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競馬

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2021年11月の記事一覧

【競馬コラム】コントレイルという名の希望

「あの頃」を思い出さずにはいられない。2020年の春。「人と会うと感染します。ほとんど症状は出ないので感染しているかはわかりません。でも発症すると生命に危機を及ぼします。薬ありません」というチート設定のウイルスが世界的に流行し、手探りの末に我々が取った対策は「家にいること」しかなかった。学校や幼稚園は休みになり、会社はリモートワーク。通勤・通学の時間帯も、電車は本当にガラガラになった。大型商業施設も臨時休業、「日用品が無くなる」というデマに踊らされた人々はこぞって量販店にトイ

【競馬コラム】「時代遅れの武器」でターフに嵐を~改めて語りたいゴールドシップの魅力/東スポnote連動企画

効率だとか、要領だとかが何よりも問われる世の中である。いかに賢く得をするか、器用に立ち回るか。愚直に努力を続けるだけではハッピーエンドにたどり着くのも難しい。そんな空気を少し息苦しく感じながら、人生の折り返し地点に立っている。 競馬の世界もよく似たもんだ。今に始まったことではないが、特に近年はスローペースで流れるレースが多かったり、競走馬の脚元への負担を最優先に考慮された馬場が構築されていることもあって、「器用さ」が結果を大きく左右する。いかにコースロスなく立ち回るか、序盤

【競馬コラム】有終の女王グランアレグリアを象徴するキーワード

ラストランとなったマイルCSを勝利で飾ったグランアレグリア。天皇賞から中2週、コンディション面での不安も囁かれる中での一戦だったが、やはりこの距離では力が違った。着差こそ3/4馬身差だったが、馬券を買っていた人も最初から最後まで安心してみていられたのではないだろうか。 通算15戦9勝、うちG1が6勝。次々に強い牝馬が登場してくる現在の日本競馬においても、比類なき存在感を確立した。 彼女のキャリアを振り返る上で欠かせないキーワードが「挑戦」である。年明けにレースを使わず、直行

【競馬コラム】悪夢の落馬負傷からちょうど3年、幸英明さん歓喜のG1制覇はアカイイトに導かれ

ちょうど3年前のエリザベス女王杯の日だった。知人の結婚式にお招きいただいていた僕は二次会でもダラダラとワインを飲み続け、そうこうしているうちに時計は15時40分を軽くオーバーラン。そろそろ結果を確認しようかなと、しばらく放置していたiPhoneに手を伸ばした。 そこで知らされた、衝撃的な事実。 飛び込んできたのは「幸騎手が落馬負傷で乗り替わり」といったニュースの見出しや、ツイッターに綴られた「ヤバい落ち方」といった書き込み。最初は「あちゃ、来週(マイルCS)のジュールポレ

【競馬コラム】日本競馬に不可能はない! ラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌが米国BCを制覇

日進月歩でレベルアップを続ける日本競馬において、今もなお最高峰の難関として立ちはだかるビッグタイトルの両巨塔が、欧州の凱旋門賞と米国のブリーダーズカップ。毎年のように強豪がチャレンジする凱旋門賞とは異なり、ブリーダーズカップは参戦するケースすらめったになく、手が届かないどころか手の伸ばし方すらわからないような場所にあった。 しかし、ついに朗報が届いたのである。ラヴズオンリーユーがBCフィリー&メアターフを、そしてマルシュロレーヌがBCディスタフを制覇。一日にしてダブルの快挙

【競馬コラム】その瞬間、岩田望来はキラーアビリティの背で何を思ったか

一頭の馬との出会いが、一つの勝利がその目に映る景色をガラリと変えてしまう..ジョッキーとはそういう職業だ。俗に言うターニングポイント。そこで訪れたチャンスを活かした者だけが、「一流」への道を駆け上がることができる。 岩田望来はゴールの瞬間、キラーアビリティの背で何を思ったか。 先週土曜の萩S。来春のクラシックを目指して賞金を加算させたい一戦で、川田将雅のダノンスコーピオンとのマッチレースの末2着と惜敗。あまりにも大きなクビ差が明暗をくっきりと分けることになった。 たかが