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私なりの描き方

お絵描きが楽しくなかったんです。

バランスの取れないラフ、綺麗に引けない線画、はみ出さないよう神経を使う下塗り、影とハイライトのバランスがいまだに謎な塗り、無限に増えていくレイヤ……。
しかも一枚を完成させるのに数週間かかり、時間とともにモチベーションは下がります。かけた時間に対して圧倒的にアウトプットと満足感が少ない。

いろいろなところで学んだ、他の人と同じような一遍通りのやり方に限界を感じました。

シンプルにいえばスランプ。
そんな中、私は前回の記事の時と同じく、安倍吉俊さんの動画を見ていました。

「スランプが来た時とは、自分が執着していたものを捨てて、前に進むべき時が来たと言うこと」
安倍さんの場合は、自分の癖っぽい描き方を捨てるというお話でしたが、私の場合はむしろ逆で、何か自分らしくないものに囚われているような感覚がありました。

なので、やめました。
他の人と同じ描き方を続けるのを。

好き勝手やってやれ。
そう思って、勢いで30分ほどで描いたのがこれ。

※2022年5月7日、イラストを削除させていただきました

もともと私はアナログでスケッチブックなどにシャーペンで描くのが好きだったので、デジタルでも同じように描いてみました。
色塗りも色鉛筆で薄い色から重ねていくのが好きだったので、似たような方法を踏襲。
はみ出したっていいじゃない、影とかハイライトとか置いといてさ、気分で塗ってみよう。
そんなノリです。

そんなノリのわりには、(もちろん手癖たっぷりで雑ですし上手いとも言い難いものの)このイラストはとても思い通りに描けたんです。
描いていて苦じゃない、楽しいし、短時間で自分の望む絵が描けた。そんな達成感がありました。
おそらく、今まで練習してきた技術とか、学んできた知識とかが、それなりに手からきちんと出力されていたのだと思います。

そして、ここから約一ヶ月で何枚か描いてみて、自分の描きたいテイストに描き方を落とし込んでいきました。
まだまだ未熟で未完成なところもありますが、以前よりはぐっと描きたいように描けているという実感があります。

というわけで、私の中でいろいろなことが落ち着いてきたので、備忘を兼ねて今の描き方のメイキングとポイントをご紹介します。細かい技術的なお話は省略して、全体の流れを中心に書いています。
同じような悩みを持つ人にとって、少しでも参考になるようなことがあれば幸いです。

メイキング

1. テーマと資料(写真)を探す

今年の私の目標は「イラストにストーリーをもたせること」なので、どんな落書きでも(模写やスケッチが目的でなければ)テーマをもたせることにしています。
今回はツイッターに投稿した文言:「甜花ちゃんにカメラを向けられて『なになに〜?』って言いながらもカメラ目線をくれる大崎甘奈さん」を描く前から考えていました。

そして、イラストの元になる写真を探します。
私は基本的にすべてのイラストを写真を見つつ描き起こしています。
もちろん練習として何も見ずに描くことも大切だとは思うのですが、今の私に必要なのは練習よりも描きたい絵を描くことだと割り切っています。

今回参考にした写真は以下のポーズ集からの引用です。有名どころなので、見覚えのある方も多いかもしれません。

2. とりあえずざっくり模写する

まずはあまりキャラクターを意識せず、できるだけ写真に忠実に、ふわっと模写していきます。

ここでは全体のシルエット、身体の特徴(とくに体の傾き、首の傾き、肩、腕、胴体のバランス)を重視して拾っていきます。私は細部は描けるけど全体を見るのが苦手な性格なので、この全体を拾うステップに一番時間を使います。このステップで違和感を潰せば潰すほど、後々の完成度が上がってきます。
ラフ~線画のペンは、個人的には鉛筆系のペンが柔らかい雰囲気が出て好きです。細めの設定にして、最初から最後まで鉛筆一本で描いていきます。

この段階でも少ない線のロングストロークですっと引けると良いのかもしれませんが、無理はしません。引けそうなところは少なくするよう努力はしています。
あまり難しく考えず、「とりあえず手を動かしてみるか~!」という気持ちです。

3. キャラクターをのせてみる

ある程度のシルエットとバランスが定まってきたら、瞳の形や髪の毛、服装など、キャラクターの特徴をのせていきます。
当然、模写のままだと頭の大きさなど異なってきますので、そのあたりのデフォルメのバランスもここで決定していきます。服の皺も意識し始めます。
この段階でも、もし変な部分に気づいたら大きく消して書き直したり、投げ縄選択で動かしたりして大幅に修正します。

このあたりからどのへんに線を引けばいいか見えてきますので、2.で描いた線は消しつつ、ロングストロークで線を整えることを重視していきます。
線がぐちゃってなってるとこは、頭の中でよくわかってないくせに見て見ぬフリをしている箇所なので、元の写真を見つつ修正します。

本当はこういうのは「アタリ」「大ラフ」「ラフ」……とレイヤーを分ければ綺麗に仕上がるのですが、私は新しいレイヤーを作ったときの「また1から線を引いていくのか……」という絶望感が嫌いなので、分けていません。

このあたりの考え方は、昨年のPixiv DRAWFESTでLoishさんがお話されていた「ラフをある程度残すことで、もともとのイラストの力強さをそのまま活かすことができる」というお話に非常に感銘を受けたこともあります。

私の場合は面倒くさがりとも言いますが……。

4. 線を整える

ここまで来たら、はみ出ている線を消したり、アウトラインをなぞって線を若干太くしたり、ガサガサになっている短い線を消してロングストロークにしたり、と修正していきます。瞳の細かい形や表情もこの段階で最終決定します。
自分で「まあ、いいんじゃない?」って思ったら完成です。

5. うすーく塗る

塗りは好みの問題になってきます。
私の塗り方は流行りとか多くの人が好みそうな塗り方をガン無視しているのでご了承ください。

私はまず、非常に薄い色で、水彩ブラシを使ってざっくりと塗って色をつけたときの雰囲気を掴みます。このとき、ハイライトになる箇所(髪の毛など)は最初から塗りません。
ある程度パーツごとにレイヤ分けしますが、バケツで塗りつぶししません。あからさまにはみ出ているところは消しますが、場所によっては色が混ざったほうが、かえって自然な色合いになったりすることもある気がします。

雰囲気が見えてきたら、彩度を上げて、ブラシを細くし、影になる部分を塗っていきます。濁った感じの雰囲気になりがちなので、セーターなど明らかに色彩が低い部分を除き、基本的に影でも彩度は下げません。有名な(?)話ですが、色相を振るだけでも影色は作れます。

6. コントラストを上げる

個人的に前段階の時点で満足度は高いのですが、翌日見ると「うっっっすいなこれ……」となりがちなので、さらに影の部分を塗り込んでいきます。
このあたりはもう少し感覚に頼らない方法を学ぶべきなんだろうな、と思う部分です。

最後にネクタイの柄やスカートの柄など細かいところを描き込んで完成。

背景は挫折しました。
他にもスカートの造形など細かいところが気になりますが、そのあたりは「次回の凛音がうまくやってくれるでしょう」で割り切ります。
本当は1.くらいの段階で気づいて修正するべきですし、背景も1.の段階で描いておくべきです。次回からそうします。

ポイント

他に、この数週間で感じたことをまとめます。
あくまで個人的な所感なので、このあたりの考え方は人によって大きく異なると思います。

見ていて好きなイラストと描いてて楽しいイラストは違う

見ていて「あ!好きだな!」って思うイラストをそのまま描こうとすると、とたんに難しく感じてしまう。
もちろん、塗り方や線のとり方を学ぶことはできますが、完成形として好きなイラストの、その過程までもを自分が好んでできるわけではないということです。

「好きなイラストレーターのように描くことを諦めたら、自分らしく描けるようになった」という話も聞きます。
ある程度の前向きな諦めも必要なのかもしれません。

基礎知識の重要性

メイキング1.〜2.はとくに、100%模写ではなくイラストとしてのデフォルメを入れる以上、空間把握能力や(人を描くのであれば)人体構造の理解が必要になってきます。変なデフォルメの入れ方をすると人体が崩壊するからです。
今まで学んだことや練習してきたことは、このあたりに活かされてるっぽいな〜という感覚があります。

線画だけで完成させる

私の場合は女の子をよく描くので、線画の段階で可愛く描けているかを最重要視します。
もちろん色塗りも大切なのですが、線画の段階で可愛さとか意図する雰囲気が出ていないと、いくら色を付けてもカバーしきれない気がします。

ただし、上に書いたやり方だと「どこまでが線画か?」という明確な区切りはないので、線と着色とを交互に組み合わせていくようなこともします。
それらを経た上で、解像度が上がってきたときにイメージ通りに描けているかがミソです。

自分を信じる

最後はこれに尽きます。
とくに、私の場合は仕事ではなく趣味でお絵描きをしているので、いかに自分の思い通りの表現をするかが鍵になってきます。
もちろん、表現の幅を広げたり技法を学んで、自分の思いを具現化するスキルは必要ではありますが、そのスキル自体が自分の思いに先行してしまうと本末転倒です。
「本当に描きたいことはなに?」
「本当は何がしたいの?」
「そのためにはどうすればいい?」
そんなことをずっと自分に問い続けて、出てきた答えの導くままに手を動かしています。

さいごに

しばらくはこんな描き方とタッチで続けてみようと思いますが、きっとまたいつか、自分で自分に納得のいかない時が来ると思います。

その時は、冒頭で示した安倍さんの動画のように、もう一度自分の執着を捨てて、生まれ変わらないといけない時なのでしょう。
そして、きっとそれは永遠に終わることなく繰り返されるのだと思います。

次、もしその時がきたら、こうやって考えたことを見直して、また自分なりの描き方を再確立していきたいです。

最後までご覧いただきありがとうございました。


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