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クラブミュージックの低音実務

こんにちは、Nacoです。

「ベースどうやってんの?」というふわっとした質問をされることがよくあります。というわけで、僕が気をつけていることで思いつく内容をまとめてみようと思います。制作の一助になれば幸いです。

僕は自分のレーベルで自分の音楽をよくリリースしています。知的好奇心を揺さぶる脳みそが喜ぶタイプのベースミュージックを作ってます。
https://85acid.bandcamp.com/
○前提条件○
・クラブでの利用を前提としたサウンドクリエイター向け
・DAW利用者
・デジタルリリース想定
・全て個人的な意見

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低音を主軸に制作を進める

低音は最初から気を遣ってあげないと、迷子になるケースがよくあります。そのため、低音を主軸に制作していく方法がシンプルで良いです。

空間(LとRの2ch)に詰められる音の量は決まっているため、まず低音をきれいに整える方法はとても効果的です。

低音のレベル管理にVUメーターを使う方法もあるにはありますが、常にレベルをモニターするのってシンプルに面倒くさいです。低音が最も良く聞こえるようなレベリングを行えば良いだけです。

ウーファーを導入する

制作環境の話ですが、結局一番重要かもしれないです。低音の処理の難しさのひとつが、他の帯域に比べて聞こえにくいところです。

中高域は(正確さは別として)どんなスピーカーでも普通に聞こえますが、
低音はウーファーを入れないとほんとになんにも聞こえないです。

ヘッドフォンで低音が聞こえるじゃないか…という意見もありますが、ハコとヘッドフォンの鳴りのギャップを脳内またはアナライザーで埋める必要があり、経験値が必要です。

素直にウーファーを置いて低音が「見える」ようにし習得を早めるが吉です。

僕はEVE Audio TS107に御影石を敷いて使っています。鉄骨のマンションですが、いまのところ苦情は一度も来ていません。

EQでローをカットしない

40Hz以下をローカットする…という定説はもう古い印象ですね。今はそのまんま残す処理が一般的な気がします。

数年前に比べて、新譜の低音の量感が増しているんですよね。アナライザーで確かめているので概ね間違い無いかなと。ローカットするにしても20Hzを12dB/octで緩やかに切るくらいでいいと思います。

大幅にローカットしないと他の音が干渉する場合は低音自体の質が悪いときが多いです。どういう理由か分かりませんが、他の音に干渉しやすいベースってある気がするんですよね。

僕は低音にSylenth1でワンオシレーターのサイン波を多用するんですが、干渉しにくくオススメです。

40Hzをブーストして100Hzをカットする

勿論、サウンドのカラーにより結果は変わるのですが、40Hzをブーストして100Hzをカットすると前に出て来やすくなります。

キックにこの処理をすると中のほうが抜けたような質感になりがちなので、
その場合は200~300Hz辺りをdynEQで潰して持ち上げたりして、輪郭を補正しています。

この方法はAnalogRYTMでキックを作っているときに見つけたんですが、DAWでも同じ理屈が通用したので、お手元のDAWでお試しあれ。

ベースパートのゲインリダクションは動かなさい

ベースは潰すと歪みやすいです。少なくとも僕の場合はそうなることが多いです。

コンプやリミッターを掛ける場合は、GRが動作しない手前で止めるように気をつけています。(じゃぁボリューム上げるだけでええやんっていう話ですけどね)

ところがこれはミックスダウンのときだけで、マスタリングでのコンプレッションはそんなに気にならないです。マスキングの効果なのか?よくわかってないです・・・。

低音のみマスターのピークに到達するようセッティングする

マスタリングのことを考えると低音のみピークに達するバランスが至極です。

個人的にマルチバンドなんたらが嫌いです。帯域ごとにリミッティング出来る便利なツールですが、大事な何かがどんどん失われていく印象があり忌避しています。

それを使わずいい感じにしたい…と考えた結果、低音はピークに、その他の帯域は-6dB程度に収まるよう調整する方法で結論が出ています。超主観ですけどね。

また、コンプやリミッターは低音に先に引っかかる特性があるようなので(そう読んだ記憶がある)、低音だけをコンプレッションする方法は理にかなっているのではないかと。

すると過剰な圧縮をしなくても自然に音が持ち上がるうえに、ハコで鳴らしたときにベースがめちゃくちゃよく鳴ります。

ちなみにUKの超優良レーベルTimedanceのリリースは軒並みそういうバランスです。処理プロセスはここに書かれているものと異なるとは思いますが、低音を犠牲にしないダイナミクスの大きいマスタリングが特徴です。

キックは無闇に重ねない

EDM隆盛期、キックを重ねる方法が流行ったような気がするのですが、大丈夫、重ねなくていいです。

同じ帯域の音が重なると飽和するのでコントロールが難しくなります。低音はそれが顕著です。サンプルライブラリから渾身の一発をディグるほうが無難です。

低音を足したい場合は純粋なサイン波を下に敷くなどして、無闇に音を重ねないことをオススメします。


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以上、お読みいただきありがとうございました。


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