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富士そばとラーメンとリプレイ

腹筋ローラーしろよ。

本記事は富士そば Advent Calendar 2019の8日目である。

この記事を書くために訪れた富士そばで「昔ながらのラーメン」を見つけた。「煮干しラーメン」は以前食べたことがあったが、「昔ながらのラーメン」はない。富士そばのラーメンはなかなか美味しいと思っていたため早速チャレンジした。醤油ベースのスープにメンマ、ネギ、小ぶりのチャーシューそして富士そば定番トッピングのわかめがトッピングされていた。麺は中細のやや縮れ麺で、スープとの相性が良い。なんてことはない普通の醤油ラーメン、名前に違わず懐かしい味だ。

「これは美味しい」と僕は思った。

僕が富士そばのメニューで一番に推すメニューはセットのミニカツ丼だ。普通サイズのカツ丼でもなく、ただのミニカツ丼でもなく、セットのミニカツ丼がいい。小ぶりなカツ丼と一緒に、しょっぱいそばつゆを口にかけこむ瞬間はただただ幸せだ。ただ、「そば」は僕の好みと若干ずれている。

僕が生まれ育った長野県は蕎麦の名産地で、街中どこでもふらりと蕎麦屋に立ち寄れば美味しい蕎麦が食べられる。最近あまり見なくなってきた、駅の改札内にある立ち食いそばも非常に美味しい(実家から電車で中央線をやや進んだ先にある富士見駅では、立ち食いそばで「馬肉そば」という珍しいメニューを提供していて、いつか食べたいと思っているうちに上京してしまった)。ただ、僕の記憶にある蕎麦は、外食して食べるものというよりは乾麺や半生麺を買ってきて家で茹でて食べる家庭の料理だった。正月など親戚が集まったときに、親戚のおじさんが手打ちで作ってくれた、幅が不揃いの蕎麦もよく覚えている。

一口に蕎麦といっても、たくさんの種類がある。長野県にどれだけの種類があるのか気になって見つけた、「信州そばとは? 蕎麦の種類と産地 - ワイルドだろぉ 信州の食」には40種類ほどの蕎麦が掲載されていた。残念ながら僕が認識しているそばの種類と言ったら2種類しかない。更科そばのように上品な香りで美しい白いそばとも、そばの香りが強く、色の濃い田舎そばだ。主に実家で食べていたのは後者の田舎蕎麦で、たくさんの薬味を混ぜた濃いめのつゆにからめて一気にすするのが美味い。

僕が上京して出会ったそばは、更科そばのように白く上品なそばが多かった。田舎そばに慣れている僕にとっては少々物足りない。富士そばの提供している蕎麦は、ネットで見つけた記事を読んだ限りは更科そばに近いような気がする。

従来の店舗は、小麦粉6、そば粉4の割合なので、うちは単純計算で、そば粉が倍になっているわけです。
富士そば全店舗で唯一!そば粉を2倍使う慶應三田店がアツい, 2p

ちなみに東京でよく行くそば屋を紹介しておくと、中村麺兵衛(渋谷駅・南口)が出す十割蕎麦は味がしっかりしており、セットについてくる天ぷらも大ぶりで非常に美味しい。仕事が忙しかった時期に毎日通って太った。

僕はそばに本質的な「美味しさ」は求めてはいない。求めているのは記憶にある蕎麦の「リプレイ」だ。美味しいと思った食べ物は飽きるまで食べ続ける、やや偏食家的な傾向もその嗜好に影響しているのかもしれない。三つ子の魂百まで、あの黒々として香りの強い田舎そばが僕にとっての蕎麦なのだ。また、そばをいただくときにリプレイされるのは味だけではない、実家の食卓、家族そして優しかった親戚のおじさん。

ラーメンに話を戻す。富士そばで僕が食べた「昔ながらのラーメン」は記憶の中にあるラーメンそのものだった。東京という土地は、本当にいろんな種類のラーメンが食べられる。白米によくあう家系ラーメンから、大学時代に足繁く通ったラーメン二郎(「ラーメン二郎はラーメンに非ず」という声もあるが)。そんなバラエティ豊かなラーメン達は、定期的に訪れる「ラーメン食べたい」という欲求に答えてくれないことも多い。リプレイされないのであろう。

子供時代に食べたラーメンといえば長野県に展開するチェーンの「テンホウ」に、ドライブが好きな父親がよく連れて行ってくれた、高速サービスエリアのラーメンである。もはやどんな味だったのかは覚えていないが、どちらも優しい味だった気がする。富士そばの「昔ながらのラーメン」は、子供時代に食べたラーメン達を思い出させてくれた。

また僕は富士そばにラーメンを食べにいくだろう。定期的にくる寂寥の念へ、富士そばは十分に答えてくれるはずだ。

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