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【競馬コラム】だから菊花賞はおもしろい

春のタイトルホースが威厳を示すか、それとも惜敗を重ねた馬が悲願を成就するか。それとも上がり馬が一気に台東するか。菊花賞はどんな結末が待っていてもおもしろい。勝った馬はその後も「一発屋」に終わることなく古馬と戦ってもその称号に相応しい強さを見せてくれるし、昨年の勝ち馬タイトルホルダーもその後、天皇賞と宝塚記念を制し日本馬の総大将として凱旋門賞に挑戦した。

今年は皐月賞馬ジオグリフと日本ダービー馬ドウデュースが揃って不在。両レースで2着だったイクイノックスも天皇賞に回るということで、65年ぶりに春の二冠で連対した馬がいないという異例の事態に。いかにも時代のトレンドから取り残された最後の一冠という印象だが、先ほども書いた通り菊花賞はどんな結末が待っていてもおもしろいのである。勝ったのはアスクビクターモア。皐月賞5着、日本ダービー3着と春は脇役に甘んじていたが、三冠最後のチャンスをモノにしてみせた。

セイウンハーデスが引っ張る速いペースを、怯むことなく早めのスパートから押し切る形。日本ダービーでも大いに見せ場を作った、この馬のスタイルである。すっとぼけた風貌の田辺裕信も、いざという時は肝の据わった騎乗をする。最後はボルドグフーシュの猛追に遭ったが、かろうじてハナ差だけ振り切った。

ディープインパクト産駒の「実質ラストクロップ」が、最後の一冠を制したのが感慨深い。これで産駒のクラシック勝利数は25勝となり、偉大なる父サンデーサイレンスの24勝を上回り単独トップに立ったとか。3着にもジャスティンパレスが入り、改めてその血の存在感を思い知らされた。

社台ファームのワンツー。近年はノーザンFと競うレベルにすらないほどの差をつけられてしまったが、今年の3歳世代は二冠牝馬スターズオンアースも含めクラシック戦線の主役に。色々と生産・育成面での改革も進められているとのことで、現2歳世代以降の活躍次第では本格的に風向きが変わってくるかも。

それにしても、である。春の天皇賞もそうだが阪神の長距離G1は究極の消耗戦になってめちゃくちゃおもしろい。京都競馬場を愛する者としては黙っておくべきことなのかもしれないが、全馬が視力を振り絞る戦いは見ていて心を奮わされるものがある。内回りコースで全体的にスパートが早く、しかも直線で坂が待ち受ける厳しい設計。来年春から従来どおり天皇賞も菊花賞も京都での開催となるが、ちょっと惜しい気もするのであった。

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