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石鹸型を3Dプリントで作る実験

なんでも”実験”とつければよくなっている感がありますが、それには目をつぶっていただきまして。本業の所属企業では石鹸も作っています。その石鹸ビジネス拡張に関して、社長からお題をいただきました。
”石鹸の型って3DPで作れないの?” ”作れますとも!”何も根拠のない自信をもってお答えしました。ということで、先週の中ほどから石鹸の型を3DPで作っています。こんなデザイン(デザインの一部)です。型を作るとすると、oとか葉っぱの葉脈とかきれいにでるのだろうかって気になります。難易度が高いほうが燃えるというものです。やってみましょう!

こちらがお題。和菓子屋さんのロゴのようです

Googleさんが教えてくれました。


石鹸の作り方

石鹸を作ったことというと、小学生の時にさかのぼります。科学部で毎週活動後に実験計画書を作成して先生にOKをもらうと翌週実験をさせてもらえました。当時科学部は一番人気でした。というのも、学期ごとに一度プラモデル作成をしてもよいことになっていたからです。私はプラモデルには興味なく、百科事典に載ってる実験を片っ端から実験計画書に落として実験をしていました。硫酸を買ってもらったり、ケミカルガーデンを作るために水ガラスを買ってもらったりしました。塩酸とアンモニアを混ぜる実験では、のどをつぶして声が出なくなったりと小学生ならではの無知で無謀な実験でしたがそれ以来実験にはまっております。そういえば、硫酸銅や塩化銅や片っ端から薬品で結晶を作っていた覚えがあります。当時は劇薬って知らなかったし。

かなり脱線しました。
石鹸の作り方を石鹸工場のかたに教わりました。

  1. 文字や柄を凸にした文字型をはめ込み、型に石鹸を流し込む

  2. 文字型を外し、色の異なる石鹸でへこみを埋める

  3. 型から外し、表面を埋める

工程自体はシンプルなものです。とはいえ、早く固めて方から出しやすくするために途中、冷凍庫に入れたり、型はテーパーをつけて抜きやすくしたりと細かな工夫をいろいろされているようです。型自体は30分程度でできますよ!と大見得をはったものの、使い物になるんだっけ?ということで実際に型を設計、製作して石鹸を作ってみようと思います。

目的と試験方法、使用材料

使用条件と使用したフィラメントはこちらです。

目的:石鹸の型を3Dプリンタで作って、実際に使えるようにする!
実験環境: 3Dプリンタ Prusa Mini+
ノズル:0.4mm 耐摩耗Kaika      
ノズル交換時期:2022年10月10日      
フィラメント: Polymaker PolyFlex オレンジ
        Sainsmart TPU 緑、黒

フィラメント

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00TI3JUSI/ref=ppx_yo_dt_b_search_asin_title?ie=UTF8&psc=1

今回は副材料もあります。素人が使ってみての感想なので、参考にならないかもしれません。

MPソープクリア(一つ目)

MPソープ ホワイト

透明だと透けてしまって重ねるとぼけてしまうので白いソープを購入しました。香料不使用とありましたが材料由来の甘い匂いが気になりました。香料を追加しても香りが混ざってしまうので...…練習用に使いつくしたいと思います。

着色材

着色用の材料として、食紅を購入しました。
原理的には、3色あればよいと思いこちらを購入しました。赤、青、黄、緑の4色入っています。

結局4色では足りず、こちらを追加注文してしまいました。


香料

石鹸は使い勝手と良い匂いが特徴だと思います。うれしいことに、自作の石鹸だと好きな香りがつけられます。なので、今回は柑橘系の香りをつけることとしました。


Fusion360でのデザイン

社長からのお題です。お店のロゴ(?)のようです。葉脈が難しそうです。できるだけ忠実に作ることを心がけます。

初めに、ロゴをファイルコンバーターを使ってsvgファイルに変換します。いつもこちらを利用させてもらっています。

以下、Fusion360での基本的な設計手順です

  1. XY平面に表現したいデザインを張り付ける

  2. デザインのベース部分を押し出す

  3. 文字をロフト機能で作成する

  4. 壁を作る

実際に作成するものの断面はこちらのようになります。

設計詳細

Bのベースを作ります。

スケッチを引き上げます。

xy平面にデザインを挿入します。そして、文字の高さ分(別の色の石鹸を入れる高さ)離れたところにオフセット平面を追加します。

先ほどのオフセット平面に枠をスケッチします。(位置を合わせるという意味で)

文字の上側に透明の石鹸を流し込んで文字がはがれるのをカバーしたいので

先ほどのオフセット面の上にsvgファイルを挿入します。ここでZ軸方向から見たときに(上もしくは下)文字がずれないことを確認します。結構ここでいつも手こずります。(ここで、設計に間違いがあったので、別のモデルに切り替えます)
初めに挿入したデザインをオフセットします。テーパーをつけて抜きやすくするためです。デザインを忠実に再現するためには、表面に見える側の寸法は変えない、をポリシーに進めます。(実はここが間違っていたので差し替えました)
点線が表面の寸法、出っ張っている部分はそれより0.4mmずつ下げるようにしています。


ロフトで接続エッジを”結合”にすると期待しない結果となる
接続エッジを”保持”にすると想定した立体が作成できます

実は”O”の中が埋まったままとなっています。原因は不明です。なので、中身は別途ロフトして切り取ります。

Oの中が埋まっている

デザインをモデル化できたら壁を作ります。

テストピースで条件出し

石鹸の型として使用可能なものなのか自分でも確認したくなりました。なので、作ってみました。残念な結果です。これは実は3作目ぐらいです。そもそも色のセンスもないので残念な仕上がりですが、そもそも”O”や”A"の中身が抜けていない、葉脈が消えているなど課題満載です。

残念な仕上がり

ということで、いつもながらテストピースを作成することとしました。テストピースでは、”O”に近い中を抜く構造としたときの肉厚、高さ、テーパー(抜きやすくする)を変更しました。

テストピースのパラメータは以下の通りです。

$$
\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{c:c:c:c}
サンプル&”O"の肉厚&文字の高さ&テーパー(オフセット)\\ \hline 
A&1,1.5,2,2.5,3mm&5mm&0.2mm\\ 
B&1,1.5,2,2.5,3mm&3mm&0.2mm\\ 
C&1,1.5,2,2.5,3mm&3mm&0.4mm
\end{array}
$$

スライス

sainsmart TPUのデフォルト設定、インフィルはがちがちにする必要がない(石鹸の重みに耐えることができ、シリコンに近いしなやかさが欲しい)ので直線とし、壁の厚みは2にしました。詳細は後程共有する3mfファイルをご覧いただければと思います。

プリント結果

プリント結果がこちら。
プリント結果と円の内径は以下の通りです。

A 肉厚3.5mm、3mm(内円の直径3mm、4mm)の内側が欠損し、また形状が変わっています。高さが5mmあって抜けにくいためと思われます。
B 肉厚3.5mm(内円の直径3mm)の内側が欠損しています。
C 石鹸がやわらかかったため内部の欠損などありますが、3つのうち最も確実性があります。

ということで、Oのような内部を抜く構造を想定し、抜く部分の直径3mm以上(試験条件の最小)、文字部分の高さ3mm、オフセット0.4mmで進めることにします。

そしてもう一つわかったことがあります。
今回の石鹸はにおいと色を付けています。
においは柑橘系のものを選びました。そして色は体に害がないもの、ということで食紅を購入して使いました。わかったことは、食紅はにじむ!ということ。うっすら濃くなっている部分がありますが、色が周りになじんでしまっています。昨日、??と思いましたが今日になってさらににじみが進みました。なので、にじまない色材を購入しました。

Fusion360での再設計①

文字の高さ3mm、テーパー(オフセット)0.4mmとして再設計しました。もともとの文字の太さ感(空白と文字の分量)を同じにするために、多少拡大はしましたが文字の太さを太くしないようにしました。

プリント結果

結果は燦燦たるものでした。テーパーをつけたものの文字が細くて石鹸が仲間で入りきらないのです。そして、Oの真ん中の円も途中で折れてしまったのでしょうか残っていません。最後の手段です。文字の質感をできるだけ変えないように、でも太くしてみます。

こちらが元のデザインを拡大のみしたものです。

前回までは石鹸に接する面でデザインが変更されないように、下の図で言うとテーパーをかけて細くした部分(石鹸に埋もれて見えない)のサイズを変えることでできるだけオリジナルデザインが損なわれないようにしてきました。

しかしながら、文字のサイズが小さいこともあってそれではうまくプリントできず、石鹸の表面に現れる部分のサイズをやむなく変更しました。
具体的には以下の変更です。

  • 変更前:テーパーの太い部分(石鹸の表面に見える形状)をオリジナルデザインどおり、テーパーの先っぽ(石鹸に埋まる部分)を補足する

  • 変更後:テーパーの太い部分(石鹸の表面に見える形状)をオリジナルデザインにオフセットをかけて太らせる、テーパーの先っぽ(石鹸に埋まる部分)をオリジナルデザインとする

こちらが石鹸の型に使えるように文字を太くしたものです。大きく質感が変わってしまっていることがわかります。

また、壁を厚くするとプリントするのに時間を要するので、壁を薄くしたら石鹸が漏れてきてしまいました。なので、文字部分に壁のヘリをもうけてはめ込むようにしました。また、型を抜くときに厚み(5mm、透明石鹸でのカバー分)が硬くて抜きにくいので、厚みを1mmとし、サポートをつけるようにしました。さらに、プリント温度を下げると柔らかくなるということが前回までの実験でわかっていますので、温度を235℃(PrusaMiniのデフォルト)から220℃に下げました。糸引きは多くなりますが、柔らかさは抜群です。

前回までの実験はこちらにまとめています。長いので、考察部分をご覧いただければと思います。

文字の太さを変えてしまったところ野暮ったくなったので、元の太さ感を生かすようにします。

試行錯誤① バックの色を緑にしてみました。うーん、ずいぶんと感じが違う。
試行錯誤② バックの色をチョコレート色っぽくしてみました。ついでに葉っぱの色を緑にしましたが、オリジナルデザインの感じを損なっている気が。
試行錯誤③ 文字の厚みを3mmから2mmにしてみました。抜けが良くなってきているように感じます。今度はフォントの野暮ったさが気になります。
試行錯誤④ 文字の太さをオリジナルイメージに戻しました。Aの穴と葉脈が抜け切れていませんが、こちらのほうがイメージ通りですので、この路線で行きたいと思います。

この段階での結論

実験はまだまだ続きます。なので、この段階の結論を記しておきます。

  • 文字部分は、厚み2mm、テーパー0.5mmとする。

  • オリジナルデザインがあるのであれば、見える部分はオリジナルデザインを生かすのがGood!

  • TPUのプリント温度は下げて(Sainsmartの場合、220℃)柔らかくすることで抜きやすくする

  • 冷やすために、冷凍庫に数分入れる。入れすぎると逆に硬くなりすぎて抜きにくくなる。また、温めた石鹸を冷たく冷やした石鹸の上に流し込むと、溶けるというより瞬間的に固まって細い溝が埋まらない、溝の上にブリッジを作るようになり、余分な部分を取り除くときに外れてしまう。

  • 作成後にすぐにラップに包んだのですが、2~3日乾かしたほうが良いようです。水分をたっぷり含んでいますので、柔らかいままだともろいです。

  • 角は落としたほうが良いようです。このあたりのノウハウは石鹸を作られている方から教えていただこうかな。

資材の追加購入

実は、資材を追加購入しています。
着色剤は、にじまないのとにじむ物があるようです。また、文字部分の積層痕が外れにくくしている?シリコンに比べて柔らかさが足りないのが問題?とおもい、シリコンも購入しています。

石鹸の材料や着色剤などこちらでそろいます。レシピも紹介されていますのでお勧めです。”にじまない”着色剤もこちらで購入しました!香料もいろいろな種類がありますが想像できないので、あれ?っていうのもありましたが単価がお安いものでためせたのであきらめがつきます。

作成したモデル

自分のデザインではないのでこちらはPrintablesにあげません。続く自分オリジナルデザインをPrintablesで共有するかも、です。


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