ロウリュを受ける

銭湯・サウナの類が好きなので、ひとりでよく行く。
札幌でサウナといえば!的な名物スパ施設があって、そこのロウリュを体験してみたいとここ一年ほど思っていた。
しかし足が伸びなかったのは、ロウリュが行われる際には熱波師に拍手をするとか、かけ声があるなどのしきたりがあると聞いていたからだ。怖い。

筋肉質の熱波師が登場するや、「ヨッ」やら「オオーッ」などの野太いかけ声が飛ぶ。熱々の石にひしゃくで水をかけ蒸気を発生させると、サウナ室の温度を少し上回る、体がぎりぎり耐えられるくらいの高温の熱波を、全身を使い2度3度と行き渡らせる。低いうめき声があちこちで漏れる。

ひとしきりパフォーマンスが終了して熱波師が一礼すると、誰からともなく拍手が巻き起こり、やがて室内は熱狂の渦と化す。惜しまれながら熱波師はタオルを置いて退場。しかし誰も席を立とうとしない。
次の瞬間、蒲田行進曲が流れはじめ、ひときわ派手な照明を浴びて熱波師が登場する。つづいてオーナーの登場、しまいにゃオーナーの奥さんも登場。そしてアンコール熱波にフロアは酔いしれる。

のれる気がしない。リフレッシュしに行ってメンタルをやられては本末転倒だ。

ところが、最近仲良くなった後輩が「僕はそこの会員なので一緒に行きましょう」と誘ってくれた。ロウリュも体験済みだという。心強い。ふたりでロウリュをめがけてサウナ室にもぐりこんだ。

結果から言うと、さきほどの空想ロウリュの熱狂の渦から後は完全に僕の妄想だった。前半は割とその通りだった。そして、拍手やかけ声も全員で団結する感じではなく、別にやりたい人はやるという雰囲気だったので案外普通に適応できてしまった。

翌週、そこにはロウリュをひとりで受ける僕の姿があった。

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