見出し画像

【読書記録】浅田次郎『天国までの百マイル』

浅田次郎『天国までの百マイル』(新装版)
朝日新聞出版 (2021/4/7)
※初版は1998年12月

まさしく「魂が震えるような感動を味わう」名作。
最後の2割は読みながら涙が止まらなかった。
ストーリー設定はベタベタなのに、なぜかページを捲る手を止められない。小難しい表現はどこにもないのにこんな話は誰にも書けないと思ってしまう。偉大な母、奇跡と勘違いしてしまうほど懸命に命を守る医者、愛してるからとすべてを捧げてくれる年齢不詳のホステス、とにかく善意を与えてくれる登場人物みんなの愛に感涙する。

最近の人はみんな疲れてるから異世界転生で無双してスカッとしたいんだなんて聞くけれど、疲れた現代人の胸に染み渡るのは、やっぱりこの手の愛と優しさに包まれた物語だと思う。

お気に入りはたくさんあるけれど、この一節が一番気に入った。溜息を吐きたくなるほど心が洗われた。

社長は車と休暇をくれた。マリは勇気をくれた。高利貸の片山は財布を丸ごとくれた。途中の食堂で出会った運転手さんたちは、みんな口々に、頑張れって言ってくれた。おかあちゃんのために冷房を止めて、大汗をかきながら飯を食っていたんだ。 世の中に、初めから与えられている結果なんてないんだな。
 世の中の善意をかき集めて、俺は百マイルを走った。何かひとつでも欠けたら、すべてはご破算だった。

219ページ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?