犬と嗅覚

朝、ゴミを捨てにゆく。
大抵、お向かいの奥さんと会う。飼っている小型犬の、お散歩だ。
「お早うございます」
から始まり10分、15分と立ち話をする。
と、小型犬が私について来て困る。歩く度、ゴミ収集所に向かう一歩、一歩。戻る度、家路につく迄、歩数の一歩、一歩を纏わりつく。
仕切りに尾っぽをフリフリし、鼻をクンクンさせて来る。
「わたしは、おじさんじゃないのよ」
やんわり言ってお断りするのだが、悲しいかな、日本語が理解できない。

「おじさんじゃない」
特に犬好きだったとは聞かないが、亡父はこの犬を可愛がっていた。
口笛を吹いては呼び、頭を撫で、抱っ子をしていたりした。亡母も可愛がっていたようである。にも拘らず、わたしはダメ。
犬だの猫だのが、好きではない。生態や観察記等、読むのは大好きだし、架空のそれら。
赤塚不二夫の「ニャロメ」に、外国アニメの「トムとジェリー」。アメリカを代表するキャラクター「スヌーピー」等々は、もっと大好き。
幾らでもウェルカムであるけれど、実物となるとノーサンキュー。極力、ご遠慮願いたい。が、この犬は全然、遠慮をしてくれない。

思うに、血液。嗅覚抜群。
人間の何百倍もの嗅覚を持つ犬は、ひょっとして物質。
血液中に流れる同じ物質の持つ人間に、近づくのかも知れない。
麻薬探知犬が挙げられよう。
亡父とわたしは血液型が一緒である。故の試練であろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?