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SDGs目標12を知る必読の1冊『砂戦争』

■地球3個分を消費する未来

3月も終わろうとしています。本当に早いですね。今年はちょうど、2011年3月11日の東日本大震災から10年でした。あの信じられない光景を報道で目にしたのが、つい昨日のことのように思い出されます。

10年なんて本当にあっという間です。

ということは…SDGsがゴールとしている2030年もあっという間にやって来るでしょう。このまま何もしなければ、地球温暖化や資源の枯渇ががますます進んで「たった10年」で世界の姿はまったく違うものになるかもしれません。

2050年までに世界人口が96億人に増えた場合、現在のライフスタイルを続けていたら「地球3個分」の天然資源が必要になるという国連の試算もあります。

SDGs12番目のゴール「つくる責任つかう責任」では「持続可能な生産消費形態を確保する」として、食品廃棄を減らすことや、3R(Reduce=廃棄物削減、Recycle=リサイクル、Reuse=再利用)を掲げています。

「2030年までに、天然資源の持続可能な管理と効率的な利用を実現する」こともうたっています。

■知られざる「砂問題」に切り込んだ1冊

天然資源と言って思い出すのが、石炭や石油、森林や海、鉄鉱石、パソコンやスマホに使われる希少金属でしょう。水も貴重な天然資源です。しかし身近すぎて気づかなかった存在がありました。

それが「砂」です。

2020年11月に発行された『砂戦争 知られざる資源争奪戦』(角川新書)は、この砂を巡るトンデモない状況を教えてくれます。

著者の石弘之(いし・ひろゆき)さんは朝日新聞記者を経て、国連環境計画(UNEP)上級顧問などを歴任。世界各地を巡り、環境問題の最前線をつぶさに観てきました。

私は吸い寄せられるように一気読みし、戦慄が走りました。ザッと紹介すると、以下のようなことが書かれています。

・世界では砂資源の枯渇が始まっている。
・世界では毎年470億〜590億トンの砂が採掘され、その70%が高層ビルなどの建設用コンクリートの原料に使われている。
・都市の発展が著しい中国では、年間25億トン近いコンクリートを消費。ちなみにアメリカが20世紀の100年間に使ったコンクリートの総量は45億トン
・ドバイやシンガポールの高層ビル群の原料も、大部分が海外から輸入された砂。華々しい繁栄の裏には、砂の取りすぎによる周辺諸国の環境破壊や、劣悪な環境に置かれた海外からの出稼ぎ建設従事者がいる。
・砂が掘り尽くされた地域では、深刻な環境破壊が起きている。「地球温暖化による海面上昇で沈む」といわれているツバルが消滅しそうな本当の原因も、砂の取り過ぎが原因らしい。
・インドやアフリカでは、砂の利権に群がる「砂マフィア」が暗躍。その実態を告発しようとしたジャーナリストが多数犠牲になっている。

国連によると、2018年時点で世界人口の55%(41億9600万人)が都市に住んでおり、今後ますます増えると予測されています。

日本ではコンクリート廃材のリユースが進んでおり、再資源化率は1995年の65%から99.3%に向上。世界トップの数字だそうです。

しかしそれ以前の問題として、少子高齢化が進む日本に、あんなたくさんのタワマンや高層ビルが必要でしょうか?

私の家の近くに「富士見橋」という橋があります。その名の通り、晴れた日には富士山がよく見えました。しかし今は、再開発で林立したタワマンによって、視界が遮られてしまっています。

コロナ禍を機に、都市ってそんなにいいモノなのか?という議論もされるようになりました。

私は『砂戦争』を読んで暗澹たる気分になりました。しかし同時に、砂問題が急激な都市化を考え直すチャンスになるかも…という希望も抱きました。

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