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旅先での出会い ドマゲッティ

朝起きて電気ポットでお湯を沸かす
自宅にいる時は必ずミルクと砂糖たっぷりの紅茶を入れて飲む習慣だ
旅先ではそうもいかない不自由さがある
けさは久しぶりに紅茶を飲んだ
ミルクも砂糖もないけれどそれでも紅茶なのだ

フィリピンはどこに行ってもコーヒーだ
紅茶はどちらかと言えば少数派
ホテルの部屋でも用意してある場合はネスカフェのインスタントコーヒーだ

部屋のドアを開け放って椅子を持ち出し外を眺めながらゆっくりと飲み始めた
住宅地の中なので大した景色でもない
すると隣人が出てきて日本語でこちらに挨拶してきた
こちらも咄嗟に日本語で挨拶を返した

話し始めてみると彼は昔豊橋と神戸で働いていたそうだ
日本語はその頃に覚えたものだ
出身は台湾
一番下の小学生の息子と2人で半年余りここに住んでいる
息子の英語教育のための語学留学でここに来たようだ
自宅は台湾にあり時々家族もドマゲッティに遊びに来る
色々な家族の形があるものだと思った
フィリピンは街の看板類交通標識など全て英語表記だ
共通の言語として英語があり日常会話はタガログ語
この辺りはビサヤ語
フィリピンは出稼ぎ国家と言われているが
共通言語としての英語を流暢に話せることは海外で働くことを有利にする
私はここに来て最初に感じたのは英語の発音の明瞭さだった
今まで旅したところでの相手の英語はタガログ語訛りでとても聞き取りにくかった
それがここでは聞き取りやすいのだ
単に私の身振り手振り会話が上手になっただけとも言えるがそれはさておいて
この人の名前は智傑(チッケ)さんと言う
彼も一緒に語学留学しているわけではなさそうだ
勉強しているのは息子だけだ
毎日暇なのだ
本当はリモートワークで忙しいのかもしれないがそこまで聞いてはいない
台湾も先ごろ総統選挙があった
今後の中国との関係をとても心配していた
なによりも自由と平和がこのまま維持されることを願っていることがこちらに伝わってくる
そろそろ朝食を食べに行くからと腰を上げかけたら
『ちょっと待って』と言って
部屋に戻って行った
しばらく調理の音が聴こえていた
目玉焼きとクラッカーにチーズを挟んだものとコーヒーを用意してくれて部屋に招いてくれた
私の方もきょうの予定は遅い目にチェックアウトしてここから15kmほど南のダウィンに行くだけなので時間はたっぷりある
朝食を頂いてから更に話し込んでしまった
こんなにゆっくりした時間を過ごしたのも久しぶりだ
毎日夕方までに目的地に着くために早朝出発することの繰り返しだったからだ
私もこんな時間を共にできたことが嬉しかった
こんな出会いもまた旅だ
息子の通っている小学校では毎日2時間タガログ語の授業がある
それがちょっと誤算であったとぼやいていたのが印象的だった
物価が安くて年中温かい気候
そして比較的治安の良いドマゲッティという街に海外から移り住む人達がいる
ここの家主一家のようにしっかり根を下ろして生活している人達もいる
私は単なる通過者に過ぎない
たまたま相手が日本語を話してくれたからこんな出会いがあった
いつも言葉のジレンマを抱えながら私は旅している
それでも未知の世界をこの目で見たいから旅に出るのだ

ダウィン

#ネグロス島 #ドマゲッティ #出会い #自転車旅

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