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『巻蛇 先駆者日記』#2 《巻きつき蛇》で学ぶパイオニア・マナベース講座



 皆さん、こんにちは。
 最近はフリプや家の近所のカードショップの大会で勝ち越せていたり、
 「《巻きつき蛇》、ワンチャンあるで」とか調子に乗っている男、84gです!
 そして! 勝つたびに「別に《巻きつき蛇》が強かったわけじゃない」、
 「そもそも《蛇》出てない」とか「《プッシュ》の的になっただけのカード」などと言われている84gです!
 ……あ、ちょっと泣いてきます……。

 ……。
 ………。
 ……はい。
 というわけで。
 いったいどの層に需要があるかは知りませんが、自分なりの研究の成果を書き記して行こうと思います。
 今回も画像はMTG日本より引用しております。

 

『《巻きつき蛇》はどんなカードなのか?』


 巻きつき蛇 黒緑
 クリーチャー 蛇
 あなたがコントロールする、アーティファクトやクリーチャーの上にカウンターが1個以上置かれるなら、代わりにその個数に1を足した数のその種類のカウンターをそのパーマネントの上に置く。
 あなたがカウンターを1個以上得るなら、代わりにあなたはその数に1を足した数のその種類のカウンターを得る。

#巻きつき蛇

 2マナ2/3というスタッツは、パイオニア環境では『それなり』です。
 《砕骨の巨人》の出来事モードの2点火力。
 《鏡割りの寓話》から出る《ゴブリン・シャーマン》。
 人間系デッキの切り込み隊長、《スレイベンの守護者、サリア》をキャッチできるスタッツ。
 基本的に2マナの生物を2マナの除去で対処される分にはそこまで大きな問題は有りません。
 プッシュこと《致命的な一押し》は苦手としているものの、赤の1マナ火力にはだいたい耐えますし、白1マナでメインボードから採用されている除去はそこまで多くない。

 もちろん、欲を言えば3/3とかの方が理想的ですが、システムクリーチャーでありながら序盤2~3ターン、地上を支えることができ、更に自身の効果により戦闘員として転用も可能。

 反面、弱点はその要求マナ。
 初心者の頃から使い続けていますが、僕にデッキのマナ基盤の大切さを教えてくれたのは、間違いなく《巻きつき蛇》です。
 今回はその辺りの解説となります。

 そいでもって。

 自分が初心者の頃にとても勉強になった、カードショップ:晴れる屋さんの超優良記事。
 今回はこの記事を見て経験を積んだ自分が、自分なりに現在のパイオニアにフィードバックした記事となりますので、併せてごらんください。


『パイオニアにおける3色目のリスク』


 で。
 上記の記事は、モダン以下だと割りと無視できることが多いです。
 理由としては、実質五色土地である強力なフェッチランドがリーガルであることが最大の理由となっています。

通称フェッチランド。

 例えば、土地タイプに『森・山』や『沼・平地』『森・沼・島』とか記述されているカードをサーチすれば緑黒以外の色も担保できます。
 もちろん、『平地・山』とか『島・山』とかはサーチできないんですが、後述するショックランドなど、複数の土地タイプを持っているカードを併用することで、3色以上も格段に安定して色マナを供給できるようになります。
 ただ、パイオニアではフェッチランドは制定当時から禁止となっています。
 (元々対抗色フェッチはパイオニア範囲外ですが)


 ということで実質的な五色土地がかなり少なく、ショックランドを頂点とした何種類かの二色土地を組み合わせるのがパイオニアでは通常のマナベースの作り方となっています。
 簡単に解説していきます。

通称ショックランド。 
モダンや統率者でもお馴染み。
土地タイプも持っており、フェッチランドからサーチされることが多い。
《母聖樹》の魂力の補填でも出せる。
通称ファストランド。
パイオニア・モダンが主戦場。
1ターン目から積極的に動く攻撃的なデッキでお馴染み。
後半はタップインでも序盤に優位を作るデッキだから良いのだ。


通称両面小道。
両面土地や小道ランドとか言うと、ボルトランドや《寓話の小道》との混同注意。
どちらかしか出ないものの確定アンタップイン。


通称ペインランド。
再録も多く安価。
ショックランドと合わせてライフリソースとなる。
◇(無色マナ)が出るという固有の強みもある。


通称チェックランド。
初期パイオニアにおいては主力二色土地だったものの、近年は採用率低下中。


通称スロウランド。
3ターン目から本気を出す、ファストランドの逆。
アグロ系デッキでは採用枚数は抑えられる。
通称占術ランド、あるいは神殿。
確定タップインなので、コントロールやゆっくりとゲームをするデッキで用いられる。


 二色デッキだとこの辺りで調整していきます。
 パイオニアにおいて土地はだいたい1つのデッキに22~27枚くらいです。
 22枚は土地を3枚引いたら多すぎるという前のめりなバーンデッキや高速のアグロデッキ。
 27枚は土地を毎ターン置いてプレイをしたい重コントロールやコンボデッキです。
 速いデッキになればなるほど土地は少なく、遅いデッキになればなるほど土地は多くなる傾向ですね。
 もちろん例外は多数あります。それもMTGの楽しみですがね。
 《巻きつき蛇》は十中八九ビート系、殴るデッキになります。
 そのため、土地は20~24枚くらいでしょう。
 で、参考まで、前述のマナ基盤表を参考に、緑と黒をそれぞれ12枚ずつ入れたデッキで確認してみます。

残りは適当に投入。
あとはMTGアリーナの無人対戦モードで確認。

 すると、こんなハンド。


他のカードは適当に入れたのでスルーしてください。

 これだとせっかく《巻きつき蛇》が初手に来たのに、黒マナがないので出せないかもしれません。
 数学的には12枚で成立するらしいのですが、多いに越したことはないです。
 ビートダウンだと占術ランドやスロウ、チェックだと序盤にタップインが増えて採用率が下がります。
 《巻きつき蛇》だとショックランド・ペインランド・ファストランド・両面小道を中心に採用します。
 更に先述のマナ基盤の記事を参照いただくと分かりますが、《巻きつき蛇》を2ターン目に出すためには、2ターン目に緑と黒を1マナずつ出す、つまり、デッキに12枚程度の緑土地・黒土地が必要となります。
 『なんだ。それならショック・ペイン・ファスト・両面小道を4枚ずつで16枚取れるじゃないか』。
 正解です。二色ならほとんどリスクなく二色を安定して供給できます。
 二色なら。

 ――しかしながら、3色になると、かなり話が変わります。
 筆者は《蛇》の可能性を試すために緑黒に3色目タッチとして、残る青・赤・白は全部試しました。
 その都度感じたのは、パイオニア環境に置けるマナ基盤の限界でした。

『本題』

 三色にしたくて――仮に白をタッチして緑黒白=アブザンを組んだとします。

《蛇》と相性最強!
毎ターン+1カウンター×2!

 土地は24枚として、全部2色土地だった場合、緑黒土地=8、白黒土地=8、緑白土地=8くらい。
 これだと8+8+8で24枚、かつそれぞれの色が8×2で16枚。
 なんだ楽勝じゃん、そう思いますが、よく考えてみてください。

 ――それ、どうやって組みます?

 仮に各色ショックランド4枚とペインランド4枚で組んだとします。
 合計ショックランド12枚・ペインランド12枚。
 なるほど。ライフさえ払えば確定アンタップイン、色マナにも強いです。
 ……それ、やったことありますけど、土地だけで1ゲームで5~10点くらいライフを払いますよ?
 いくら《蛇》がアグロに強いとはいえ、限度はあります。

 ファストランドも増やしすぎれば4~5ターン目にタップイン率が激増します。
 序盤重視といっても、4ターン目に2マナのアクションを2枚使う場合もありますし、アンタップインに越したことはないです。
 4ターン目に《巻きつき蛇》と《野心家》を同時に出して相手の計算を狂わす、そんな動きも強いですしね。

 自分はファストランド8枚とか試したことがあるんですが、4~5ターン目にタップインがかなり多くて不便を感じることが多かったです。

 じゃあ両面小道を増やせばいい?
 確かにライフリソースは良いんですが、両面小道は選んだどちらかしか出ません。
 例えば、初手が小道3枚。
 それぞれ緑・黒・白で置いたとして、確かに全色出ます。
 でもですね? ダブルシンボルはどれも使えないんです。

パイオニアに電撃参戦した最強カード。
こういうカードが使いにくい。

 
 そして、例えば《思考囲い》と《巻きつき蛇》を同ターンにプレイする、ようなこともできません。
 逆にこれをやろうとして緑・黒・黒で出してしまったら、後続の白いカードが使えない。

 更に最近だと、《母聖樹》や《目玉の暴君》のような強力な単色土地も多い。

パイオニアでは8割くらい緑マナ土地としてプレイ。
たまに厄介な置物を割る『選択肢』があるのが大事。
ファストランドと似た条件でアンタップイン。
これとの兼ね合いもあり、二色ファストランドの枚数は難しい。

 そして相手が使う《廃墟の地》や《暗殺者の戦利品》、《残骸の漂着》のような除去の補填として基本土地を出せるカードもあります。
 頻繁に見るというわけではありませんが、全く存在していないわけでもありません。
 基本土地ゼロ枚だと、その辺りを使われたときに裏目があります。

 2ターン目に《巻きつき蛇》を着地させようとすると緑も黒もかなり濃くなり、3色目を入れるのは、フェッチランドのないパイオニアでは無視できないレベルの安定性の低下を招きます。
 さて。
 『3色目を使いたいならトライオームを使えば良いじゃん』という方もいらっしゃると思います。

 なるほど。
 1ターンタップインになりますが、3色全てを出すことができ、かつゲーム後半に土地が余るようならサイクリングでドローにできる。
 理想的なカードのように見えます。

 しかしながら。
 パイオニアにおいて、殴って20点を削るデッキは超高速のデッキなら3ターンキルとかも有る昨今。
 《巻きつき蛇》という速攻を持っているわけでもないパワー2のクリーチャーを組み込んでいるので、現実的なところでは4~6ターン以内の勝利を目指すのが現実的目標でしょう。
 その理想的目標を達成できるなら、土地1枚からは1ターン目に置いたしても1ゲーム中に4~6マナしか出さないということに。
 4ターンか6ターン以内に勝つということは、そういうこと。
 つまり、《巻きつき蛇》構築においては土地1枚は『4~6マナの価値があるカード』ということになります。
 で。
 それが《トライオーム》のようにタップインである場合、1回分の機会を確実に損失していますので『3~5マナしか出ない』ということになります。
 4マナが3マナって、75%の価値しかなくなってねぇか?
 ゲームの大勢が決してから引く土地って、そこまで価値がない場面が多いです。
 後半戦に土地を引いてなんとかなる場面でタップインなんてしたらなんとかなりません。
 殴るデッキでサイクリングなんて十中八九しているヒマは有りませんし、それ以外にやることがないなんていう状況はもう勝ち目がだいぶ薄くなっています。
 更に序盤にはファストランドを出したいのに、1ターン目にこれをタップインで費やす場合、他のファストランドを後半にタップインさせやすくなります。
 極端な話、初手がトライオーム1・ファストランド3なら、必然的に1枚は4ターン目にタップインです。
 確かに僅かなリスクでしょう。マリガンすれば良いかもしれません。
 しかし、単色デッキなら起きない事故、二色でももっと減らせるシチュエーションです。
 MTGは確率のゲームです。
 多色土地を増やすことで、ごく稀に起きる事故が複数発生するなら、それはリスク以外の何物でもありません。

 そもそも、理想的なアグロデッキとは、『毎ターンマナを使いきって相手にプレッシャーをかけ続けること』であり、確定タップインのカードは、それだけで損失を出しています。
 特に緑黒という色は、パイオニアにおいて1マナ域の最強の色の組み合わせを持つといっても過言ではないです。

こういうのとか。
こういうの。

 そもそも、1ターン目にどちらも使おうとすると先述の記事の表を参照するなら14枚が最低ライン。
 緑と黒をどちらもアンタップインさせようとすると、そもそも三色目は絶望的。
 つまり、三色目を2ターン目に使おうとすると、《思考囲い》や《ラノエル》とのトレードオフとなります。

 これがもし、ロングゲーム前提のデッキだとタップインのデメリットが下がります。
 10ターンとかプレイするつもりなら、土地1枚は10マナを出すはずのカードであり、それが9マナになっても大きな問題は有りません。
 つまり、《トライオーム》の採用有無は、そのデッキが何ターンで勝つつもりなのかに依存する。
 高速~中速デッキでは、色事故の危険を冒してでも基本土地の方が勝利に貢献しやすい
ように思われます。
 しかしながら、そもそも《巻きつき蛇》がカウンターを増やしさえすれば、パワー5以上が3ターン目や4ターン目に作れる。
 それが殴り掛かるのだから、6ターン目や7ターン目には相手のライフを削り切れているはず。

 つまり、《巻きつき蛇》を強く使う前提ならばトライオームは多用できず、かといってショックランドや他の2色土地ばかりでも裏目がある。
 多くの《巻きつき蛇》のデッキを考案してきましたが、パイオニアにおいて色を増やすことはビートダウン系デッキにおいてはテンポ損を生みやすく、マナ基盤の差での負けも少なくありませんでした。

併用するには相当にマナ基盤に無理を強いる結果に。


 《マナの合流点》のような万能土地もありますが、やはりライフは減り続けます。
 『パルヘリオン・シュート』のようなデッキなら高速アグロ相手でも一撃必殺で勝つことはできますが、《巻きつき蛇》はカウンターを増やすという性質上、パワー5を6に、6を7に、程度の上昇であり、一撃必殺というにはややプレッシャー不足で使いにくい。


 こういうカードが使えるなら3色目も触りやすいのですが、いかんせん『蛇』というクリーチャータイプは不遇。
 神河へ再訪するなら蛇部族の強化カードも期待したんですが、スルー。
 いやまあ、改善とかシナジーのある新規ワードは有ったけどさぁ……。
 つまるところ、俺が組もうとしている《巻きつき蛇》デッキって……。

マイナー部族で《閑静な中庭》は使えない。
低速ではないので《トライオーム》は使いにくい。
超高速でも一撃必殺でもないので《マナの合流点》は使いにくい。
 その上で黒も緑も2ターン目に要求するマナシンボル。


( ゚Д゚)……あれ、つまり……?

3色目を使いにくいってこと!?


 ということで。《巻きつき蛇》を使う場合、3色目をタッチする場合、3マナや4マナのカードから、シングルシンボルが限度という風に思えます。
 で。パイオニアに置いて3色以上のデッキを組む場合、上記のどれかを注意すればいいってことですね。

 一撃必殺が使えるなら《マナの合流点》やショックランドを増やしてライフを度外視する。
 部族で統一できるなら《閑静な中庭》などで安定させる。
 スローゲームなら序盤はタップインを許容してトライオームなどを使う。
 2ターン目に複数色を要求する《巻きつき蛇》のようなカードを諦める。

 試行錯誤の結果、《巻きつき蛇》を強く使うなら2色。
 緑も黒も薄くできないならば、3色目を使うとしても、3~4ターン目以降にシングルシンボル程度。
 オリジナルデッキにおけるマナ基盤、難しすぎる……!


 『運が悪くて土地事故のせいで負けた』という方がしばしばいらっしゃいます。
 もちろん、MTGは土地を引きすぎるマナフラッド、土地を引かないマナスクリューは付きものです。
 ですが。
 緑のカードしか手札にないのに黒マナの出る土地しかない、そんな色事故に関しては“防げる事故”です。
 色事故がイヤだというなら、極端な話、単色で組めば良い。
 MTGは確率のゲームであり、『運悪く色事故』というなら、勝利もまた『運良く土地引いて勝てた』というようなものです。
 《巻きつき蛇》では、運良く勝利ではなく常勝を目指します。



 《巻きつき蛇》で強く使える5色土地も有るんだけどね……。
 以下、次回。

当記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。
画像はMTG日本公式より引用しています。
ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。
題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。
©Wizards of the Coast LLC."

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