シロクロセカイ プロローグ

登場人物のキャラ設定はこちら(ほとんどがネタバレなので注意)
https://note.com/7shino_notsu/n/n6c8c8a11ef71



「……ーい、…………おーい……」
「おはよーー!」
「んん……」
 わたしの隣で寝ていたその子は、眠たそうに目を擦りながら、布団からのっそりと顔を出した。
「うーん、もう起きる時間かー……」
 まだ半分寝てるような声で、そう呟く。
「そうだよ〜、起きて起きて!」
「ふあぁ…… とりあえず顔洗ってくるね」
 眠たそうな顔をしながら、布団から出てくる。
「あ! 忘れてた。わたしもしなきゃだ〜」 
「そのあとはごはんだね」
「うん! 今日は何が出るかな〜」

「おいしかった〜」
「ごちそうさま……」
 いつものように食べ終わった食器を2人でまとめる。
「よし、あ、じゃあ扉開けて…… ぼくが運ぶから」
「は〜い」
 わたしはささっと扉に駆け寄って、ドアを開ける。
「ありがと…… ん、よろしくね」
 扉の前で待ってくれていた"それ"に食器を載せると、"それ"はくるりと方向転換して、どこかへ向かっていった。
「……さっきのあれ、なんてやつだっけ」
「あれって? ……ああ、さっきの機械のことね。えーっと、ハイゼンロボット……みたいな名前だったかな。どこでその名前見たか忘れちゃったけど」
「あー! なんかそんなこと言ってたね」
「うん…… っていうか、この質問も何回されたことか……」
 ため息混じりにそう返される。
「あはは、なんか忘れちゃうんだよね〜」
「もう…… 忘れっぽいんだから」
「そ、そんなことより! 今日は何して遊ぶ? それとも昨日の本の続きー?」
 さらっと話題を変える。
「うーん、どうしようかな…… ぼくはちょっと遊びたいけど、本の続きも気になるし……」

 それからしばらく、2人で一緒に遊んだり、本を読んだりした。
「…………」
 本を読むのにもちょっと飽きちゃって、ふと、窓の外を眺めていたとき。
「……また外見てるの?」
「わっ」
 突然後ろから声をかけられて、裏返った声が出てしまう。振り返ると、わたしを真っ直ぐに見つめる目があった。
「あ、あはは…… なんかボーっとしてたみたい」
「……結構外見るの好きだよね」
「そうかな〜?」
「うん、なんかよく見てる気がするな」
「そっかー」
 自分でもそんなに意識してなかったけど、言われてみると確かにそうだったかも。今みたいにぼけーっと眺めるの、よくしてた気がする……
「…………のかな」
「ほえ? なにか言った〜?」
「へ? ああ、いや、一人言…」
「えー、気になる気になる〜」
「……このお部屋の外って、どんな感じなのかな、って思って」
「外?」
「うん…… なんかこう、なんて言ったらいいかわかんないけど、なんとなくどんなだろうなーって気になるっていうか……」
「…………」
「……な、なに? ジッと見つめて……」
「ううん、言われてみればそうだなーって思って…… 確かにどんな感じなんだろうね……? わたしたちの他に誰かいたりするのかな?」
「うーん……」
 考え込むような顔をして、視線を下に落としてしまった。黒い髪から覗かせた片目は宙の一点を見つめているようだった。
「……あーっ、そうだ!」
「わっ、びっくりした…… 急に大きな声出さないでよ……」
「あわわ、ごめんごめん……」
「ううん、大丈夫…… で、なんて言おうとしたの?」
「えーっとね、2人でお外に出てみない? って」
「えっ……?」
 わたしの言葉を聞いて、目を丸くさせている。
「ねっ、いいでしょー!?」
「で、でも……」
「そんな心配しなくても大丈夫だよ〜。ほら、早く早くっ!」
 わたしはその子の腕を掴んで、ぐいっと引き寄せる。
「え、わっ、分かったから引っ張らないでよー!」
「あははっ、こっちこっち!」
「ま、待ってよ〜……」
 そのときのわたしは、今までで一番ワクワクしていた気がする。わたしたちが知らない世界へ踏み出した、初めの一歩だったのかもしれない。
 2人なら、何があってもきっと大丈夫。そう思って、一緒に冒険してみることにしたんだ。


-つづく-

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