設定型Saasと目的型Saas

こんな人向け

 ・SaasベンダーのCustomerSuccess関係の人
 ・フリーランスでSaas界隈に出没している人
 ・ユーザー企業でSaasの担当をしている人

まとめ

 ・システム導入の目的とは
 ・設定型/目的型で目的の性質が異なる
 ・目的が異なるので、セールス/オンボード/サクセスの役割も
 ・それぞれの代表例
   設定型 Teamspirit、freee、X-point etc
   目的型 Trello、Slack、sansan etc

 ※設定型を導入する場合のポイントはこちら

前段

ユーザーとして某勤怠系Saasの導入をしながら、某コミュニケーション系Saasの導入を進めていく中で、ベンダーが提供するサービスレベルの違いにもやっとしていました。勤怠系は稼動までそれなりに追いかけてくれるのに、コミュニケーション系は契約するとすぐ使えるので、全社展開完了までそこま必死には追いかけてくれないんですよね。

どちらもSaasなので、ベンダーに過度の期待をするのは禁物なのですが、ここまでスタンスが違うのは何でだろう?というもやもやを言語化するために、某Web会議系Saasの中の人と話してみました。
そうすると、Web会議系も全社展開完了までは追いかけたいけど追いかけきれてない。との事でした。ユーザーの目的が明確になっていれば追いかけられるけど、明確になっていない場合は追いかけようが無いとも。。。

「目的」というキーワードから、目的型と設定型という切り口を見つけ、その切り口でそれぞれの差異を書いてみました。

導入の目的とは

昔はシステムが高かったので、気軽に買えませんでした。買おうとすると「目的は?費用は?効果は?」と詰められた課長さんも多くいらっしゃると思います。
Saasが出てきた事で、システムは身近になっています。お試しレベルであれば年間数万円レベルで導入することも可能なので、「目的は?費用は?効果は?」と質問されずに不明確なまま導入している事例も増えてきているでしょう。

目的が不明確だと、導入した後のシステムを使って定着させるという部分がなかなか定まらない可能性が高まります。今ある業務から変化して貰う為には、大なり小なりの目的やそこから発生するメリットが必要です。最初(導入)はラクなのですが、後(定着)が大変になります。
システム導入プロセスにおいて、目的の設定は極めて重要です。

目的の設定は後からは出来ません。システムを動かしてから、「さて、目的をたてよう」としたところで、システムありきの目的にしかならず、本来立てるべき業務としても目的を立てることが出来ないからです。

「目的は?費用は?効果は?」という質問は、システムが高い買い物だったから必要だったわけではなく、システム導入というプロジェクトにおいて欠かしてはいけない事だったのです。

Saasの目的設定

目的の設定といっても、簡単にできるものからやや難しいものもあるかと思います。対象となる業務領域が目的設定の難易度に関係しているはずだと思います。

勤怠系Saasで考えてみると、目的は「1.法令に則った勤怠管理」が第一に来るでしょう。次に「2.開発工数のプロジェクト別管理」や「3.従業員の使いやすさ」が来る場合もあると思います。
1や2については、システムを正しく導入する事で目的は達成できそうです。3については稼動した後のユーザーアンケートなどを通して達成度合いを評価できそうです。

コミュニケーション系Saasではどうでしょうか?目的が「1.既存コミュニケーションツールの置き換え」だったり、「2.コミュニケーションの活性化によるES向上」などになりそうですね。
1の場合は過去ツールの撤廃で達成できそうですが、2は何がどうなれば達成と言えるかが難しいところです。

目的を設定する場合も、達成度合いを評価できる基準がないといけないので、「2.コミュニケーションの活性化によるES向上」はもう少しブレイクダウンが必要そうです。例えば、「2-1.グループ数が100を超える」や「2-2.いいねが10,000を超える」などは測定可能な目的といえると思います。

評価できる目的を事前に立てておくことで、プロジェクトの走るべき方向が定まり、判断に迷った場合の道しるべとなってくれるはずです。

設定型Saas

サービスの利用がそのまま目的になるのが設定型Saasです。
Teamspiritやfreee、X-pointなどはそれぞれ以下のような第一の目的が設定され、自社の業務にあった設定作業がシステム定着までの大部分を占めます。

  Teamspirit:法令に則った勤怠管理
  freee:会計処理のシステム化
  X-point:稟議システムの構築

設定型Saasにおいては、ユーザーがSaasを探す時点で目的が固まっている事が多い為、ベンダーはユーザーの目的を強く意識することは少ないと思います。ユーザーも「目的を達成する」というよりも「導入を終わらせる」事に目がいきがちです。

結果的に、セールス/オンボード/サクセスの目的に対する役割は以下イメージになるでしょう。

  セールス:目的は確認する程度
  オンボード:導入に一所懸命で、目的は二の次
  サクセス:ユーザーの満足度が低下したタイミングで
       そもそも目的って何でしたっけ?と意識

目的をベンダーが強く意識するのは、ユーザーの満足度が低下したタイミングまで無い可能性があります。ユーザーの満足度が低下しているという事は、目的が達成されていないという事です。第一目的は達成したが、第二、第三の目的が達成されていない可能性があります。
しかし、ここまで時間がたってから第二、第三の目的を探してリカバリするのは困難な筈です。設定型Saasのサクセスがトラブっている場合、多くはSaas導入時の目的設定がうやむやだったからだと思われます。

設定型Saasにおいて、目的を意識されることは極めて少ないと思います。逆説的ですが、設定型Saasに関わる皆様においては、目的を意識することでより成功に近づけると思います。

目的型Saas

目的型Saasは名前の通り、システム導入の大部分を「適切な目的の決定」と「目的を達成する為のマイルストーン設計」が占めるSaasです。システムを使うという点において、設定作業がほとんど必要ないものは全て目的型Saasと呼べると思います。その為、目的は「いかにシステムを活用して成果を上げるか?」という部分になってくると思います。

  Trello:タスク管理ツールを通して、チーム業務の効率化を目指す
  Slack:Slackを管理業務(勤怠やWFなど)の入り口として集約・効率化する
  sansan:全ての社員がsansanで名刺を管理して顧客情報を共有化する

こういった目的を達成する為には、よりブレイクダウンした具体的な目的設定(マイルストーン)が必要となります。また、目的に応じたシステムの使い方を定義し、ユーザーが使い方を間違っていないかもウォッチし続ける必要があります。その為、ベンダーは設定型とは異なる考えで、目的に対してアプローチする必要があります。

  セールス:ユーザーと共に、目的をブレイクダウンしマイルストーンの
       定義をサポートする
  オンボード:セールスと共に、マイルストーンを実現する為のシステム
        運用方法を提案する。最初のマイルストーンが実現できて
        いるかを、ユーザーと共に追いかける。
  サクセス:後続のマイルストーンをユーザーと共に追いかけ、目的の
       達成をサポートする

全てにおいて、目的を強く意識する必要が出てきています。また、セールスとオンボードの垣根が低くなり、場合によってはオンボードチームが単体では存在していないというベンダーもあるでしょう。

終わりに

設定型Saasは、第一の目的がシステム構築になる事が多く、導入をいかに上手くするか?に目がいきがちになります。しかし、設定型Saasにおいても第二、第三の目的を意識することで、よりよい効果を得られると思います。

一方、目的型Saasについては、すぐにシステムが利用できてしまうが故に、深く検討せずにシステム導入をしてしまうケースもあると思います。浅い考えでシステム利用を開始すると、結果的に定着せず効果を得られない。という状況に陥りかねません。

自分自身、目的を立てるにあたって、設定型/目的型それぞれのベンダー側の特徴も使いながら、よりよりSaas導入を目指していければと思います。

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