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Route88 #2 あれから3年が経ちました。

時を戻して2022年。
徳島を往く或る車は再起の札所に到着する。
さあ、始めよう。ハンドルは私の番だ。

極楽の たからの池を 思えただ
       黄金の泉 すみたたえたる

第3番札所 金泉寺

3番札所 金泉寺山門。
住宅地の中に朱が輝く。

この旅の再起の札所となったのは3番・金泉寺。
静かな住宅街の中にあるフラットな札所である。
かつて1番2番で赤ん坊であった我が妹も自我を抱き境内を喜び走り回っている。
当然であるが妹の「納札」も用意してある。
妹の手で納札入れに入れてもらった。
本尊は釈迦如来。
3年のブランクでお経は詰まるようになってはしまったが丁寧に読み上げた。
納経を済ませ、車に乗り、次の札所を目指す。

3番から4番までは3番の北に伸びる広域農道を経由し向かうのが早い。

次の札所への運転中、後ろから妹がすすり泣く声が聞こえる。
何事かと、なぜ泣いているのかを訊いてみると
妹「かねをつきたかった…」
とポツリ。背もたれに顔を埋めてしまった。
妹が生まれた後、あまり鐘の音といったものを聞いたことはなく、寺でついたこともない。が、妹はテレビか何かで寺で鐘をつくことを知ってしまっていたのだ。
我が妹は記憶力が良い。

妹は次の札所までメソメソしていた。

ながむれば 月白妙の 夜半なれや
         ただ黒谷に 黒染の袖

第4番札所 大日寺

4番札所大日寺山門。
実は鐘楼門でもある。

妹の声をただひたすら耐え続けて辿り着いたのは御詠歌の百人一首みがすごい4番札所大日寺。
庭園に植わった緑と木々の花々、そして参道の石畳のコントラストが美しい。
本尊は大日寺の名の通り大日如来。
大日如来の御真言は「おん あびらうんけん ばざらだとばん」。
後ろ7文字のどこに濁点をつけるかわからなくなりそうであるが、個人的に好きな真言の一つである。

六道の 能化の 地蔵大菩薩
     みちびき給え この世のちの世

第5番札所 地蔵寺

5番札所地蔵寺山門。
後ろの巨大な木は銀杏である。

4番札所大日寺から道なりに南下、訪れたのは5番札所・地蔵寺。
山門を潜ると一際巨大な樹木が聳える。
樹齢800年ものイチョウの大木である。
そしてこのイチョウは「雌」なのである。
つまり秋には其の巨体から多くの銀杏が供給される。
ただ落ちる分には食材として有用であるが、それでも余るほど。つまり拾う人が足りない。
放置された銀杏は「熟成」され、それはもう芳醇な香りを放つ。一度経験したが本当に凄い。
故に読者様方が訪れる際は季節をよく選んで訪れることをお勧めする。

この札所の本尊は地蔵寺の名に恥じぬ「勝軍地蔵菩薩」。
また奥の院として「五百羅漢」を訪れると500体の羅漢に迎えられる。この中には自分に縁ある故人に似た像もあるという。なお私はそうした像を発見している。

この3箇所でこの日の巡礼は終了した。

終わったのは昼頃でしたが昼食を取ったのは7番札所の近くのお食事処。
「6、7番行けたやんけ!」
というツッコミは皆様の心の中で温めておいてください。

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