ショート話

瀬間瑞季は今日、中学を卒業した。

少しは感傷に浸りたいが、そんなことをしている場合ではない。

制服から着替えて、卒業証書を出して素早く読み、机の上に置くと、すぐに家を飛び出した。いつものピンクとシルバーのフレームの自転車で、すぐ近所の角を曲がると長い下り坂をノーブレーキで降りていく。

瑞季の真上の青空を飛行機が上昇していく。

冷たい空気を頬にうけて、反対に緊張感を外に放つ。

坂が終わり、ブレーキを握って右にカーブを曲がる。

道路の左側に並ぶ商店街の時計屋の、看板にある大きな時計を確認する。12時15分



まあ、間に合うだろう。

今日は富士山の噴火の日なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?