見出し画像

淡々と1日が
終わっていく

病室の窓からは
凪の海が見える

夕暮れの砂浜に
麦わら帽子の女

あの向こうにも
あの向こうにも

島が続いている
女の視線の先

岬には
青い家がある

気の良い住人が拵えた
鐘は正午になり響く

療養で散歩をし
鐘を鳴らした日

私は少しだけ
変わった気がした

突然に凪の中に
一陣の風が吹いて

麦わら帽子が
風に飛ばされた

岬の方まで
高らかと舞う帽子を

女と私は
目で追いかけて

同じものを
見ていた

ふいに
帽子が落下して

慌てて女が
近づいたとき

誰彼かが
岬の鐘を鳴らした

夕方の不思議な
時間

いつの間にか夜がきた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?