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投資講座第11回「株価急落に負けない方法」

このシリーズは、南山堂さんの月刊誌『薬局』にて2019年4月号から2020年8月号にかけて連載していただいた「薬剤師にもできる!将来幸せに働くための投資講座」をベースに、読者の範囲をもう少し広げて、データや戦略を更新し、大人の事情でカットされた部分を追加して書き直す連載企画です。相補的な部分もありますので両方読んでいただけるとなお良いですが、難しければこちらだけでも大丈夫なように書いています。
 なお、本記事の中では特定の金融商品や銘柄、投資手法を紹介することがありますが、投資判断はご自身でお願いいたします。よって失敗しても責任は取れませんが、知らせてくれたら一緒に悲しむぐらいはします(^^;)

ウクライナ情勢がヤバげ

 ロシアによるウクライナ攻撃が本格化している今日このごろです。そのような情勢のときに投資はどうしたら良いのでしょうか???

 それはぶっちゃけワタクシも分かりませんけど……それは戦争というのは状況がどうしてもその当事者国家のやり取りで大きく変わることも多い、つまり気まぐれな決断のようなどうにも予想できないことによる影響が大きいということなんですけど、だとするともう投資家がどうこう予測する範囲を超えるじゃないですか。当事者国家の為政者のその時の決定で成り行きが決まってしまうのかもしれないのですよ。そういうのに投資のお金預けられますか?

 だからこそ、戦争になると先が読めなさすぎてリスクを取ってまで株式を買おうという人は少なくなります。どうなるかわからない株式を持つより、リターンが約束されている債券のほうが人気が出ます。一方で企業は設備投資や雇用を控えます。企業にとっては設備投資は文字通り投資ですし、雇用だって投資ですからね、先が見えにくいと手控えるようになります。そうすると株価は下がり、景気も後退局面に入るようになります。

 こういったことが世界の広範囲で発生すると、当然ながら世界はマネーで繋がっていますので、経済が停滞して不況のスパイラルを発生させます。会社は取引を停止したり従業員を解雇(または給与支払い停止)したりしなければ必要な支払いが滞って倒産してしまいます。そうして急に取引を止められた相手企業や突然収入を失った従業員は、収入を当てにしていた支払いができなくなってしまいます。すると破産してしまう企業や個人はもちろんのこと、借金を返済してもらえなくなった金融機関も痛手を負います。金融機関は手元の現金を確保するために融資に慎重になったり、場合によっては強引な取り立てをしたりするかもしれません。そうなると健全な企業の活動にも影響が出ます。先の見通しが立たないので、企業は生産や投資活動を控えて殻に閉じこもるようになり、どんどん世の中のお金が回らなくなっていきます。

 現時点ではウクライナでの戦争を織り込んだデータを知りませんが、国際通貨基金(IMF)による世界経済の見通しによれば、1月時点では2022年の世界のGDP成長率を+4.4%と予想しています。これは2021年の+5.9%の成長率からは減速している数字であり、また、昨年10月の予測値を0.5下方修正したものになっています。これには新型コロナによるサプライチェーンの混乱やエネルギー価格の上昇によるインフレが主要な背景の一部とされており、戦争による原油や天然ガスの高騰、経済制裁による国際取引の縮小などが加わると、カネやモノの流れがますます悪くなって景気は失速するでしょう。

 このような状況を見越して、これまで株式などリスクのある資産に向かっていたいわゆる「リスクマネー」は一気にリスクの低い資産(現預金や国債、金など)に移動します。

 こうして株式は下落相場に陥っていくのです。

過去1年の日経平均株価
過去1年の米国株価指数S&P500

 まあ、日経平均株価はいいとこなしな1年でしたけど、米国の株価は大きく値上がりした後、下げ局面に入ったのが何となく見えそうな感じです。
 米国株(S&P500)は2022年1月4日に過去最高値の4818.62ポイントを記録した後、2月24日には一時4114.65まで下落しました。この下げ幅は14.6%です。一般的には、過去1年の最高値から10%下落で調整局面20%下落で弱気相場(ベアマーケット)に入ったと言われます。ということは、現在はまだ調整局面ということになるのでしょう。
 現在の株価を押し下げている懸念が遠のけば、再び上昇に向かう可能性がありますが、しばらくグズグズした相場が続くかもしれませんし、さらに悲惨なニュースが飛び込んでくればベアマーケット入りする可能性もあるでしょう。そのような相場になると、特に米国株が絶好調だった2020年〜2021年あたりからつみたてNISAなりiDeCoなりを始めて株式中心の投資信託とかで運用している人は、そろそろソワソワして落ち着かなくなっているんじゃないですかね。

 大丈夫です。20年という長いスパンで投資を行うのなら、最低限の選択さえ間違えてなければ株式で運用する投資信託でもほぼほぼ安全です。そのことは過去記事でエビデンスを示しながら説明してみたつもりです。

 とはいえ、先程も可能性としてはさらなる下落もあり得ると話しましたし、10年に1回程度は本格的なベアマーケットが訪れるのがこれまでの歴史です。そういった時にうろたえてしまって、積み立てというルールを破ってしまったり諦めてしまったりといったことがないように、過去の事例を知っておいて、株価がどんな動きをするかをなぞっておき、その時に投資していたらどんなことになっていたか、また、どのように目減りした資産が回復したか、を想像しておくことをおすすめします。
 2020年3月の「コロナ・ショック」を経験された方はある程度洗礼を受けているので肝が座ってきたかもしれませんが、まあそういう人でももしこれから経験するとビビるかもしれない、リーマン・ショックの時の思い出話をしながらその時の資産の動きをなぞってみましょう。また、後半では過去の不況と株価の関係について整理してみましたのでそれも参考にしてみてください。

当時を振り返る前提

AさんとBさんは、2007年4月から投資信託の積み立てをはじめました。
世界的な好景気が何年も続き、本屋には投資本があふれ、ネットでも株や不動産やFXでの投資の話題もよく目にします。
とはいえ、AさんもBさんもそういったリスクが高い方法には目もくれず、毎月33,333円を給料日に証券口座に移し、月初にその全額をインデックス型投資信託の積み立てに当てることにしました。
その投資信託は、ベンチマークとする指数の前月の終値が当月最初の基準価額となり、金額指定1円単位で買うことができます(つまり4月終値で5月1日に買う)。
ただし、Aさんは東証株価指数(TOPIX)連動の投信、BさんはS&P500連動の投信で積み立てることにしました。いずれも配当は再投資されるものとし、よって配当込みの指数(TOPXDVNETならびにSPXTR)と一致して値動きします。また、S&P500連動の投信は為替ヘッジを使って為替変動の影響が無いものとします。話を単純にするために、どちらも信託報酬等の手数料は無視します。

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