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ソフトクリーム恐怖症

ソフトクリーム恐怖症を発症した。いや、正確には再発したのかもしれない。

子供のときの記憶なんてあまり残っていないが、小学3〜4年生の頃だったか。旅行先の公園でお腹をくだしてトイレにこもった記憶がなぜだか残っている。原因は直前に食べたソフトクリームだ。ソフトクリーム恐怖症の発症である。

観光地のソフトクリームというのは、基本的に盛りが多い。「わたし、こんなに上手に巻けますよ」と言わんばかりの積み方をする。いや、本当はわかっている。上手に巻ける自慢ではなく、「喜んでほしい」「たくさん食べてほしい」というきれいな気持ちの表れだってこと。

もちろん、食べきれない量ではない。ソフトクリームなんて牛乳と砂糖の塊であり、お腹にたまるものでもない。それでも、やつには「時間制限」がある。夏場なら、長く見積もって10分。炎天下なら3分だ。その時間内に食べきることができなければ、どろどろとたれてきた砂糖牛乳に持ち手を蝕まれることになる。ポケットティッシュを持っていなければ地獄を見ることになる。

われわれは結果的に、時間内に食べきる選択をすることになる。とはいえ食べれば食べるほどお腹は冷えるし、甘さはしつこさを増していく。そのへんに捨てるわけにもいかないし、残りはお返ししますなんてこともできない。わたしはいったいこのどろどろをどうしたらいいのだ。


おとなになって、久しぶりにソフトクリームを食べた。子供の頃には多かったかもしれないが、今の自分には平らげられるだろう、そう見くびってソフトクリームを注文してしまった。・・・おい、ちょっと、巻きすぎ、ストップ!!ストップ!!

「はい、ちょっと多めに盛っておいたよ」って。地獄がフラッシュバックし、恐怖症を再発した。今ここに治療法も処方箋もない。俺は、このどろどろに腹を冷やされながら、同時に手を蝕まれていくのだ。

俺は大人になった。もうソフトクリームは買わない。スーパーでカップアイスを買って、家でちまちま食べるのだ。半分だけ食べたら、残りは冷凍庫にいれてまた明日食べるのだ。


それなのに。それなのに。


観光地のソフトクリームはどうしてこうも俺を誘惑してるのだ。お前にはもう騙されない。そう誓っては同じ過ちを繰り返し、恐怖症を再発する。これはもはや恐怖症なんかではなく、依存症なのではないだろうか。ソフトクリーム依存症だ。

悪い依存は断ち切らなければ行けない。お前の甘い誘惑にはもう乗らない。お前も俺に依存してはいけない。もっと胃袋の頑丈なやつと、まっとうな恋をしろ。お腹が弱そうなやつにはミニサイズを提供しろ。

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