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【競馬コラム】信じられないよ

「Believe」と言われても、そんなこと簡単には信じられないよ。まさか20年もの時を経て、ジャンダルムがスプリンターズSを制し母仔G1制覇を成し遂げるなんて。

20年は長いぞ。

ちょうどビリーヴがスプリンターズSを勝った2002年9月29日はハシスポさんが20歳になった日。若き無力な青年が、一家の大黒柱となるまで成長を遂げられるほどの年月である。まして競馬の世界はもっとサイクルが早い。これほどの長い年月で、「親子」のつながりが結ばれるなんて。

ビリーヴなんて世代でいえば01年クラシック組ですよ? 同期生はテイエムオーシャンとかローズバドとかレディパステルなわけですよ? 牡馬でいえばあのアグネスタキオン、ジャングルポケット、クロフネの世代ですよ? もう日本競馬史のはるか過去に登場するキャラクターたち。

ビリーヴ自身も初仔ファリダットを皮切りに複数の仔を送り出し、娘フィドゥーシアの仔もすでに競馬場でデビューを果たすなど、どちらかといえば孫やそれ以後の世代に夢を託すフェーズへと移りつつあった。

ところが、7歳を迎えた息子が大仕事を成し遂げたのだからわからない。

2歳時から活躍し、デイリー杯2歳SではあのアッゼニにJRA初重賞(たぶん最初で最後)をプレゼントしたことでも有名だが、その後はやや低迷。血統的にもクラシックでは苦戦を余儀なくされ、3歳秋以降はスプリント~マイル路線にコンバート。OP特別を主戦に細々と走り続けてきた。

しかし、今季はオーシャンSで4年半ぶりの重賞勝ちを収め健在ぶりをアピールすると、好相性の中山1200mで生涯最高の大激走。インが有利な馬場状態で内枠をゲットするなど、運も味方につけた。

「好相性」といえば、荻野極との出会いに触れないわけにはいかない。長くゲート難が付きまとったジャンダルムが、不思議と彼が手綱を取ればスタートの不安が解消された。コンビを組んで今回が4勝目だが、いずれも好位追走から押し切るスマートな競馬ができていた。今回の勝利も、彼の手腕なくして語れない。
デビュー直後は順調に結果を残し、2年目には47勝を挙げこのままトップジョッキーの仲間入りを果たしていくものかと思われたのだが、その後は低迷。前述のオーシャンSが彼にとってはデビュー7年目にして初めての重賞勝ちだった。秋に初めてのG1を手にするとは..
個人的には坂井瑠星が同期にJRAのG1を先に勝たれてしまったのがちょっと悔しかったりもするw 秋華賞は勝とう!

1番人気に支持されたメイケイエールはまさかの14着大敗。気性難が顔を覗かせたのならまだしも、道中は抜群のポジション取りからあとは末脚を伸ばすだけ、といったところで全く伸びずに失速。信じられないような負け方だった。こうなってしまっては状態面に敗因を求めるくらいしか..セントウルS圧勝からの中2週はキツかったか。ここで期待を思い切り裏切るあたりがメイケイエールらしいっちゃあらしいけども。

もうひとつ、信じられなかったのがナムラクレア浜中俊の騎乗。ハシスポさんは紳士なので基本的にジョッキーをボロクソ言うことはないのだが、あれは残念極まりなかった。
「内がいい馬場なので..」とレース後のコメントでも語っていたようだが、だからこそ安易に大外を回るような消極的な心構えで勝てるはずがない。北九州記念で詰まったのがトラウマになっていたのだろうか..
苦楽をともにしたミッキーアイル産駒で、函館スプリントSでは過酷な減量に挑んで勝って、それだけ大切な愛馬と臨んだ大一番でこんな不完全燃焼な内容で終わるかね。若きリーディングジョッキー復活を静かに期待しているのだが、こんなんじゃ無理。失望。

ジャンダルムのおかげでビリーヴのスプリンターズSが久々に脳内再生されたんですけど、あれ本当に名勝負でしたよね。アドマイヤコジーン、ショウナンカンプとの真っ向勝負。これぞ「3強」の戦いって感じ。そして軽やかにラチ沿いをすり抜けていく武豊..


20年は長いが、脳裏に焼き付けた記憶が色褪せることはない。次の20年までも、たくさんの思い出を刻んでいきたいもんだ。


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