魔神マリアの転生~まずは犬耳から~
ひどくカビの臭いがはびこる石畳の部屋で、
マリアは他の獣人の子供と一緒に手枷足枷をはめられていた。他の拉致されてきた子供はすすり泣いていたり枷に噛み付いたりと無駄な行為をしていたが彼女は落ち着き払っていた。
その容姿は魔神であったころと全く違っており、
角はピンとした犬耳に、背丈は年相応に、犬の獣人らしい大きな尻尾もはえていた。
唯一変わらないものは銀の美しい髪とタレ目、そしてふてぶてしさだ。
「ハメられましたわ」
自分のことを快く思わない神々がいたのはわかるが、
まさかこんな仕打ちを受けるとは。マリアは憤慨していた。
魔神マリアはある目的のために神々と共謀し魔神アリスを現代では魔界と呼ばれる世界へ封印し、魔神ドロシーの魂を4つに分けて弱体化させたりと尽してきた。
彼女は魔神のままでいるのも面白くないから人間に転生したがっていた。約束通り願いはかなったが、不満点はいくつかあった。
彼女は能力そのままで転生したがっていたのだ。
「それを言ったら私が嫌いな神々がキレて強制的に獣人の子として生まれ変わったわけです」
「彼等が知る限りの私のチカラを封印して」
「ごちゃごちゃうるさいぞ!静かにしろ!」
鉄格子ごしにみはりが騒ぐ。
獣人として生まれ変わったマリアだったが、
よき両親に恵まれ10歳まで育ち、11歳の誕生日に両親を殺され今に至る。
「これはきっと奴らの策略、わたくしはともかく今生の父と母を!許さざる悪逆!」
「静かにしろと言っている!」
「あなたがお黙りなさい。」
マリアは鉄格子を軽くひん曲げた。
軽くひん曲げた!?
そうです、軽くひん曲げましたわ。
「な、なにをやっている!!」
「ハズレール。」
「なにをイデェー!!」
マリアが見張りの腰を指差すと、急に看守は苦悶の表情を浮かべ倒れたではないか!
マリアはたんたんと見張りに説明する。
「神々は私の魔法や技能をすべて奪ったと思っています。」
「ですが私には魔力さえあれば使えるオリジナル魔法があるのです」
「それに私のチカラも……まあいいですわ」
彼女は自分の手枷足枷にもハズレールと唱え、両手足を自由にした。
ハズレールは術者が外したいものを外すマリア魔法の一つだ。
魔法に対する耐性がない見張りはぎっくり腰になったのだ!
子供たちは怯えているが、マリアは軽々と見張りから使えそうなものを奪い、鉄格子から外に出た。
そして鉄格子を再び元の位置に戻した。
素手で。
「絶対戻ってきますから大人しくなさってください。」
「き、君は何をするつもりなの?!」
マリアの心は決まっていた。
まずは自分たちをさらってきた奴隷商人を
マリア「便器の水飲み放題コースにいたしますわ」
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