おじいちゃんたちの安産祈願

行きつけのお寺に詣った。
よく晴れてお出かけ日和ではあるが、すれ違う人は少ない。今日は1人で静かにお詣りできるかな、と思いながら本堂に入る。

先客の夫婦が石油ストーブに当たりながら座っている。キョロキョロと落ち着きなく、あまり来慣れていないらしい。
2人を差し置いて先にお参りしようか、と賽銭箱に近づくと、本堂の中で住職さんがなにやらゴソゴソとお勤めの準備を始めた。私はこのお寺に何度も通っているが、平日の昼間にお勤めをするのを見たことはない。
私のお詣りは後にしたほうが良さそうだと思い、後ろの方で待つことにした。

待っていると、準備を終えた住職が夫婦を呼びに来る。「安産祈願を始めます」という。老夫婦は本堂の奥に入っていき、住職からことの手筈の説明を受けている。

夫婦は私の目から見て50代か、少し若々しい60代というところだ。さすがに高齢出産ができそうな年にも見えないし、安産祈願にしてはご年配だな、と思って待っていた。

住職が祈祷を始める。祈祷の言葉の中で、どうやらアメリカに住んでいる娘さんの安産を祈って夫婦は詣でたらしいことが分かった。夫婦は、孫の誕生に向けて安産祈願を依頼していたのだ。
その女性は日本に帰国して出産するのか、それともアメリカの地で出産・育児を経験するのだろうか。

その家族の背景を私には知る由もないが、アメリカで子どもを産もうとしている女性と、娘のため孫のために慣れないお寺まで安産祈願に来る両親のことを思った。
もしその女性がアメリカでも安産祈願のようなことをしているとしたら、その子どもは、仏とキリストの2人から無事に生まれてくることを見届けられるのだろう。
東西の2人の神に守られてこの世界に落ちてくるなんて、その子どもはなんと恵まれたことか。

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