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改名した埴輪【埴輪紹介所その25】

かつて「消火器形埴輪」と呼ばれていました。
すぼまった上端に水平なパーツがついていたり、脇に曲線のコードのような部分があったりとか、確かにシルエットは消火器っぽい。でももちろん違います。
この埴輪のほんとうのモデルは何でしょう。
ヒント。

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長い。高さたぶん1m越え。
モデルにくらべて太いです。かなり太い。それが混乱を引き起こしたと思う。
埴輪なので、透孔(すかしあな)と突帯(とったい)は気にしないこと。モデルにはありません。

答え。大刀です。
楔形柄頭(くさびがたつかがしら)の木製大刀がモデルと思われます。

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水平パーツが楔形部分。この埴輪だと楔の形をしていないけど。
孔は通気孔でしょう。埴輪なので。
柄を上にしています。下部は鞘に納められています。
曲線を描く板は護拳帯(ごけんたい。勾金(まがりがね)ともいう)。
その上に2列に並んだ球体は、おそらく鈴。

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紙で包んで両端をひねったキャンディー的なものが最上部についています。これは三輪玉と呼ばれる飾り。
最下部の飾りはだいぶ欠けていますが、これも三輪玉のようです。

大刀の実物が出土したので、この埴輪のモデルが判明しました。
そして改名され、今に至る。
謎は着々と解かれてゆく。

大刀形埴輪の柄頭は今のところ2種類で、ほかに鹿角装(ろつかくそう)形がある。

人物埴輪が佩く大刀にはもっと多様な柄頭の大刀がある。
頭椎大刀(かぶつちのたち)や環頭大刀(かんとうたち)など。

ちなみに、埴輪時代のかたなは直刀で「大刀(たち)」と書きます。
それより後代の、反りのある彎刀(わんとう)は「太刀」と表記して区別するようです。

長野県長野市田向岡古墳出土の大刀形埴輪。大室古墳群のどこかでしょう。
所蔵は國學院大學博物館。

撮影は2017年と2018年、國學院大學博物館にて。

またね。

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