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Route88 #4 牙剥く山道

四国遍路が、牙を剥く。

この日は10番切幡寺から。


欲心を ただ一筋に 切幡寺
       後の世までの 障りとぞなる

第10番札所 切幡寺

この札所は車遍路の最初の試練となる。
カーナビなりGoogleに切幡寺と打ち込んでみよう。それは県道237号近くの寺町を上がるルートを提案するだろう。

これは罠である。

この道に入ったが最後、道にはみ出た看板や軒先に圧迫されたまま、対向車をかわすことになる。

正解は切幡寺の寺に入れる残り2つのルート…
なのだがこれに気付くには熟度がいる。

切幡寺に至る道。
西側からの道と左の道がおすすめルート。
右ルートはおすすめできない。
(Google Map)
ナビで案内されがちな問題の右ルート。
ご覧の通り極端に狭い。
対向が来たらおしまい。
(Google Earth)

我々は無難に西側から入山。
駐車場に車を駐め、参拝へ向かおう。

切幡寺・仁王門。
駐車場は門の奥。
西側から上がると駐車場の脇の道から出る。

車を駐め、境内へと入っていく。
この札所が試練たる所以はここから。
待っているのは333段の石段である。

333段の始まり。
序盤は坂(急)か階段かを選択できる。
足腰に自信がない方は坂をどうぞ。
残り234段時点。
傾斜も急になる。
階段で進むなら覚悟を決めて進もう。
ちょっと見える軒は先祖供養の経木流しの建物。
ラストスパート。
男女の厄除け坂(階段)が最後に待っている。
厄除け坂の特性上1円玉が多く落ちているが避けて登る。

長い石段を登り切ったら切幡寺本堂。
本尊は千手観世音菩薩。
大師堂は本堂の右脇にある。

また、本堂左横の階段を頑張って登ると頂上には重要文化財たる大塔(二重塔)がある。
大塔の敷地からは阿波市及び吉野川市の景色を一望できる。

帰る際は納経所横から退出。
こちらのルートは坂を下る。
経木流しの建物付近で階段ルートで合流する。

さて、車に乗り込み11番を目指す。

が、切幡寺から退出する際、道を誤り極狭ルートに突入してしまう。
対向車が来ていた上に、ドライバーとして危険信号をこれでもかと感じたため大人しく転回し、別の道から下る。
本当に例のルートはお勧めできない。

11番札所藤井寺は吉野川を渡った先にある。
四国遍路で大河吉野川を渡るのはこれが最初で最後である。

昼は鴨島駅周辺の飲食店をたらい回しになった結果、某チェーンうどん屋のテイクアウトを桜と湧水源で有名な江川公園で頂いた。
ただ、この日は3月下旬。桜は咲いていないし少し寒いし風はべらぼうに強い。
もはや罰ゲームでしかなかった。


色も香も 無比中道の 藤井寺
       真如の波の たたぬ日もなし

第11番札所 藤井寺

吉野川を渡った先の吉野川市。
市街地から南に下った山際に藤井寺がある。

この札所は八十八ヶ所で唯一「寺」を「でら」と読み、宗派も曹洞宗である。

寺前の駐車場に車を駐め、参拝。
ちなみにここの駐車場は有料。
徳島ではまだ珍しいが今後有料駐車場が増えてくるので準備が要る。

11番藤井寺 山門

境内はシンプルな構造であるが、藤井寺の名に違わず巨大な藤棚があった。
ただし藤の旬は4月下旬。
参拝日・3月下旬ではまだまだ虚無な状態であった。無念。

11番藤井寺 境内
正面が本堂。

この寺はもはや寺の境内が遍路道のようになっており、境内の中に12番札所を示唆する石碑や看板などが並ぶ。

入り口付近にある12番焼山寺への案内を示す石碑。
矢印の向きが境内を向いている。
境内奥、本堂横の12番への遍路道。
歩き遍路ではここから遍路転がしの大試練に挑む。

本堂、大師堂での参拝を済ませ、納経をいただく。本尊は薬師如来。

さて次は12番焼山寺。
歩き遍路なら先の遍路道から健脚5時間平均6時間の山道。

今回は車遍路であるので違う道から。
鴨島市街を通過し、「下浦駅」付近からトンネルを通り南下。
途中のコンビニで難所前のしばしのお茶濁しタイムを取った後、試練に挑む。
別格札所2番がサイドに見えるが今回はスルー。
車遍路は神山町から12番にアプローチする。


後の世を 思へば恭敬 焼山寺
       死出や三途の 難所ありとも

第12番札所 焼山寺

もはや御詠歌の時点で難所と言ってしまっている12番札所。

11番は吉野川市にあったが12番はもはや山を突っ切り神山町。車で攻めるなら神山町中心部のある南側から山道を登る。

道の駅 温泉の里神山の脇をしばらく走ったのち、鮎喰川にかかる橋から試練開始。
曲がる交差点は少しわかりにくいが、案内標識や角に高校があるのでそこを目印に進入。

初めは2車線あるが、しばらく進むと嫌な予感がひしひしと伝わる道へ。

以下道路の写真はgoogle earthより。
12番札所へ至る県道43号。
芳しくなってまいりました。

目的地へ近づくにつれて道は次第に細くなる。
集落の中で県道43号とはお別れ、ここからは紛うことなき山道がドライバーを待っている。

まず道が狭く、さらに左側は崖か壁。
対向車が来るものなら良くて睨み合いに陥る。
山道のカーブでOUTから入りINから出ることを心がけ、対向もカーブでかわすことを意識したい。

このテクニックは身につけておかないと今後の山岳札所で詰む。

12番札所へ至るゴール寸前の細道。
この一帯は待避所もカーブもないため、
対向車が来たらバック運転の腕を
試されることになる。
運転ミスが出れば哀れ車が杉と一体化する。
対向が来ないことを天に祈ろう。
(四国遍路ではドライバーの"祈り"は茶飯事。)
12番札所名物、隣に道が見えるヘアピン。
対向車対応のため、県道43号から外れた時点で
窓を開け、対向車の音をよく聴きたい。
車の音が聞こえたらこういうカーブでかわす。
カーブ外側を走る際はOUT→INは忘れずに。

細道と対向車をかわして駐車場へ辿り着く。

駐車場入り口にて。

ここからは車を降り、しばらく歩く。
参道にはよく見たら多くの動物たちの彫像が。

例1
カタツムリ。
柱の脇にいるので見つけにくい。
例2
崖っぷちモンキー。

しばらく進むと多くの大樹と共存した荘厳な山門、そして焼山寺本堂が姿を現すだろう。

焼山寺、山門。
焼山寺境内。
大樹が至る所に残っている。
焼山寺本堂。
大師堂は隣にある。

本尊は虚空蔵菩薩。
本札所の物々しい寺名の由来はかつてこの山に棲んでいた大蛇の伝説から。
大蛇により山全体が火に包まれる中空海が大蛇を封印したことからにちなむそう。
参拝、納経を済ませ、車に戻る。

山道は上りより下りが怖い。
妙にスピードがついたものなら哀れ山中に突入してしまう。
最後まで気を抜いてはいけない。

実際、下りで対向車が無理に突っ込んできて突然のバック検定(登り)をせざるを得なくなった。
山道ごり押しは絶対にやめよう。

山道を下り切ったのは15:30ごろ。

もう1箇所行けるのでコーヒーブレイクしながら次の札所へ。

13番札所は12番への道を逆に辿り、
県道21号線を道なりに進めば辿り着ける。
12番を攻略したのちなら平坦な道の有り難さを痛感できる。


阿波の国 一の宮とや ゆうだすき
     かけてたのめや この世後の世

第13番札所 大日寺

難所12番を抜けた後の札所。
この後しばらくは難札所は出てこない。

13番大日寺山門
写真は向かい側の歩道の中から撮影しました。

この札所は入り口が完全に道路に面している。
そのため駐車場から歩いてくる際は交通に注意。
境内は非常にコンパクトな配置であった。

本尊は大日如来…ではなく十一面観音菩薩。
4番大日寺は大日如来でこちらは十一面観音菩薩である。

この札所はかつての神仏分離令の影響が非常にわかりやすく、本札所の向かいには一宮神社、つまりかつて大日寺と一体となっていた神社が現存している。

また、ここの住職の方は非常にアクティブ。
徳島のローカル番組にレギュラー出演していたりする。ちょっとした有名人。

参拝、納経を済ませ車に戻る。

次の14番以降はまとまっており別日に参拝するのが適当なのでこの日はここで打ち止めとした。

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