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物静かな成績上位の営業マンたち

成績優秀な営業マンと言えばどんな人物を思い浮かべますか?      面白おかしく話しができる口達者な人ですか。熱っぽく語る押しの強い人ですか。   

実は全く逆なのです。

私は30年近く営業の仕事をしていますが、私が見てきた年間表彰を受けるような営業マンは、口下手であまり話さない人が多いです。       いわゆるイケてる感じがしない人です。

イケてない人 = 売れる人ではありません(笑)

実際に、そのようなタイプの成績上位者とロールプレイング(お客様との対話を想定し、マンツーマンで社内で実演すること)をしても営業トークはあまり盛り上がりません。 

なぜ、一見するとスター的な資質が感じられないそのような人が、好成績を上げることができるのでしょうか?
営業マンが好成績を上げるために必要な資質とは何なのでしょうか?

・力づくで人の心を動かすことはできない。

お客様は営業マン押しの強い売込みなど望んでいません。        話しが上手 = 売れる人というのは、営業側の勝手な思い込みです。   押しの強いトークの方がやっているように見えるという営業側の勘違いです。

若い営業マンの商談に同行した際、こう頼まれることがあります。
「長く追求しているお客なので、この商談何とか今日ねじ込んで下さい!」この営業マンの気持ちはわかります。                 でもこのような営業マンは、力づくでお客様を動かすことができると勘違いしています。

買うか買わないかを決めるのはお客様自身です。            力づくで他人が決めることではありません。              それでは詐欺や脅迫と同じです。

イソップ童話に「北風と太陽」というお話しがありますね。       旅人のコートを脱がせることができるのは、力づくでビュービュー吹き付ける北風ではありません。ポカポカと暖かい光を与える太陽です。

デールカーネギーの「人を動かす」という著書にたいへんわかりやすいエピソードが書かれています。

哲学者のラルフ・ワルド・エマソンは、あるとき息子と一緒に一頭の子牛を小屋へ入れようとした。
だがどうしても上手くいかない。後ろから押しても、前から引いても、子牛は4本の脚を踏ん張って抵抗する。
二人が困っていると、農家の手伝いの娘がやってきて「私にやらせてくれる」と言って子牛のそばへ行くと、その口に自分の人差し指をふくませた。そしてその指を吸わせながら、子牛をやさしく小屋の中まで引いていったのである。

人を動かす力を持てるのは、相手の立場に身を置ける人だけである。
人を動かすやさしい手があれば、相手を動かして行動を取らせるのに力は殆ど必要がない。

成績優秀な営業マンに必要な資質とは何か?


それはお客様から信頼されることです。
わかりきった答えですね。

では、信頼を得るためには何をすれば良いでしょうか?
まず、お客様の話しをしっかり「聴く」ことです。

人は、自分のことを聞いて欲しいと思っています。
それが相手から認められたという証だからです。

普通は気に入らない相手の言うことは聞きません。
お客様の話しを聞かないということは、相手のことが気に入らないと言っているのと同じです。
ですから、よく話しを聞きましょう。                 ただ「聞く」のではなく「聴く」ことを心掛けましょう。

誰も親身になって聴いてくれない相手に本当の悩みを打ち明けたりしません。ですからお客様の本音を「聴く」ことができない人に問題解決はできません。

「聴き方のスキルを学べ」

コミュニケーションはキャッチボールと同じです。           

営業マンはどうしても自分の話し方や話題など投げる方向のスキルを鍛えようしがちです。しかし、営業力を上げるためには、豪速球トークの練習をするより相手の会話のボールをうまく受ける練習をするほうが役に立ちます。

そもそも、キャッチボールをしていて楽しいかどうかは、受け手のキャッチの仕方に大きく影響されます。話が盛り上がらないのは、話題のせいではありません。それよりも大事なのは「聴く力」です。           相手が話したくなるような聴き方ができているかどうがが問題なのです。

海外のコメディドラマ「フレンズ」や「フルハウス」などで観客の笑い声が入るのを聞いたことがあると思います。これらのドラマは観覧型撮影という手法がとられています。テレビ関係者の間では、観客の前で演じる方が役者たちの演技力が増してより良い作品ができると考えられているからです。

お客様とのコミュニケーションでも同じです。             聞き手のリアクションが会話の盛り上がりを左右する重要な要素となります。

会話を盛り上げるポイントは3つあります。              

①相手の話を促す。(うなづき、あいづち)
②共通点を見つけて盛り上げる。(共感する)
③相手の話しを深堀する。

もう少し具体的に説明します。

①相手の話を促す。(うなづき、あいづち)

会話が切り出された時の積極的な「聴き方」の基本は「うなづき」と「あいづち」です。

例えば相手が「昨日、映画を観に行ってきたんだ」と切り出したとします。この後、どう言えば会話が盛り上がるでしょうか?

①「へえー、映画を観に行ったの?」
②「何の映画?」
③「それで、面白かったの?」

などが考えられる返答ですが、                    ベストな選択肢は①「へえー、映画を観に行ったの?」です。      ただ相手の言葉を繰り返すだけで芸が無いように思えますが、「オウム返し」という立派なテクニックです。

この答えがベストだという理由があります。

「昨日、映画を観に行ってきたんだ」の後、相手が話題にしたい内容がまだわからないからです。「その映画が面白くてね~」だといいんですが、もしかしたら「その映画を観に行く途中でね~」と道中の出来事の話しをしたいのかもしれませんし、「でも最低なのよ~」と別の大きな話題のことを話したいのかもしれません。                       もし、②「何の映画?」や③「それで、面白かったの?」と返してしまうと、相手の話題がそれてしまいます。

おばさん同士の会話なら、話し相手の反応に関係なく、お互いに投げっぱなしでも盛り上がるでしょうが、普通の相手ならつまらないと感じるでしょう。ですから、会話が切り出されたら相手の眼を見ながら、まずは「オウム返し」しましょう。

②共通点を見つけて盛り上げる。(共感する)

共感するとは、相手と同じ考えや気持ちになることです。

「そうですよね、私も同じように考えていました」と考えに共感する。 「それ、私も好きなんですよ」と気持ちに共感する。

ここで大切なことは、言葉ではなく気持ちです。感情移入がなければ、相手にただの調子がいい奴だと思われてしまいます。

メラビアンの法則というのを聞いたことがあるでしょうか?       1971年にアメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱した、人が言葉自体から受け取る情報は全体の7%に過ぎず、耳から38%、目から55%の情報を取っているという概念です。

例えば、自分の言葉を聞いた相手が「そうですよね」と言いながらも、そっぽを向いていたらどうでしょうか。きっと「こいつ全然聞いてないな」と感じるでしょう。

他人に共感するためには、相手の目を見ることが大切です。目は脳の一部が体の外に突き出してきた神経だと言われています。ですから相手の目を見ることは、相手が脳で考えていることを見ることになります。

電話でお客様と話していると相手の本音がわからないので、気持ちを察することができずうまくいかない。電話でのアプローチは難しいと思ったことはないでしょうか? これも同じ理屈です。

共感力を鍛える方法として、ラジオを聴くとよいそうです。TVや動画など視覚情報に頼るのではなく聴覚だけで情報を取っている時、脳の前頭前野のはたらきが活発になると言われています。「場面想像」といって頭の中で映像のイメージを作り出しているので想像力が鍛えられるそうです。

TVやゲーム世代の若者に対して気が利かないと感じるのは、こんなことも関係しているのかもしれません。



③相手の話しを深堀する。

相手の切り出した話題に対して、「それで、どうなったんですか?」「なぜ、そうしようと思ったんですか?」と質問することで会話は盛り上がります。相手は「そんなに私の話しが聞きたいなら特別に話してやろう。君とは気が合いそうだ」と感じて心の扉を開いてくれます。

この時に、どんな深堀質問を選択するか?
ここであなたのセンスが問われます。

相手が話したいと思っている話題の核心を予測して、助走をつけてあげられるような質問ができれば「そう、今それを言おうと思っていたところだ」と感じさせることができるので、とても気分が良くなり、手を広げてあなたを受け入れてくれることでしょう。

こうなればあなたの好感度は上がり、その後の会話や仕事の話しもスムーズに進みます。

営業成績を上げるための方法


もしあなたが口下手なタイプで、営業成績が思うように上がらず、「自分は営業に向いてないのではないか」と感じていたとしても心配する必要はありません。流暢に話せないことは、むしろ強みとなります。

仕事をやり遂げるという強い気持ちは最低限必要ですが、それが身勝手な想いならお客様の信頼を得ることはできません。

相手の気持ちに寄り添うという考え方が大切です。
相手の役に立ちたいというホスピタリティの精神が必要です。

お客様に強気で押しまくる営業スタイルを強要する古いタイプの上司の言うことなど放っておきましょう。

まず、お客様の話しを聴きましょう。そこから道が開けるはずです。

丁寧に聴くことを続ければ、あなたのファンとなるお客様が増え、営業成績が上がっていくことでしょう。


生き残る営業とは


最近、かんぽ生命の営業手法が問題視されています。

目先のノルマを達成して好成績を上げたいがために、二重払いなどお客様に不利益となる契約を続けていました。

お客様のことを考えず、力づくで人を動かそうする営業手法がこのような不正を作り出したのだと思います。

このような営業を行っていると、例え成績が上がっていたとしても、いつかお客様から愛想をつかされる日がくるでしょう。

世の中にモノやサービスがあふれている現在の市場で、毎年前年対比で目標数字をクリアすることは容易ではありません。

しかし、お客様の気持ちに寄り添って誠意のある営業をすることこそが、結局は人や企業が生き残る唯一の道なのです。

「情けは人の為ならず めぐりめぐって己がため」ですね。






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