上の無職が口出せるわけ無いだろ。


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