懲役太郎 心の面会室 #139 刑務所出所者と携帯電話(2020年2月18日)

はい、おはようございます、懲役太郎です。

新聞をちょっと読んでおりましたら、『就職するのに携帯電話が無いから就職できない』と。まああの、経済的に困窮した人が仕事を探す、要するに就職をする時、面接をした時に連絡先っていうことで携帯電話が無いともう…その時点で無理ですもんね。

で、何故それで携帯電話が持てなくなるのか?っていうことは、例えばこの新聞にある人は病気で入院したと。入院してる間に携帯電話が滞納した、それで払えないからもう駄目になってしまった。これ、携帯電話が払わないとどうして駄目になるか?っていうと、携帯電話契約自体はできるんです、滞納になろうがどうしようがどうなっても。ただ、どういう事かっていうと分割、端末を分割で(支払いを)してるとこれ『クレジット契約』になるもんですから。クレジット契約が、要するにいわゆるブラックになってしまって携帯電話が使えなくなると。端末だけの契約はできると思うんですよ、違うキャリアに行ったりしたら。でも、端末自体を買わなきゃいけないけど実質契約できないようになってる、ってことなんですね。滞納したから駄目じゃなくて、クレジット契約ができないから次携帯電話を買うっていう時には、まぁ現金で買えばいいですよ、現金でもう端末買っちゃえばいいんだけど、そういうわけにはいかないですよね?携帯電話代が高いから。

で、例えば反社の人間も携帯電話契約をすると、『反社会の人はクレジット契約できませんよ』っていうふうになってるからどうするかっていうと、現金で一括で買うということであれば、キャリアとは契約をしちゃ駄目っていうふうにはなってるわけじゃないんですよ。ちょっと話はややこしいですけど、携帯が持てなくなっちゃうっていうことはそういう事なんですね。まあ入院してる間に滞納してそれが何ヶ月も続いてっていうことは、今って入院ってそんな数ヶ月も無いもんですから、ていうのは滞納しててたまたま運悪く入院してそれを支払わないと、もう完全に契約から解除、携帯を止められて契約自体を解除、っていうふうになっちゃうとこうなりますよね。次いって、じゃあそれから退院しました、就職しようとしても、まあどこの会社でも面接行った時に、携帯電話が無ければ「ちょっと…えっ?そんな人は」ってなっちゃうんですね。


というよりも今あの、面接して「じゃあいつ来て下さい」とか、例えば採用します・不採用ですって言うのもメールや携帯でのやり取りが殆どなもんですから、「いや携帯持ってません」ってなるとまあ中々難しいということなんですね。だから、そういった一般の人でも携帯が無いと就職ができないと。仮に、そっから再起を図ろうとしても、そのなんて言うんですか、それが難しいっていうことなんですね。

で、この中で一番問題っていうか、問題というわけじゃないんですけど私がああなるほどなあと思ったのは、そういった普通に働いてる普通の社会生活を営んでる方でもそうなのに、刑務所から出所した人間ならなおさらだ、ってことです。今の論法でいくといきなり逮捕され、いきなりって本人が悪いですよ?本人が悪いですけど、逮捕されました、当然支払いなんかできるわけもなくそのままになると携帯が勝手に止まっちゃうし、まあ親族や身内、親兄弟・奥さん・彼女が、そういう事やってくれればいいですよ、ちゃんと。あるいは2回目3回目ってなると、もうわかってるんで「そこだけしっかりしてくれ」つってやるんですよやっぱり。そういう事ができるように手続きを取るっていうことができるんですが。初めてだったらわかんないですもんそんなの、そんな余裕も無いですし。ましてやその、(以前どっかで)言ったように接見禁止なんかになってしまえばもうどうしようもないですよね。それが数ヶ月続けばもうそういう事ですよ。

まぁ今、よく言うその若い子たちでよく捕まってるっていうのはオレオレ詐欺系・特殊詐欺系で捕まると接見禁止でずっとっていう事になりますから、そうなるともうそんな事も構ってられないしそういうことになっちゃう。で、実際じゃあ接見禁止が取れた、そんな事ももう、家賃も電気代もガス代もそのままになっちゃって、結局そのまま保釈も効かず執行猶予もならず一発実刑だったら、そっから4年5年(懲役に行くことになる)、ですよ。で、出所しました、じゃあ、ってなるともう全てが駄目になってますよね。そこで携帯電話契約なんてできるわけがないですよ。そうなると、そのいくら更生意欲があってその中で仮に反省してどうしようこうしようって言ってもその時点で躓くんですよね。はい。


まあ最近のことはちょっとよく私もわかりませんが、昔であればその…組員なりその関係者が出所すれば、まず携帯ですよね。とにかく携帯が無いことにはどうにもならないんで。いわゆるプリペイドの携帯はあるんですけども、やっぱり使い勝手が悪いと。(プリペイドの側から)かければものすごいお金がかかってっちゃいますし(すぐにプリペイドの残高が無くなっちゃう)、そうなるとワンコールだけ入れてこっちでかけ直すってことでとりあえずそれ持たしとく、っていうふうになるんですけど、実際それでスマホみたいな形が使えるわけでもなく、やっぱり使い勝手が悪くなるっていうことで。

反社会的なところっていうのはまあ誰かが、兄貴分が持たすとか誰かのを持たすって(形で持たせてた頃もあった)。でも携帯自体、電話自体が人に貸しちゃいけないような形になってるものですから。会社とか親子関係とかっていうならまだしも、個人間で渡した時に色々問題が起こるってこともあるもんですからそれも中々できないと。まあ、正直その、いくらね?そのそういう関係であっても他人なんで、そのまま逃げられる、課金する、何かしちゃって沢山使ってしまえば、あとあと問題になるっていうことなんですよ。結局出所してきたばかりの人間が携帯電話代が払えるわけでもなく。そうすると、ますます孤立するっていうか、ますます、っていうことなんですよね。

だからその…一般社会での生活困窮者と、罪を犯して出所した人とは一緒にしてはいけないんですけど、ちょっとした、たかがその携帯電話滞納だけでも、それぐらい再就職がしにくくなるっていう、こういう世の中なんですよね。ここはやっぱり、これだけそのルールが厳しく、色んな事が曖昧じゃなくなってきちゃってると中々難しいんだなぁって思います。はい。


では、どうしてこれほど携帯電話契約が難しくなったか?っていったら、それはやっぱり悪い事する人が多かったからなんですよ。割と携帯電話って簡単に借りれたんですよね、本当に。本当に簡単に借りれて、そんなに難しくなかったんですよ、何台も借りれたしっていうふうだったんです。

ひとつの所で滞納しててもよその会社に行けばオッケーだったりっていう事があって、『あっ、もう次からちゃんとやろう』なんていうことができたんですけども、今は大手キャリアは全部繋がってますし、やっぱりその…偽造、ありえない名前を入れる、その、簡単に免許証を偽造してコピーだけでよかったんですよ(※携帯電話契約時に本人確認として免許証などを提出するが、昔は原本の提出ではなくコピーしたものを出せばよかった。現在は原本を出して店舗スタッフがその場でコピーを取りに行くようになっている)。コピーだけ持ってって、ありえない住所ありえない名前で作っちゃったとか、それを売り買いしてたり犯罪に使われたっていう事が横行してやっぱり、携帯電話の契約っていうのが厳しくなってきた。それがまた大きい、重大犯罪に使われるっていうことがあったもんですから、それは致し方がないんですね。

それともう、スマホの時代になってきましたからその、電話番号だけじゃないんですね。この携帯電話自体の、端末自体が色々なその…社会的にも身分的にも金銭的にも重要なものになってきたんで、要は本当にアカウントとメールアドレスと色んなものを入れてってもう、それが半ば身分証明書みたいになりつつあると、簡単に…出せるものではなくなってきたっていうのと、端末自体の金額が高くなった。

どういう事が起こったかっていうとですね、端末だけをとにかく1人で10台20台買って、その端末を右から左で売る…っていうことがあったり、いわゆる『飛ばし携帯』まぁ最近ほとんど聞かないんですけど、お金に困った人が携帯電話を、とにかく10台でも20台でも色んなことの名前を使ったり住所変えたりして、色々契約するだけして、ひとつ幾らっていう風に売る。1台1万円とか2万円とか。で、上限が1ヶ月半とか2ヶ月で料金が止まるところまで使えちゃうというような事が、まぁ横行したんですよね。もう数十年前なんですが。そんな事があってさすがに携帯電話各社も対応を迫られますよね、そんなの。


その次に起こったのはどうするかっていったら、個人で借りれないから、次は会社を作って法人契約っていうことで、法人だったら何台も借りれるっていうことで、架空っていうんじゃないですけど実際ちゃんとした登記した会社を作って、『従業員用だ』という体にしてその携帯電話を貸し出すっていう、まぁ半分裏のビジネス。表でもあったんですけどね、『携帯リースします』っていうような。それで例えば、商売してたり営業してたりするならそれが通常の携帯使用料プラス、リース代っていうことで数万っていうお金を払ってでもそりゃあ払っていけれるんですけども、個人で借りてると中々大変。で、どういう事が起こったかっていったらこの電話を使って、特殊詐欺・オレオレ詐欺をやる人達が多くなってきたんですよ。その、レンタル・リース携帯を使って。

最初のうちはそれは規制がかけれなかったんですね。で、結局、携帯電話番号から調べていくとリースの携帯だ、っていうことでぶち当たって(そのリース会社へ聞きに行っても)「いや誰に貸したかわからない」って。ていうかこの(貸した)人間の身分証明書、要するに免許証とか保険証とかが偽造のコピーだった、っていうことで追っていけれない。そういう事がいくつもあったんで『やっぱりこれはいけない』って、それ自体の会社(リース会社)に今度は罰則がかかって捕まるようになったと。

で、今だいぶ減ってきているようになってんですね、そういう事自体が。ただ、本当に会社で契約してるとこがあるから、そこっていうのは完全に法人契約させなくするのか(犯罪を防ぐために真っ当に利用してる人らに不便を強いていいのか?)っていう話になっちゃいますから、中々そういうわけにはいかないですね。


そういう携帯が使えないってなると今度は、IPアドレスで海外からかけたり…っていう風にどんどん進化していったっていうことになるんですね。だからまぁどこまでいっても電話での犯罪っていうのはゼロになる事は無いと思いますが、いっときに比べてだいぶ規制がかかってきたと。かなりですね、はい。あの…スマホ自体でただ単に、電話をかけて鳴ってかけてっていうだけの事をするっていうことは中々ないもんですから。やっぱりそれなりの機能を使おうと思うと、メールアドレス・アカウント・本人認証だったり色んな事をしてったり、GPSでの位置情報発信とか必要になってきますから。それだからっていって完璧にっていうわけじゃないですけどね。

まぁ電話ひとつとってもそういう風になってくると、やっぱり逮捕歴・前科がある人間に、その…喜んで携帯キャリアの各社も貸そうという気にはならないですよね。滞納するかもしれない、払わないかもしれない、っていうような。滞納してなくてもまた再犯起こして逮捕されれば結局滞納しちゃう形っていうか、払えなくなるわけですから。そうですよね、だからってそこを誰かが救済するっていうのもまたおかしな話なんで、中々この問題は解決する……事ではないと思いますよね。

じゃああの、生活困窮している方、例えば生活保護とか受給してる人達に携帯電話のサービスを提供するのか?っていったらそれはまた皆様たちの税金になるわけで『何故そういう事を?』っていうことになりますから中々難しいことがあったりしますけど。ただ、携帯電話が安くなったと言えども、通信費はまあ…昔に比べれば随分安くなりますよね、ただ端末が高い。端末が高いっていうのは問題ですね。ただやっぱり端末は…高くなるのは仕方がないのかなって思います、はい。


まぁその、今時の携帯電話って言いますと、当然電話できる機能があるのは勿論のこと、いわゆる…いっとき前のパソコンと同じぐらいのスペックがある、検索だとかメール、文字を入れたり送受信できるっていうことですね。でカメラ機能・ナビの機能・計算機の機能、ありとあらゆるものが(端末一つの中に入ってる)、そういう事ですね。だから、この携帯ひとつで全ての色んな家電だったり電気機器がやれてた事をひとつに集約してますから、それはやっぱり高くなるよと思いますよね。それら全部、ビデオカメラ・携帯電話・ナビだけ合わせたとしても、とんでもない金額になっちゃいますからそう考えれば安いっちゃ安いんですけど。でもその端末が10万近くなると、じゃあおいそれとその、ねえ?半年に1回とか毎年1台代えるなんていう事はそんな、できるものではないですよね。そうするとやっぱり分割っていう話になって、分割がこの月々の料金に乗っかってくるっていう形なもんですから。

ただ海外なんか行ってると、端末の金額は別としてものすごく簡単に、簡単にっていうかその…できますよね。その、通信料が殆ど、こんな日本みたいに高くないような気がしますね、はい。まぁ…そうだからどうだからって(言うわけじゃなくて)、私も結局これ、携帯・タブレットで3台とか4台とか持つようになっちゃいましたからねえ。じゃあ全部無駄か?っつったらまぁまぁ、ひとつにする事はこれ、中々できないですよ。えぇ。タブレットは最近殆ど使わなくなっちゃったけど。私なんかはもう携帯が無かったら仕事にならないんで、幾らかかってもね、幾らになっても使わなきゃ。このVoicyの今入れてること(録音作業)自体も携帯に向かってお話ししてますから。このアプリ機能があってこその話なもんですからね。あんまり批判めいたことは言えませんけども(笑)。

と、そうなんですよ。そうなってくると、ここからこぼれちゃった人達っていうのをどう救済するか?っていうことは、今後の課題ですよね。


で、私なんか最近思うんですが、ここまでくる、こうなる前まではまだなんかこの、青臭いこの正義感と「こうだ!」みたいな時が、ほんと数ヶ月ぐらい前ですよ?こうしたいああしたいなんていう事を、言ってきたこともあるし思ったこともあるんですけど、まぁー簡単に言えないなっていうのがあるんですね。

結局そういうところから始めて仕事みたいな形になって私こうさせていただいておりますが、日に日にやっぱり時間っていうのは少なくなって忙しくなってきているわけです、正直言いますと。はい。まぁ自分から決めた事なんでそれは別にいいんですが。でも、こういう事、言わば自営業ですよね、自営業っていうものなので、しかも何かハッキリわかる物を、例えば大根を仕入れて大根を売るとか、大根を育てて大根を売るとかっていうモノじゃないもんですから。売った物が直接お金になるわけじゃないもんですから、その、労働と使ってる時間と収入が一緒になってきてるわけじゃないんですよね。

今は時間がものすごく少なくなっていって忙しいという、私あんまり「忙しい」って言い方はしたくないもんですからあんまり言ってることはないんですけど…それと収入が一緒になってってないですよね、当然。これは今やってる事は本当に2ヶ月後、3ヶ月後の種蒔きなわけですから、もう本当にひょっとして雨が降ったり風が吹いたりすればこの種が芽を出さない可能性もあるんですよね。さぁそうなった時にどうなるのか?っていうことで、ひとつの大根の苗だけじゃもしかしたら駄目なんで、人参だとか白菜だとかっていうこともやってないといけなくなっちゃってるわけですよ、今ね。色んな事に手を出してるっていうよりもそうしとかないと、リスク分散してかないとあの、『8月になったらおっきいスイカができるから、やれやれ』なんて言ってるほど甘くないなっていうのがあるもんですから、色んな事を少しずつ、っていう風にはなっているんですよ。

ただ、実働…実質どうこうなってるものじゃないもんですから、中々難しいなっていうのはあるんで。結局……そういった人に手助けしますだとか、一緒になんて事は軽々しく言えないんですね。前もお伝えしたことがあるかもしれませんが、まず自分が自分できちんと地に足をつけてからではないと、そんな事はできないわけで。それも2年、3年安定してはじめてなんで、ひとさまの事をどうのこうの言えるのは。ただこういったような、刑務所出所者も携帯電話の契約ができるできないっていう事は更生にとって大きな、本当にここが大きなことのポイントだっていうことを、新聞でもうこういう形で言っている状況となると、まぁ中々ですね。


(音源元:ボイスメディア『Voicy』)

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