見出し画像

《最深の裏切り、アクロゾズ》から学ぶ、パイオニアの除去事情。

 こんにちは!
 『カルロフ邸殺人事件』の発売で、また盛り上がりを見せるMTG!
 ……あ、ちなみに、この文章、まだ『カルロフ邸殺人事件』が発売する前に書いてます。
 いや、だって。
 書き溜めた『殺人事件』関連の記事が多くて、そっちの更新を優先してたら、どんどん後にずれ込んだっていう。
 というわけで、今回の主役は執筆段階で最新段、『イクサラン 失われし洞窟』から。

 発売前は青の《パクパテク》や緑の《カスレル》の方が評価が高く、予約価格が高かったんですが、蓋を開けてみれば両者の金額が下がる中、《アクロゾズ》は維持し、逆転した状態。
 赤の《アショニル》や白の《タク》もやや下落はしたものの、金額的にはほぼ互角くらいですね。
 私見ですが、赤と白は統率者などの需要が強くて金額を維持しているイメージなんですが、黒の《アクロゾズ》は構築戦、スタンダードとパイオニアでよく見るカードになった印象があります。

 そう、パイオニアです。
 モダンやレガシーほどではありませんが、スタンダードに比べれば二段も三段も上をいくパワーカードが入り乱れる戦場、パイオニア。
 パイオニアで通じるカードならスタンダードでなら3枚、4枚と使われそうな気もしますが、
 スタンダードで入っているリストは多くてメイン1・サイド1程度。
 ほとんどパイオニアの搭載方法と変わらない使い方をしている印象です。
 相対的に強いカードが多いはずのパイオニアでもスタンでも同じような運用が許される。
 いわば、このカードはスタンダードよりもパイオニアの環境の方が真価を発揮しているとみることもできるでしょう。

 その辺りはパイオニアとスタンダードのメタ環境の違いにあると筆者は考えています。
 今回はその辺りの、僕なりの分析になります。


『なぜカードパワーが高いはずのパイオニアでもスタンと同じくらい通用しているのか』


 第一に、除去の質の違いを論じなければならないと思います。
 現在のスタンダードは、追放除去の全盛です。

パイオニアではアゾコンくらいでしか見ないが、
スタンダードではビート系のミッドレンジなども取っている。
スタンダードではトップメタの一角、版図ランプが使用。
パイオニアでも白日コン、エニグマ、オムナス系など使う強豪デッキは多いが、
不動のトップメタというわけではない。
パイオニアではロータスコンや白日コンで取られるのみ。
スタンダードでは版図ランプを中心に、白系デッキのサイドボードに幅広く採用される。
パイオニアだとグルールアグロが何枚か取ったり取らなかったり。
スタンダードでは赤系の固定パーツとして幅広く活躍している。

 他にも《骨化》や《告別》、《粗暴な聖戦士》などなど。
 5マナ掛けて出したのにあっさり追放されてしまえば、土地になって留まることができません。
 しかしながら、パイオニアで見る除去はかなり様変わりします。

黒系除去のド定番。

 下環境で黒を定義する最強除去の一角で、黒いデッキの除去といえば《プッシュ》がまず飛んできます。
 しかしながら、《アクロゾズ》は5マナなので絶対に押されません。

イゼットフェニックスの看板的除去。

 基本的にイゼフェニのメインボードで《アクロゾズ》を処理できるカードはコレくらいしかありません。
 あとは0~2枚程度のバウンス枠、火力の2枚打ちくらいですが、《アクロゾズ》は破壊されても土地として留まれます。
 更にコストとして土地を捨ててしまえば、《アクロゾズ》の効果で飛行ブロッカーを生み出すことができます。
 追放できる除去はメインボードではかなり少ないと思われます。

コレともう1枚の火力を合わせて落とすしかない。

 更に《致命的な一押し》を使うパイオニアのデッキといえばもちろん、環境王者・ラクドスミッドレンジ。
 ラクドスミッドレンジは自らカードを捨てるカードを多く採用しています。

 これらのカードで土地を捨てようもんなら、《コウモリトークン》を生成します。
 更に更に、これらのカードの多くに対し、《アクロゾズ》が有利に働きます。
 《税血》は殴ることもできずに除去できても土地になるだけ、《コプター》や《インティ》はサイズ負けしているし、手札を捨てにくいので機能不全。
 一度でもトークンが出ているなら、《ヴェリアナ》は布告もハンデスも有効打にはなりません。
 ラクドスミッドレンジはこれらのカードで手札の不要になった土地を交換して無駄なく戦いきるデッキなので、《アクロゾズ》1枚で機能不全に陥る可能性が高いと考えて良いでしょう。

 ラクドスミッドレンジの二大フィニッシャーに対しても対策ができています。
 《魔神》とすれ違って殴り合った場合、毎ターン2点しかライフが減らないため、油切れの勝利も視野に入ります。
 《シェオル》も追加ドローがなければ攻撃と効果で6点ダメージ+2点回復なので、4点飛行絆魂ならダメージレースは拮抗。
 それこそ《コウモリトークン》などでチャンプブロックできれば、むしろライフレースを優位に運ぶことすらできます。
 《シェオル》の勝ちパターンである突っ立ってるだけで勝つ、を予防できるため、対策としては除去ほどではありませんが、そこそこ有効といえます。

 更にイゼットフェニックスですが、《稲妻の斧》以外にもルーティング手段を取っています。
 

イゼフェニのサブアタッカー。
このカードで土地を捨てて手札の純度を上げるのも勝ちパターン。
《霊柩車》や《減衰球》のようなウザい置物に干渉しつつ手札を入れ替える。
入ったり入らなかったりする枠。

 手札交換を牽制しつつ、このカード自身の4/4 飛行・絆魂というスタッツも適切です。
 仮に看板である《弧光のフェニックス》がまとめて4体蘇ったとしましょう。

 総攻撃をかけると、1体を《アクロゾズ》がブロック。
 3体の攻撃が通りますが、4点回復できているので、差し引き5点のダメージのみで済み、次のターンに3体が攻撃してきても差し引き2点抜け。
 次のターンにいたっては差し引きライフゲインが上回ってしまいます。
 毎ターン呪文を3つ唱えることは不可能ではありませんが、簡単なことでもありません。
 そう、《アクロゾズ》さえ突っ立ってれば、イゼフェニは勝てないんです。
 
更にパワー4なので決戦兵器、《弾けるドレイク》に対しても回答になっています。

パワーが20を超えることもザラ。

 こちらは速攻で殴ってくるわけではないので、突然死はしない。
 《アクロゾズ》のパワーが4あるので、とりあえず睨み合うことはできます。
 他のデッキに対してはやや見劣りますが、それでも除去耐性と飛行絆魂のフィニッシャー適正は本物。
 環境トップメタである二種類のデッキに対して有利である以上、メインボードからの採用も十分に可能であるといえるでしょう。

 ただし、先述したように白の追放除去に対して不利な点、そして5マナという重さからアグロ系のデッキに対しては間に合わないシチュエーションも多いなど、裏目も確かに存在しています。
 そのため総合的には、メインボードに1枚、サイドに1枚程度の採用にとどまっているように思います。
 よっぽど身近な環境で両者が多いようなら、やや偏重して多く取っても良いかもしれませんが、それでもメイン2・サイド1程度が限界でしょう。

 カードパワーももちろん低くはないんですが、それでも普通ならば5マナクリーチャーは採用基準が厳しくなりがち。
 それもトップメタ相手に尖った性能をしていれば採用できうるというのは、このカードの発表段階では予想できず、意外でした。

 他にも「上環境では地味だが、下の環境の特性に沿ったカード」を発見できれば、センセーションを巻き起こせるかもしれませんね。
 皆さんも環境とにらめっこして探してみてくださいませ!



当記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。
画像はMTG日本公式より引用しています。
ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。
題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。
©Wizards of the Coast LLC."
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?