ロシアVSウクライナ 野次馬陣営ガイド

前置き

少し前に、東方の素材を使って政治動画を作ったノンケがZUN(?)に怒られたという出来事が話題になった。これに便乗して何か作ろうと思ったのだが、残念ながら先を越されてしまった。書きかけの文書をnoteにて供養する。

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マス・ヒステリーが荒れ狂う。恐露病の嵐である。

ロシアのウクライナ侵略が西側にもたらしたヒステリーは凄まじい。まるでコロナの再来である。「ここはイラクやアフガニスタンではない。ヨーロッパで戦争が起きている!」(後進国で戦争をするのは別に構わないらしい)と義憤に燃える彼らは、経済制裁に資産凍結、軍事支援に飛行禁止区域の設定などといった戦争行為[※1]を推進するばかりか、ありとあらゆるロシア料理をフリーダム・フライ化[※2]し、ロシアのインターネットをインフラごと検閲し、チャイコフスキーの演奏やドストエフスキーの授業をキャンセルし、在外ロシア人には踏み絵を強い、さらにはロシア人留学生を追放しろと要求する動きさえあった。見苦しい限りである。

まぁ、別に白人共が醜態を晒すことに異議を唱えているわけではない。問題は、日本人がこの愚劣な風潮を無批判に受け入れていること……でもない。確かに本邦では「反日左翼が中露に加担してる」「戦争を口実にネトウヨが改憲を煽ってる」といったたぐいの適当なレッテル張りが飛び交っている。しかし現代の清朝、東亜病夫たる本邦の知的窮状を責めても仕方がない。

一番の問題は、淫夢がこの風潮の例外たりえなかったことである。

淫夢周辺の人たちには「自由主義」を支持ないし標榜する者が少なくない。過去には運営による弾圧があり、未来にはPC左翼による弾圧が待ち構えていることを考えれば、当然の選択だ。しかし淫夢においても、(この場で晒すことはしないが)ウクライナに批判的な人間を「ロシアに洗脳されたバカ」と認定し、糾弾するような動きがあった。無論、個人がウクライナを支持しようとロシア支持だろうと私の知ったことではない。しかし同胞(?)が白人共のヒステリーを無批判に受け入れ、彼らのキャンセルカルチャーに加担していることには途轍もなく不甲斐なく感じる。「アウトロー気取り」が売りのはずの我々が「世界の警察」の下請けになってどうする?

どちらを支持するにせよ、「アウトロー」であり続けたいならせめて、自分が何を言っているのか、他者がどういった理由で他陣営を支持しているのか理解した上で、自分にとって敵は誰なのか考えるべきだろう。

本稿は、ロシア・ウクライナ戦争に関わる左右の野次馬たちを分類し、それぞれの立場、陣営を確認する。なお、本稿には「ウクライナ派」に対する批判・罵詈雑言が多いが、それらは(この戦争とは無関係な)私の政治信条に基づくものであって、別にロシアやプーチンを積極的に支持しているわけではないと付言しておく。


[※1]日本も行っているロシアに対する各種の制裁は十分に戦争行為である。そもそもな話、戦争はとっくに始まっているのである。ところで、保守には「日本はアメリカの経済制裁のせいで仕方なく開戦した」とする、いわば田母神史観を信じる者が少なくないが、プーチンにとって、ノルドストリームの停止は「石油禁輸」、経済封鎖は「ABCD包囲網」、そしてドンバス撤退やウクライナのNATO加盟といった要求は「ハル・ノート」に等しいのではないのか。

[※2]敵対国家の名前そのものを敵性語として排除すること。アメリカがイラク戦争に反対したフランスに対する”制裁”として議会食堂の”フレンチ・フライ”を”フリーダム・フライ”に改名し、全世界に嘲笑された出来事にちなむ。

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左派陣営

リベラル左翼

国家権力と組んで左翼的正義を全世界に適応しようとする人たち。反権力を気取っているが、往々に国家によるPCを名目とした人権規制や監視社会化を容認・推進する。無自覚なスターリン主義者。

例:列挙するとキリがないが、日本ではヘサヨ(新左翼ノンセクトの残党)、パヨク(シールズみたいな左翼)、旧民主党、日本共産党、昔ながらの左派文化人など。

ウクライナを積極支持。和平だ平和だと、いつものお題目を唱えてはいるが、ゼレンスキーに対しプーチンの要求(NATO非加盟の確約、ドンバスよこせ)を飲んででも講和しろとは言わない。彼らが望む「和平」とは、ロシアの即時撤退という無理筋である。なお、ウクライナはPC的に気になりそうなことを散々やらかしているのだが[※3]、彼らはあまり問題にしない傾向がある(ロシアのフェイクニュース!)。

(後注:最近はリベラル派にも”ロシア派”が増えてきた気がする)

[※3]国民総玉砕命令、ロシア系住民の迫害(要検証)、難民に対する人種差別、ウクライナ国軍にネオナチ民兵(アゾフ大隊など)が部隊ごと参加していること

ネオコン

暴力的な手段を用いてでも世界に民主主義を広めるべきだと考える人たち。元々は共産主義に幻滅して保守(?)転向した左翼。民主主義の世界革命を目指し、あっちこちに戦争を吹っかけてきた戦犯集団。長らく米共和党を支配してきたが、近年はトランピストに党内ヘゲモニーを脅かされており、そのためか民主党に回帰しつつある。

例:バイデン、共和党のトランピストじゃない連中

完全に反ロシア・ウクライナ支持派。ウクライナの勝利・プーチン体制の崩壊によってロシアを民主化できると夢想している。

共産主義者・社会主義者

多少は自覚的なスターリン主義者。プチブル的な左翼的正義より社会変革を優先すべきとする。

例:サンダース、ジジェク。日本では山本太郎がギリギリ近いか。最近は東浩紀もこのあたりに迷い込んでいる。

中立基本的なスタンスは「ロシアの要求を多少飲んででも和平しろ」。ウクライナを支持しつつ「プーチンにも一分の理がある」と言い、リベラル派のダブスタを批判する。重度なスターリニストには反米・反NATOの立場から積極的にロシアを支持する者もいる(ヨーロッパの共産党の一部)。

保守

緩やかに左傾化していく現状を保とうとする(自称)右翼。昭和に戻れ、戦前に戻れとは言うかもしれないが、江戸時代に戻れとは言えない半端者。中国がロシアに便乗して攻めてくることを恐れ、9条改憲・再軍備を望んでいる。

例:リベラル同様キリがないが、あえて挙げれば自民党、保守系文化人など。

反中の立場からウクライナ支持。ただし一水会や田母神など、反米的な右翼は消極的。先日のゼレンスキーの「真珠湾演説」がどう受け取られるかが見どころ。

右派陣営

ポピュリスト

経済成長至上主義や伝統文化保持を放棄し、主張を愛国一本に絞った右翼。大衆から乖離(YSMT)した左翼や既存右翼に代わって時代精神を掴みとったはいいが、理論がないがゆえ無力。⚠️ファシストとはまったく似ていません⚠️

例:トランプ、ボルソナーロ、モーディー、ドゥテルテ、尹錫悦、ゼレンスキー、ナワリヌイ。日本では維新や桜井誠、安倍ちゃんが近い……がちょっと違う気もする。

当事者のゼレンスキー、距離的に中露に近い国々(フィリピンのドゥテルテや韓国の尹錫悦など)を除けばロシア支持が多い

極右・第三の位置

戦前のファシストやナチっぽい人たち。あるいはファシストやナチそのもの。前者はファシスト…というより単なる過激なレイシストや排外主義者、国粋主義者など。後者は社会主義およびアナキズムの派生としてのファシズムを自負する立場(筆者はこ↑こ↓)。

例:アゾフ大隊、アトムヴァッフェン師団などネオナチ諸派。AfD、フランス国民連合、イタリアのネオファシスト諸派など、ヨーロッパの極右党派。他にはドゥーギンのユーラシア党、プラウドボーイズなど。日本では外山恒一、民族の意思同盟、論者には千坂恭二、牛嶋徳太郎など

アゾフを身内と見なしてウクライナを支持する者もいれば、反米意識からプーチンを支持する者もいる。”戦前”はプーチンを支持していた者も多く、混乱が見られる。

番外

独裁国家

反米(そもそも非民主国家はその存在自体が反米的)には違いないが、反資本主義・反グローバリズムとは言い難い諸体制。多くは保身・体制維持を目的とした独裁であり、思想に乏しい。

例:プーチン、習近平、イラン、キューバ、ベネズエラ、トルコなど。

ほとんどが反米かつプーチンと仲がいいため、ロシア支持が多い

トルコは何がしたいのかよくわかりません……

第三世界

欧米、西側以外。欧米人は「ロシアは『世界』から孤立している」とイキっているが、人類の大多数はロシア支持である(ヨーロッパと米国と日韓台の人口を合わせても中国やインド1国の人口に満たない)。むしろ西側が世界から孤立しているまである。

反米の立場からかロシア支持が多い。白人同士が殺しあっている状況を歓迎している向きもある。

イスラーム原理主義

ロシアもアメリカも嫌いな人たち。ISIS、アル・カーイダなど。

「十字軍」の内ゲバに大喜び。

ロシアの反体制

反戦派・民主派:自分のことをヨーロッパ人だと思い込んでいるロシア人。リベラルに毒されている者も多いが、右翼を兼任していることもある(ナワリヌイなど)。

右翼:プーチンは嫌いだが普段は表立った批判は避け、オルガリヒ死ね、カフカースの腐敗軍閥の維持に税金使うな、中央アジアの移民を追放しろとか言っている人たち。現状ウクライナ侵略を絶賛しているが、ロシアがボロ負けたりしたらプーチンに襲い掛かるのは必至。

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終わりに

上記をまとめると、こんな感じである。

・リベラル派・ネオコン・保守は親ウクライナ
・極左は消極的親ウクライナ~親ロシア
・極右は親ウクライナと親ロシアの二極
・世界(欧米にあらず)は親ロシア

ついでに、淫夢周辺の人たちはどう振る舞うべきなのか考えてみる。

自由主義者(何が何でも個人の自由が絶対だという人。⚠️リベラルは自由主義者とはまったく似ていません⚠️)は、ロシア・ウクライナのどちらを支持するにせよ、西側主導の反露PCに断固として反対する必要がある。ロシア・ウクライナ両国における各種の政治弾圧についても反対するべきではあるが、遠い異国の人権状況などよりも先に、日本における政治弾圧のひどさ(弾圧以前に反体制的なデモなんかまともにできない)に目を向けるべきである。

平和主義者(つまり平和と人命が何よりも大事と考える人)は、プーチンではなく、ゼレンスキーに即時停戦を呼び掛けるべきである。そもそも、ロシア側から停戦することなどありえない―プーチンはウクライナのNATO入り阻止という明確な目的を持って戦争をしているのであり、それがなされない限り、体制が崩壊するまで、核を使ってでも戦い続けるだろう。そのような血まみれの勝利を目指すくらいなら、ゼレンスキーに玉音放送を流させ、無条件降伏してもらうべきではないのか。待ちに待った「九条教徒」の出番である。

民主主義者(民主主義・平等が何よりも大事だと信じている人)は、「プーチン体制が崩れればロシアは民主化する」というネオコンの妄想を信じているのならともかく、マジメにロシア(とウクライナ)の民主化を進めたいのなら、戦争に頼らずに民主化運動を地道にやるべきだろう。どちらが勝とうとも、両国の民主化状況が改善するはずなどないからだ。

愛国者クニを愛する人。いわゆる保守は愛”国家”者であって⚠️愛国者とはまったく似ていません⚠️)は、深く肩入れする必要はないが、どちらかというとロシアを支持するべきだろう。

「ロシアの蛮行を認めれば、中国が攻めてくるかもしれない」と危惧する気持ちはわからないでもない。しかし本邦は既にアメリカに侵略されているじゃないか。保守が後生大事に守りたがっている「国家」とはしょせん、アメリカに建てられた衛星国体制であって、日本の本来の国体とはかけ離れたものである。そんなもの、滅びてしまって結構。事大主義の対象がアメリカ様から中華様に代わるだけである。

いや、むしろその方が淫夢にとってはマシかもしれない。中華様は、経済や(東アジア基準の)文明度のみならず、淫夢に対してもレ帝より寛容である。BiliBiliとYouTubeの弾圧方式を比較すれば分かりやすい。中国当局は淫夢を「猥褻物」として、西側のリベラルは「差別」[※]として弾圧する。前者は映像の問題であり、容易に対策可能だが、後者は内容に関する対策不可能な問題であり、しかも狂信性が強い。

とにかくも、愛国者が目指すべきは、支配体制が揺らいだ隙をついて米帝を中帝共々粉砕し、本当の独立を獲得することである。ロシアがやっていることは我々がかつて戦った大東亜戦争と似たようなことなのだから、思想的な一貫性を保つためにも、歴史の先輩として温かく見守ってやるのが筋だろう。

[※]淫夢は「ユーモア」であって差別ではないと強弁することは、「昭和のSMショーは『肉体美』であって女性差別ではない」と言うようなこと(呉智英)である。


最後に、筆者の見解も表明しておこう(自分語りコーナー)

私は単なる野次馬である。ロシア・ウクライナの戦争に関しては、ミリオタ的な興味ならなくもないが、どちらかの陣営を積極的に支持しているわけではない。ただしそれは「プーチンもゼレンスキーもどっちも悪い」となど考えているからではない。どっちが勝ってもまぁ、なんとかなるだろうと思っているのである。一番好ましいのは、両方とも負けてしまうことである。

ネオコンの策謀はアフガニスタンでもイラクでもリビアでもシリアでもことごとく失敗し、アルカーイダやISISといったろくでもない連中の跳梁跋扈に繋がったことは周知の通りだが、この戦争も似たようなことになるだろう。ウクライナが勝ってプーチン体制が崩れれば、ネオコン共の希望に反して、ロシアは民主化どころかファシスト化すると私は予想している。

逆にウクライナが降参し、プーチン体制が延命したとしても、そう悪くはない。西側の軍事援助で力を付けたアゾフがゼレンスキーの敗戦責任を問い詰め、「アゾフマイダン」を起こすに違いないからだ。ウクライナが正真正銘のネオナチ国家になってくれれば、ヨーロッパのファシズム再建の助けになる。

現状、この戦争は対岸の火事にすぎない。しかし革命的祖国敗北主義を辞さない身としては、向こうの火事がこっち側に広まってくれば喜ばしい限りである。

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