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『鳥獣戯画』2015の目撃談

平成館の特別展と、本館の関連展示を見ました。
まずは平成館。

『特別展 鳥獣戯画 ─京都 高山寺の至宝─』

鳥獣人物戯画4巻(甲・乙・丙・丁)
絵巻ごとに、明らかに画風が違う。のみならず、登場する動物や、その中で擬人化されている動物も異なる。
この選択は作者によるものか、時代か。

甲巻
擬人化されている蛙、兎、猿、狐、猫、鼠。
擬人化されていない鹿と猪。

カエルとウサギが遊んでいる。

蛙が主役の感がある。
身体全体に対して顔、特に目と口が大きいので、表情をつけやすいせいか。

兎は、顔は小さいが、耳があるのが選抜された理由か。
耳の先が黒いので目を引く。耳に表情を感じる。

猫は少ない。このころは、今ほど人気がなかったのか。

犬がいない。一番なじみがあるはずの動物だが、擬人化には向かないのか。

ところどころに描かれている草木や岩などもいい。
水は、決まった様式にそって描いたのか、いまひとつ。

相撲で勝った蛙が、猿の坊さんに拝まれている。
最後にフクロウが登場して、夜の帳が下りた。

細かいことだが、公式サイトのWeb絵巻は、フクロウの前で切れている。
なぜ!

乙巻
馬、牛、鷹、犬、鶏など、おそらく当時身近な動物。
獏、麒麟、龍など、想像上の動物。
獅子、虎、象など、実在するが、おそらく作者は見たことのない動物。

擬人化はされていない。
密に描き込まれている。特に鶏。
図鑑的。

丙巻
人物の前半、動物の後半。
カエル対サル。
葉っぱで作ったらしき蛙の帽子。烏帽子を模しているのか。
牛車の車輪が印象に残った。
最後に蛇。みんなのんじゃった? 逃げたか?

おもしろいのだが、甲巻には及ばず。タッチも弱い。

丁巻
人物。馬や牛はいる。
筆さばきは、いちばん勢いがあって、強い。迫力がある。
しかし、残念ながらそのわりに印象は弱い。

他の巻の動物たちがあまりにも魅力的で、人物はかすんでしまうのよ。

軸装された断簡もよかった。
一場面でも、掛け軸としてじゅうぶん見栄えする。
切り離されたからこそ、作者の力量がわかる。

行方不明の場面もあるのかな。

他によかったもの、気になったものなど。

将軍塚絵(しょうぐんづかえ) 1巻 鎌倉時代・13世紀
公式サイトによると
「桓武天皇が平安京に都を遷す際、都の安寧を祈り、土製の巨大な武人像を埋めたとされる将軍塚造営の様子を描く絵巻。」
平安時代の始まり(8世紀末)、という時代設定の絵らしい。

武人の装束が埴輪とはちょっと違う。
そして、武人像を立てるのではなく埋める、となると兵馬俑寄り。
だが、「土製の巨大な武人像」というのは埴輪を念頭に置いているのか?
埴輪は脚部のみ埋めて立てたが、1500年あまりの間に埋まってしまった遺物だ。

ともかく、将軍塚にほんとうに埋めたのなら、出てきてほしい。見たい。

神鹿(しんろく) 1対 鎌倉時代・13世紀
細い脚の曲線。目より耳がいい。神々しさより可愛さ。

馬 1躯 鎌倉時代・13世紀
がっちりした馬。
たてがみとしっぽの素材は何だろう。

子犬1躯 鎌倉時代・13世紀
明恵が傍らに置いたそうな。
動物好きだったから、鳥獣戯画も明恵のところに集まったのかしら。

華厳宗祖師絵伝 元暁絵 巻第二 鎌倉時代・13 世紀
龍宮へ。水がかき分けられている。このシーンはちょっとよかった。

この水も、あまりリアルではなくて羽根とか草みたいだけど。

夢記 明恵筆 鎌倉時代・13世紀
二年ほど前に、河合隼雄「明恵 夢を生きる」(講談社+α文庫)を読んだ。
ここ最近、また河合隼雄を読んでいる。

本展は、あまりにも混んでいるのであきらめるつもりだったが、誘われたので来た。
何かに呼ばれたか。

もういちど「明恵 夢を生きる」読むかなあ。

ほか、弥勒曼荼羅の三角と月。

仏教美術はあまり興味がないのと、鳥獣戯画で集中力をつかったのとで、流し見。

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埴輪との比較など。

鳥獣戯画で擬人化されていない鹿と猪は、埴輪になっている動物だ。
兎と猿の埴輪もあるが、少ない。
兎の目は、黒い丸。これは埴輪に通じる。

人物と動物。
鳥獣戯画では、動物の圧勝。
埴輪では、どっちの印象がつよいか?
迷うところだが、人物のような気がする。

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『鳥獣戯画と高山寺の近代-明治時代の宝物調査と文化財の記録-』
本館 特別1室

画像1

鳥獣戯画 甲巻 (模本) 山崎董詮模写 明治時代・19世紀

画像2

明恵上人像(樹上坐禅像)(模本) 溝口禎次郎模写 明治時代・19世紀

栗鼠がいるというので、探す。いた。明恵の上のほう。
この画像ではちょっと無理ですね。

そういえば、鳥獣戯画にリスは見あたらなかったな。

(2015/06/03東京国立博物館訪問・撮影)

以上、『埴輪のとなり』掲載の目撃談を修正して再掲しました。

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『特別展 鳥獣戯画 ─京都 高山寺の至宝─』
会場|東京国立博物館
会期|2015年4月28日(火) ~2015年6月7日(日)

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2020年に予定されていた『鳥獣戯画のすべて』の展示は2021年春に延期となったもよう。

2015年、ものすごい混みようだったからなあ。
どんな形になるのか。

またね。

お読みいただきありがとうございます。サポートいただきましたら、埴輪活動に役立てたいと思います。