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それでも

器の上に綺麗に盛られた料理は

常に特別熱い湯気が美味しそうで

さほど空いてない体が急に泣いた。

もう、遠くへ行ってしまったあの人は

せめて恋しく想っているだろうか

その地で追い果て

それどころじゃ無いだろうか。

つかの間、

大地に顔を向け思い出してくれたら良いのに。

時々、一緒に食卓を囲む夢まで見てしまう。

どのくらい遠いのだろうか、想像だけでは到底。

そう思うも、目の前の幸福を

いとも簡単に消費してしまう。

罰が当たるだろうか

この当たり前に

染まりきってしまうのは悲しい気がしてしまった。

画面越しにメディアが騒ぐ

無意識にも期待して眼を細めても

面影さえぼやけてしまう。

無事だろうか。

流暢で感情の無いその声は

あの人の安否など知らせてはくれ無いし

直ぐに溢れかえった情報が覆い隠してしまう。

透明なグラスの中には

当たり前のように澄んだ飲み水が注がれている

その当たり前に

満足もせず繰り返し消費してしまう。

あの人のために

全てを捧げるのを怖がった

この当たり前を選んだ

それでも

あの人を想っていること