女子高生、笑うなよ

 高校生2年の夏、球技大会の日、この日のあの出来事を今でも鮮明に覚えている。
 中学の頃は誰とでも分け隔てなく喋りお調子者で人を笑わせるのが好きだった。友達も多いと思っていたので、高校でも楽しくやっていけるタイプの人間だと思い込んでいた。だか、現実は違った。高校は地元から離れた高校に進学した、そのためクラスに知っている人は誰もおらず、誰かと話したいと思っていたが勇気が出ず、最初の2週間くらい誰とも喋らず過ごした。何事も最初の印象が肝心だと思う、どんなに内面が良くても初見の印象が悪ければその人の印象が良くなること無いと思う。友達が欲しかったのに喋りかけれない私は、最初の2週間ぐらいずっと眠いふりをして机に突っ伏していたり、わざと気だるそうに欠伸をしたり、窓の空をずっと眺めて過ごし、ずっとスカしてハスってた。私が気だるそうにスカしていた2週間の間にクラスにはグループができ雰囲気が出来上がっていた。完全にミスった。昼休みに1人で食べる弁当は不味く、あいつまだ1人で食べてるよ的な目で見られている恥ずかしさがあり、辛かった。だが私は拗らせ1人でスカしてダルそうにするのがかっこいいことだと思っていたので、しばらくその孤独が続いた。孤独であったが部活動に所属し、そこには友達がおり部活に熱中していたのでクラスでボッチでもなんとか耐えれた。その後しばらくしてクラスの一軍のキラキラしたイケメン頭のいい感じのいい優しいAくんが話しかけてくれた。三軍にも入ってないであろう自分に話してくれたAくんに緊張しながら話していると、クラスのLINEグループに入ってないよね?と言われた。え、!
そんなものが存在するとは微塵も思っていなかった。LINEはもちろんやっていたし、グループLINEを知らないということではない。このクラスにグループLINEがあるということに驚いたのだ。しかも40人のクラスのうち39人が入っており、自分が最後の1人であった。グループに招待されたことはとても嬉しかったが、自分がそこまで馴染めていなかったのかと思い、惨めに思えた。しかも、1発目のホームルームの時間の一人一人自己紹介の時に、熱くラブライブ愛を語り完全に失敗し、その後も他人と喋っている姿を見せず、暗そうな雰囲気を出し、私よりも下だと思っていたBくんも入っていた。ラブライブが嫌いとかそうゆうことではない、最初の自己紹介でラブライブ愛を語って周りを引かせる人が嫌いなだけだ。ちなみに私は自己紹介の時に、適当に出身中学と部活頑張りますと言って終わらした。自分の順位は40人中40位だということが、LINEグループにより知らされた。39位のBくんに負けていることに悔しく、恥ずかしかった。教室の端でスカしている部活してる人間と、人に趣味を熱く語れる人間とでは、スカしているやつの方がこのクラス的には下だったのだ。すごく辛かったが我慢した。私は長男だから我慢できたが、次男だったら我慢でかなかっただろう。
だがこのことによりクラスの中心的人物であるAくんと仲良くなることができた。
Aくんにいじられことで笑いが起こった。そのおかげで、あっこいついじっていいやつなんだ、面白いやつだなとクラスの皆んなに認知してもらえた。そこからは、慣れれば喋れるし、面白いことも言いえた。
それからは、人気者の周りにいるやつ的な立ち位置になり、友達も増え楽しく1年間やっていけた。勉強はできなかったが。
 進級し、クラス替えがあり、今度はなんとなくクラスに馴染めて楽しかった高校2年の夏、球技大会の時、一生忘れられない出来事が起こった。
 球技大会用のクラスTシャツを着て皆んな写真を撮っていた。いつもは校則に厳しい先生もこの日はあまり注意しない。私は友達数人のグループで、いつもゲームや漫画の話やバライティの話を教室の隅で話して盛り上がっていた。それは球技大会の日も変わらずそうしていた、クラTのはじを結んだり、ヘアバンドをしてキャッキャっしてはしゃぎ写真を撮っている男女を見て、ダサいと思っていた。何がそんなに面白いのかと。男女の友情なんて存在しないぞ、男は全員女と下心で接しているぞ、騙されるなよ。
そんな皆んながうわついてるイベントを心から楽しめる人間に育たなかった私はまたもダルそうにして過ごした。それがかっこいいと思って。
トイレから教室のいつものグループに戻ろうと思い教室の扉を開ける時、不意に声をかけられた。それは学年のマドンナ的な女子、スクールカーストのトップオブザトップ、ソフトテニス部の部長でエースのCさんの声であった。そんな人から喋りかけらると思っていない私はどこから出したか分からない奇妙な声でふぇ⁉︎と発した。なんで私のようなゴミクズに話しかけるのか意味がわからず戸惑った。それを見て明らかに顔を一瞬曇らせたが、Cさんはすぐに笑顔で写真撮って欲しいと言った。、、、???
さらに混乱した、なぜ学年のトップが気持ち悪い偏屈なこの私に一緒に写真を撮ろうと言ってくるのか?、意図がわからない、そんな写真容量の無駄だし、そんな写真があったらスマホがぶっ壊れそうだ。ルフィに電気が効かないことを知ったエネルのような顔になり動揺が隠しきれなかった。どうしよう、どうしよう、
私の本心からすれば、もちろん一緒に写真を撮りたい。人間が水を飲まなければ死ぬように、赤ちゃんが産まれて泣くように、最後に絶対悟空が勝つように、男子はどんな人でも必ずCさんのことが好きであった。私も例に漏れずもちろん好きであった。そんな人から写真を撮ろうと持ちかけられたら、誰だって嬉しいし撮るに決まっている。しかも、Cさんは普段の制服とは違うクラTでハジを結び肌を露出し、ポニーテールで、普段みるCさんの1兆倍は可愛く見えた。ファミコンとSwitchぐらい違うように見えた。だか、私はゴミであった。圧倒的に自己肯定感が低く、陰キャラのカスがCさんと写真を撮ってはいけないと思い込んだ。そんなことをしたら、Cさんの彼氏にまず殴られ、一軍の男女にいじめられて、クラス全員から無視されるだろう。そして何より、クラスの隅で待っているいつものグループの目が気になった。クラスの隅から廊下の話し声なんて聞こえないと思うが、その時の会話が全部聞かれて見られているように思えた。普段そのグループでは女と会話するなんてダサいことだと思っていた。女なんていらない、ダサい男たちの奇妙な友情がそこにはあった。Cさんと写真を撮ることはそのグループの友人たちを裏切ってしまうことになる、写真は撮りたいが、今後の学校生活で1人で過ごすのは絶対に嫌だ。混乱し、あたふたしていたが私の脳内コンピュータが弾き出したものは、写真を撮らないと言う答えだった。
ごめん忙しいからまたね、と言ってその場を離れた、めちゃくちゃ撮りたい気持ちを抑えてグループの元へと足を進めた。友人達よ、俺は裏切らなかったぞ。熱い抱擁と割れんばかりの拍手と称賛の言葉で俺を称えてくれ!
Cさんは相当混乱しただろう、100%断られないはずのものに断られたのだから。
 その場を立ち去ろうとした時、Cさんの友達でCさんを引き立てるためだけにいるであろう、成績も顔も性格も良くないDさんに、私に聞こえる声ではっきりと言われた。

何勘違いしてんだよ、お前と撮りたいんじゃなくて私たちを撮って欲しいんだよ。笑われた。

理解できなかった、いや、理解したくなかったおかしい夢だろうか、急に恥ずかしさで胸がいっぱいになり、大粒の汗をかきその場から立ち去った。そりゃそうだ、私なんて犬の糞以下の人間に一緒に写真撮ろうなんて言うわけがない。そもそもよく考えれば一緒になんて言ってなかった、写真撮って欲しいとだけしか言っていなかった。騙された、巧妙な罠だった。あの時は話しかけられたため混乱した、有頂天になっていたため、写真撮ろうとろう詐欺に引っかかってしまった。
Dさんのあの時の顔とあざけた笑と、一生で1番恥ずかしかった思いを私は今でも鮮明に思い出す。
私の尊敬する太田光さんは、私の飯の種は、自分も含めた「人の失敗」だ。芸だけで食べていくことに必要なのは、「一生恥をかく」とゆう覚悟だ。と著書で言っていた。
今のところ芸人になろうとは一切思わないが、これからも私は恥をかくし、失敗していくだろう。失敗や恥を次の自分への成長だと思い前向きに捉えようと思う。笑われても相手が笑ってくれて幸せならそれでもいいと思う部分が少し自分にはある。しかし、まあ、辛かったことは辛い、

女子高校生、笑うなよ


後編に続く

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