見出し画像

帰りは月とひまわり、おまけのスカイツリー『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展』の目撃談

ゴッホの黄色には青い空の背景、と思って入館前に一枚。

画像2

そこまで空が青くなかったが。金曜日17時前。

見ている間は章に分けられていることを意識していなかった。
特に前半、あまり好みではないので流し見。でも、せっかくなので各章のちょっと気になった作品をメモ。

第1章「イタリア・ルネサンス絵画の収集」
ジョヴァンニ・ジローラモ・サヴォルド『マグダラのマリア』1535-40年頃
マリアを包み隠す布は大きい。

第2章「オランダ絵画の黄金時代」
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン『34歳の自画像』1640年
貫禄。34歳とは思えない。顔も腕も。さすがのパワー。

第3章「ヴァン・ダイクとイギリス肖像画」
トマス・ローレンス『55歳頃のジョン・ジュリアス・アンガースタイン』1790年頃
目の焦点が合っていないように感じたが、それでもなんとなくよかった。『シャーロット王妃』の繊細な布表現もひかれた。

第4章「グランド・ツアー」
カナレット(本名 ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)『イートン・カレッジ』1754年頃
建物のために緑は繁り、空は広がる。

第5章「スペイン絵画の発見」あたりから、ひかれる作品が増える。

ルカ・ジョルダーノ『ベラスケス礼賛』1692-1700年頃
顔が見えない。描きかけのようにも見える。何かの風刺か?
公式サイトによると『ベラスケスの傑作「ラス・メニーナス」へのオマージュ』だそうだが。そうは思えなかった。引っかかる。

フランシスコ・デ・スルバラン『アンティオキアの聖マルガリータ』1630-34年
メキシコっぽいと感じたのは帽子とボーダーのカバンのせいか。
足下に怪獣みたいな奴がいるのに、聖マルガリータは落ち着きすぎ。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『窓枠に身を乗り出した農民の少年』1675-80年頃
ゆがんだような口元の笑い。何を見ているのか。

第6章「風景画とピクチャレスク」

ヤーコプ・ファン・ロイスダール『城の廃墟と教会のある風景』1665-70年頃
部屋が広く見えそうな絵。

ちなみに、常設展でもロイスダールに出会う。

画像3

『樫の森の道』

この人間のような木もよかったけど、『城の廃墟と教会のある風景』の広い感じのほうが好きかな。爽快なので。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー『ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス』1829年
出ました本展いちばん。
もう画面が輝いている。アポロンの船が引っ張り出した太陽が顔を出しているからではない。
山の上のポリュフェモスがどこにいるのか今ひとつわからなかったけど。
オデュッセウスは赤い服で赤い旗を振っている。たぶん。
手前の妖精たちはわかった。海に透けている。
ほか船乗り多数。
物語も登場人物も盛りだくさん。
それより画面全体の力よ。空の色合いや筆触。勢い。
ギリシャ神話を知らなくたって、魅力をじゅうぶん味わえる絵。

第7章「イギリスにおけるフランス近代美術受容」

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー『西方より望むアヴィニョン』1836年
小さめの横長の絵。しかし吸い寄せられた。
配色がいいせいか。でも、それだけではなさそうな。
一見べたっとした塗り。よく見ると画面中央の建物は細かく書き込まれている。

アンリ・ファンタン=ラトゥール『ばらの籠』1890年
ばらの花びらの襞が細かい。シャクヤクっぽい。
しかしきれい。とにかくきれい。花の画家。

アンリの妻の描いた絵に常設で出会う。

画像4

『花』ヴィクトリア・デュブール(ファンタン=ラトゥール)

色合いや花びらの柔らかさなど、よく似ている。

ポール・セザンヌ『ロザリオを持つ老女』1895-96頃
ロザリオを、持つというより握っている。引きちぎりそうな力で。
顔や服やかぶり物など、なめらかさ柔らかさがセザンヌっぽくない。何か異質な作品。
公式サイトには『修道院を飛び出してセザンヌに引き取られた「元」修道女』とある。どういういきさつなのか。気になる。

ポール・ゴーガン『花瓶の花』1896年
どの色も深い。土から生まれてきた色とでもいおうか。
彩りの中でもやはりオレンジ。濃い色の花瓶に映える。
テーブルや背景のゴーガンらしいタッチもいい。

フィンセント・ファン・ゴッホ『ひまわり』1888年
ひまわりはもちろん、花瓶もテーブルも背景も黄色い。黄色すぎる。
そのせいか、がくの緑のほうに目が行く。特に右下の下を向いた一輪。花びらよりも強く上に伸びる。
そしてよく見ると青い線。テーブルの縁と花瓶。この線が良い。好ましい。青い線のための黄色なのか? 花瓶の署名Vincentも青。

最後の展示室にもゴッホのひまわり。7枚のひまわりの写真が並ぶ。
その中に、白樺美術館に展示する予定だったが神戸大空襲で焼失した『ひまわり』もあった。これは実篤展でも写真パネルを見た。

このいわゆる『芦屋のひまわり』だけが濃い青の背景。ひまわりの黄色がさぞ映えたろう。実物を見てみたかった。

ところで、この部屋は写真や年表や解説のみで、作品なし。撮影させて。混むからダメ? あるいは写真の権利のためか。

参考までに混み具合などレポート。
2020年10月2日(金)16:45頃、国立西洋美術館入館。手を消毒。
入口すぐ左のショップにそこそこ人がいる。ロッカーはいくつか空きがある。
企画展示室に入る前に並ぶ。予約制なのに。もっとも、待ったのは5分くらい。
会場内、混雑。行列状態ではないが、場所によっては人にぶつかりそう。
予約時点での人数制限があまいように思ったが、見たい人みんなができるだけ見られるようにとの配慮か。それならありがたいが、複雑。
しゃべっている人が結構いるのがこわい。皆マスクをしているのだが。自分がおびえすぎなのか。

一往復半と少し。
まず早足で人の後ろからざっと眺める。
戻りつつ、一枚一枚見る。ところどころで解説を読む。
最後に作品リストを手に、気になる作品を中心に見る。
もう一回、と思ってちょっとだけ戻ったり。
鑑賞時間1時間ちょっと。体感より短い。思ったほど混んでいなかったのか。作品数61点と少なめのせいか。

常設展は混んではいない。各作品独占可能。

ショップに入るときに数人並んでいた。待つ間に手を消毒。
レジではほとんど並ばずに済み、絵はがき購入。

外はもう暗かった。ライトアップされたひまわりも一応、と思って構えたら丸い月。

画像1

月とひまわり。おまけのスカイツリー。


お読みいただきありがとうございます。サポートいただきましたら、埴輪活動に役立てたいと思います。