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あなたへの花#3

「あなたへの花」#3です。
今回は和人くんの大学生のお友達が出てきます。
なんでも結婚するお姉ちゃんにプレゼントをしたいとか。
紆余曲折あって、なんとか……というところに更なる問題点が……。
一体どうなってしまうのでしょうね。
是非お読みください。

※誤字脱字、文構造がおかしなところがあるかもしれません。見つけ次第訂正いたします。

時間配分
30~45分程度

性別配役
男:3
女:1

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整理次第、順次添付予定。

登場人物

香花(こうか)……とある花屋の店主。

和人(かずと)……とある花屋でアルバイトをしている大学生。

楽(らく)……和人の大学の同級生。楽観的。

香樹(こうき)……香花の兄。連絡は出来るが所在不明。

下段より本編。



花屋にて。

香花「よし、記帳終わり」

誰かが入って来る音。

香花「はーい、いらっしゃ」
和人「お疲れ様です……」
香花「あ、和人君、お疲れ……」
楽「へぇ、ここがお前のバイト先かぁ~!」
香花「!!和人くん、その子は」
和人「はい、あの」
楽「俺、木嶋和人のベストフレーンド!相沢楽(あいざわらく)っす!」

大学にて。

和人「んぁああ終わったぁ……うっし、バイトに行く前にコンビニ寄って」

楽「なぁ木嶋!!」

和人「うわぁ!?」

楽「うぉ!?」

和人「……って、相沢(あいさわ)かよ……後ろから来るなよ」
楽「後ろから来るなって、ゴジゴ15か?」
和人「撃ってやろうか?」
楽「ふふふ……俺の早打ちに勝てるかな?」
和人「……行くぞ」
楽「おう……!」
和人「……んじゃ、バイト行くわ」
楽「おう!行って……じゃねぇ!ちょちょちょちょ!!!」
和人「なんだよ……俺、次の電車乗らないと間に合わないんだけど」
楽「おけおけ!乗ろう!俺も行くから!」
和人「あーじゃあ一緒に……」
楽「マジ!?うわぁ助かるぅ~」
和人「は?」
楽「あ?」
和人「何だ、助かるって」
楽「え、だって、一緒について行っていんだろ?花屋」
和人「……は?」
楽「お前花屋でバイトしてんだろ?お願いだ!頼みたいことがあるんだ!」
和人「……えぇ」

場面は変わって、花屋。

和人「ってことがあって……」
香花「なるほどね」
楽「楽とか、楽くんとか、楽ちゃーんとか!好きに呼んじゃってください!!うおっ!…………なぁ和人!これなんていう花だ!?」
和人「あいつ……一緒についてきておきながら……!」
香花「ふふ、面白いお友達が和人くんにもいるのね」
和人「そんなんで片付けないでください」
楽「なぁなぁ」
和人「うわぁ!?」
楽「あはは!お前ほんと後ろから弱いなー!」
和人「お前……!俺は仕事があんだ!お目当てのもんが見つかったらさっさと帰れ!」
楽「あっ、そうだ!そうだった!てんちょーさん!あの、ザ・ジャパニーズフラワーってあります?」
香花「ざ、ジャパニーズ、ふらわぁ?」
楽「はい!イッツ、チェリーブロッサァァム!」
和人「ってことは……」
香花「桜」
楽「イエス!ざっつらーい!」

少し切り替えて。

楽「これ、俺の姉ちゃんです」
和人「え、これがお前の?」
楽「おう!似てるだろ?」
和人「全く」
楽「え?」
和人「姉ちゃん超しっかりしてそう」
楽「は!?俺だってしてるだろ!?」
和人「単位十個落とした人間を、しっかりしてるとは言えない」
楽「あれはだなぁ!!!」
香花「で、このお姉さんがどうかされたのですか?」
楽「あっ、はい!結婚するんス!再来月!」
香花「ご結婚ですか」
楽「うっす!で、結婚したら、庭がある家に引っ越すらしくて、そこに桜の木を植えたいんです俺!」
香花「そう、ですか……」
和人「へぇ、お前そういうこと考えるんだな」
楽「いいだろ!?つーことで、桜の木を買いたいんですけど、お願いしゃす!!」
和人「任せなって。香花さんならいいの取り寄せてくれるよ」
楽「マジ!?」
和人「ね、香花さん」
香花「無理、ですね」
和人「え?」
香花「無理というより、難しいです」
楽「てんちょーさん?」
香花「楽さん、すみませんが、桜はオススメできません」
楽「え!?」
和人「え、一体どうして」
香花「桜の木を管理するのは大変だからです」
和人「そうなんですか?」
楽「でもそこら辺に一杯あるじゃん」
香花「それは自治体もしくは行政などが、見えないところでしっかりメンテナンスをしているからです」
和人「そんなに大変なんだ……」
楽「じゃあそれをちゃんと家でもやれば」
香花「ちゃんとやったとしても、それ以外に“庭で”という点でも、オススメはできません」
楽「庭……」
香花「はい。まず桜と言えば……。二人ともどんな桜を思い出しますか?」
和人「え、んー俺は、こう桜吹雪がちらちら降って来る感じかな」
楽「どーんって感じ?お花見楽しいよね~」
香花「そう、二人と正解、沢山の花びらが降ってきて、大きい」
楽「当たり前じゃね?」
香花「その当たり前が庭では大変なんです。大きいということは、それだけ成長速度が早いということ。」
和人「確かに、小さい桜の木ってあんま見ないかも……」
香花「その通り、桜の木ってとても成長が早いの。一メートルの植木が一年で三メートル、四メートルなんてこともある」
楽「マジで!?」
香花「そう、それに伸びるのは上だけじゃない」
和人「そっか、それだけ早いってことは、根を張るのも尋常じゃないか……」
香花「その通り。根は養分を沢山蓄えようと、太く、強く、しかも浅く広がっていく」
楽「確かに、公園の桜の下って根っこがぼこぼこしてるよな」
香花「じゃあそれが庭で起きたら?」
和人「家の近くに植えたら、家が傾く?根っこでこう。盛り上がって。」
香花「ご名答。事例も何件もあるわ」
楽「マジか」
香花「それ以外にも近隣トラブルにもなりかねないし、育ったらそのまま放置なんてことは、絶対にダメ。桜は毛虫もつきやすいからちゃんと消毒をしなくちゃいけない。剪定だって、桜はいつの時期でもやっていい植物じゃないの。病気になりにくい時期にしっかり枝を切って、そこを保護して成長を待つ。桜一本育てるというのは、なかなか苦労することなんです」
和人「そっか……相沢、結婚するお姉さんに贈ったら、有難迷惑にもなりかねないぞ」
楽「今聞いてマジそう思うわ……」
香花「確かに桜は女性にとって縁起物です。良い贈り物かもしれませんが……植樹となったらさすがに……」
楽「そっスよね……いいアイデアだと思ったんだけどなぁ……」
和人「相沢、諦めろ。何か他のもの贈ってやれって」
楽「そうするわ。あーあ、仕切り直しかぁー」
和人「そんなことないだろ。式再来月なんだろ?」
楽「そうだけどさー」
香花「うふふ、でもまぁ……仕切り直しじゃなくても、大丈夫ですよ。妥協をすればの話ですが」
楽「えっ」
香花「今の桜の話は、ソメイヨシノという、お二人もよく見る品種のお話です」
和人「ってことは……」
楽「あるんすか!?桜!」
香花「えぇ、ソメイヨシノよりも手入れが楽な桜は、日本では品種改良されて、沢山あります」
楽「マジで!?」
香花「これにすれば、普通見る桜とは少し違うものとなりますが、桜は桜です。それでもいいのでしたら、という……」
楽「いい!全然良い!それで頼んます!!」
香花「かしこまりました。それでは今、資料を持って来ますね」

香花が去る。

楽「ふぅぅ~助かったぁ……」
和人「良かったな」
楽「おう、ホントありがとな!やっぱ持つべきものは友達だな!」
和人「俺はただバイトしてるだけだけどな」
楽「それでいいんだよ~相談しやすいだろ?」
和人「まっ、そうだな。アイス一本奢れよ」
楽「なぜに!?俺これから桜買うんだが!?」
和人「それとこれとは別だろ」
楽「ええええ」

香花が戻って来る。

香花「お待たせしました、ここらへんがいいと思うんですが……」
楽「あっ!はい!見る見る!!見るっス!!!」
和人「あ!……ったく、逃げやがって……」

カランカランと音がする。


香花「いらっしゃいませー!和人くん!」
和人「はい!いらっしゃいませ!どうぞー!」

時間が経って。

香花「それではまた来月お待ちしております」
楽「はい!頼みます!!じゃあな和人」
和人「おーまた学校でな」
楽「おう!」
香花「ありがとうございました」

楽去る。


和人「はぁ、大変だったぁ……」
香花「和人くんは何もしてないじゃない」
和人「してなくても疲れるんです、アイツといると」
香花「確かに、楽しい子だったわ」
和人「名前の通りって言うか、まぁ、悪い奴じゃないんでいいんですけどね。このラッピングしときます?」
香花「うん、お願い。良いお友達じゃない」
和人「はい、良い奴です」

一か月後。
花屋にやって来る楽。

楽「ちわーす!」
和人「おう来たか」
楽「ったりめえだ!なんだ、通さねぇって顔だな」
和人「あぁ、香花さんが許しても、俺は許さん」
楽「なんだ、お前、やるのか?」
和人「あぁ、かかってみやがれ……」

香花「あら、楽くん、いらっしゃ……何してるの、二人とも」

和人「あっ、こ、香花さん……」
楽「あっ!どーもご無沙汰でーす!!!」
香花「お久しぶりです。どうぞ中へ。届いてますよ」
楽「はい!お邪魔します!簡単に入れてしまったなぁ!はっははー!」
和人「うぐぅ……覚えてろよ……」

店内にて。

香花「こちらで待っててくださいね」
楽「うっす!」
和人「……」
楽「なんだよ、お前は他の仕事してろよ」
和人「うるせえ。今客いねぇから大丈夫ですーーー」
楽「あーさぼりださぼり」
和人「うるせー、いっつも代理出席してるやつに言われたかねー」
楽「なにおう?」

香花「和人くーん!手伝ってー!」

和人「あ、はーい!店の花さわんなよ!」
楽「わぁってるよ!!!」

和人が香花の元へ。

和人「香花さん、俺持ちます」
香花「土がこぼれやすいから、気を付けて、枝も折らないようにね」
和人「はい」

戻って来る。

香花「お待たせしました、楽くん。こちらです」
楽「おお……!」
香花「品種が違うと言っても、成長は早い方なので、比較的小さなものにしておきました」
楽「といってもでかい……」
香花「はい、小さすぎると環境の変化を受けてしまいやすいんです。お許しください」
楽「全然構いません!いくらっすか?」
香花「二千円で大丈夫ですよ」
楽「え、そんなんでいいんすか?」
香花「はい。和人くんのお友達ですもの。学生だし、ね?」
楽「ありがとうございます!!」
和人「俺に感謝しろよー」
楽「おう!うまう棒十本な!!」
和人「おい」

会計を済ませる楽。

香花「それではレシートと、これは簡単な育て方の紙です。何か困ったことがあればすぐに電話してください」
楽「うわぁぁ!これで俺の手元に……!」
和人「すぐお姉さんのところに行くけどな」
楽「ありがとうございます!」
香花「しっかり育てて、綺麗な花を咲かせてくださいと、お姉さんにもお伝えください」
楽「はい!」
香花「ふふ、苗はそのまま持って帰ります?和人くんにお願いして、車も出せるけど」
楽「えっ、いいんすか?じゃあお言葉に甘えよっかな」
和人「マジかぁ……」
楽「よろしくな!あっ、そうだてんちょーさん」
香花「はい?」
楽「これ、送るにはどうしたらいい?」
香花「送る?」
楽「うん、梱包とか」
香花「あー……本当はご一緒に持っていくのが良いんですけど、それでしたらお教えしますよ」
楽「あぁぁ、良かったぁ、じゃっお願いします!」
香花「はい、送る場所はどこですか?それによっては、苗を枯らせない工程が増えるので」
楽「あっ、はい、えっと~」
和人「香花さん」
香花「ん?なぁに?」
和人「梱包、こっちでやりません?」
香花「え?」
和人「だって結婚するお姉さんへのプレゼントですよ?もしも枯れたら」
香花「……和人くん」
和人「はい」
香花「それをやってしまったら、花屋は出来ないわ」
和人「え」
香花「確かにその方が綺麗に送ることが出来るかもしれない。でも、彼にとっての花を贈るという行為を汚すことになる」
和人「花を贈る……」
香花「そう。私たち花屋は花を贈るための下準備はするけど、それを終えたら、もうその先はお客様次第。それで0でも100でも変わるの」
和人「……はい、すみません。野暮なこと言って」
香花「いいの。わかってくれたらそれで嬉しいわ」
楽「あった!!住所!」
和人「お、随分探してたな。都道府県ぐらい覚えて置けよ」
香花「ふふ」
楽「いや、都道府県じゃないって」
和人「は?」
香花「え?」
楽「えっと~アメリカの~」
和人「ちょちょちょ!!!?」
楽「ん?何だよ?」
和人「今なんてった?」
楽「え、言ってなかったっけ?オレの姉ちゃん、アメリカで結婚するんだ」
香花「え?」
和人「あめ、りか……?」
楽「おぅ、姉ちゃん、アメリカ人のジョージって言う人と結婚するんだ。ほら」
和人「マジ……」
楽「身長2メートルあるんだぜ?」
和人「えっと」
楽「あ、あと……」
香花「できません」
楽「え?」
香花「できません」
楽「え……まぁ、確かに飛行機で、長旅になるのは分かるけど」
和人「馬鹿楽」
楽「え?」
和人「お前検疫検査って知ってっか?」
楽「検疫検査?」
和人「お前飛行機乗ったことねぇな」
楽「あるわ!!」
和人「だったら」
香花「検疫検査というのは、空港や港で、海外からの国内に病原菌や外来種・虫等を持ち込まないために行う検査のことです。」
楽「それが、なんか関係してんの?」
香花「はい、桜の木は完全アウトです」
楽「嘘っ!?」
香花「先日も行った通り、桜には虫が付きやすい植物です。それでその土地の生命体が脅かされたら、本末転倒です」
楽「そんな、でも、ワシントンに桜あるじゃん!ほら、日本があげたっていう」
和人「お前それで桜を送ろうと思ったのか」
楽「うん」
香花「確かに過去、友好関係を築くという名目で1912年に桜の苗を譲渡したことはあります。ですが」
楽「ですが?」
香花「とっても厳しい審査を受けて渡されたものです。現にその三年前の1909年に桜を二千本余り贈りましたが、害虫被害によって全て焼却されています。」
楽「にせっ……!?」
香花「こういうことが検疫検査というものがしっかり確立するまで、各地で起きたんです。被害が再び大きくならないためにも、最善策を取っているんです」
楽「じゃあ、これは……」
香花「残念ですが、送ることはできません……」
楽「そんな……」

間。

楽「……仕方ないっすね」
和人「相沢……」
楽「俺の調べ不足と伝達不足だし、仕方ねぇよ」
和人「でも」
楽「ここまで来たけど、まっ、まだ時間あるし、なんか違うの探してみるっす!」
和人「俺もなんか手伝うよ」
楽「マジ!?助かるわ~!やっぱ持つべきものは、兄弟友、ライバルってな!」
香花「……!!!」
和人「なんだそれ……」
楽「俺の好きな漫画の台詞~貸そうか?」
和人「どんな話?」
楽「主人公が~」
香花「楽くん!!」
楽「うぉ!?び、びっくりした~……なんすか?てんちょーさん」
香花「もしかしたら……桜、渡せるかもしれないです」
楽「え!?」
和人「でも、送れないじゃないですか、どうやって……」
香花「日本から送れないなら、アメリカから送ればいいんです」
楽「アメリカから?」
香花「はぁ……連絡つくかどうかはわからないけど、一か八か、やってみましょう」

とある場所。
電話が鳴る。

香樹「おーう、久しぶりだなぁ。なんだー?店潰れたかー?……えぇ?桜?……んなめんどくせぇ……なんだよ、俺に出来ないと思ってんのか?……詳細聞かせろ」

花屋にて。

楽「ほっんとーに!お世話になりました!」
香花「お気になさらず。せっかくのお姉さんへのプレゼントなんですから」
楽「香花さん……!!!」
和人「お前いつから香花さん呼びに……」
楽「まっ、ほら、連絡?取り合う仲だしさ?」
和人「てめぇ……」
楽「ははは!」
香花「はい、これ」
楽「えっ」
和人「香花さん!?何を!?」
香花「何って……アメリカで合う人へ渡してほしいものです」
和人「あ、は、はぁ……」
楽「なにぃ、入ってるんすか?」
香花「今回の件での取引内容が入ってるでも言えばいいですかね」
楽「そんなやばい奴に連絡とったんすか……」
香花「まぁ、少し?
楽「え」
和人「くっ……ふふ……」
楽「おい!」
香花「大丈夫ですよ。その人も方向は違えど、お花屋さんですから」
楽「は、はぁ……」

楽が店を出る。

楽「それじゃあ!また、帰ってきたら報告しにきまーす!」

香花「はぁい!待ってますー!」
和人「気を付けろよー!」

楽去る。

香花「ふぅ……何とか一段落」
和人「結構大変だったんですね」
香花「注文すること自体は簡単だったんだけど。連絡するまでが大変だった」
和人「そんなに……お兄さんでしたっけ?なんでアメリカに?」
香花「さぁ、何かひらめいたんじゃない?」
和人「ひらめいた?」
香花「そう、変な人なの。昔っから。ふらふらして、でもどこかしっかりしてて。ほーんとやんなっちゃう」
和人「大変なんですね」
香花「まぁ、忘れてたらそんなことないから。さっ、私たちは私たちの仕事をしちゃいましょう」
和人「はぁい」

アメリカ某所。

楽「えっと、ここ?」
香樹「Hey,you」
楽「ひっ、そーりー!そーりー!」
香樹「くく……はっはっは!!」
楽「……え?」
香樹「随分チャラいなぁお前、これがあいつの言った姉想いの弟か」
楽「え……もしかして、あなたが」
香樹「ついてこい」
楽「あっ」
香樹「ここにいたらスリあうぞ~」
楽「あっ!俺の財布!」
香樹「いくぞ~」
楽「待ってください!!」

深夜・花屋二階。

香花「そろそろ渡した頃かしら」

するとメールが届く。

香花「あっ……」

楽「香花さーん!お目当ての人と無事会って、苗もらえましたー!これで無事いけます!マジ感謝っす!!!」

香花「ふぅ……良かった……」

すると電話がかかって来る。

香花「……っ!もしもし?兄さん?ちゃんと渡した?」

香樹「あぁ、契約成立だ。無事俺が欲しいものももらった」

香花「何契約って……変なことしてないでしょうね?」

香樹「してねぇよ」

香花「ならいいけど……で、なんで連絡してきたの?受け取った連絡なら今来たけど。珍しい」

香樹「なんでわかった」

香花「え?」

香樹「俺の居場所、なんでわかった?」

香花「最後に働いてたところから、伝って。相当動いたね」

香樹「アメリカにいるとは限らないだろ」

香花「これだけは運。アメリカ広いし、まだいるかなぁと思って。まだいるの?」

香樹「いーや、もう出るさ。これも手に入ったことだしな」

香花「そんなの何に使うの?」

香樹「内緒」

香花「はいはい。じゃ、良い旅を」

香樹「なんだよ、せっかくかけたってのに。可愛くねぇな」

香花「なんで兄さんに媚び売らなきゃいけないのよ」

香樹「そーですね、それじゃ。良い花売れよ」

香花「そっちこそ」

電話を切る。

香花「全く、馬鹿兄貴」

後日。
花屋に来た楽が、姉の結婚式の写真を香花と和人に見せている。

楽「これがチャペルで~」
和人「おぉ~」
楽「これがパーティーの時の!」
香花「本当にあっちは豪華ねぇ」
楽「そっすよね~」
和人「あっ、木!」
楽「そうっす!結婚式の次の日にすぐ植えてくれました!」
香花「そう、良かったわね」
和人「そういや、こっちで買った桜の苗は?買い取るって言ってどうしたんだよ」
楽「あーそれはな、ばあちゃんに事情を話したら、孫と一緒に桜を育てて、オンラインで成長状況伝え合ったり、春は一緒に花見できるって、ばあちゃんが庭に植えてくれました!」
香花「まぁ、とっても素敵ですね」
和人「両方、上手く育つといいな」
楽「大丈夫!ばあちゃん家のは、香花さんの紙貰ってるし、あっちのは香花さんの兄ちゃんからもらった紙使ってるんで!」
香花「え、紙くれたの?」
楽「はい!土地の気候に合わせた育て方でめっちゃわかりやすいって、姉ちゃん言ってたっす!」
和人「すげぇ、お兄さんもそういうこと出来る人なんですね」
香花「そ、そうだけど……」
楽「もしかしてそういうの、渡さない系っすか?」
香花「ま、まぁ、そこまで気の回る人って感じではないから。ちょっと珍しいと思っただけ」
和人「きっと一生に一度のプレゼントだから、書いてくれたんじゃないですか?」
楽「だとしたらめっちゃ優しい兄ちゃんっすね!あんな最初怖かったけど!」
香花「え、なんかされた?もしかして……」
楽「あーいや、初対面の時に後ろからひっくい声で声かけられたんすよ!しかも英語!俺、めっちゃいかつい外国人来たかと思ったら、日本人でビビった(笑)」
和人「へぇ……って香花さん!?」
香花「アイツ……変なことしてたじゃない……!ごめんなさいね、兄が」
楽「ぜーんぜん!話したらめっちゃ良い人でした!」
和人「あはは……」
香花「ふぅ……ともあれ、ちゃんと渡せたようでよかったわ」
楽「はい!本当に、本当に、ありがとうございました!!!」
香花「いえ、それは楽さんあなたが頑張ったおかげです。私は手伝っただけですから」
楽「そんな!俺、また来ます!次は花束買いに!」
香花「あら、お相手がいるのかしら?」
楽「ふふーん、まっ、木嶋とは違ってな!」
和人「おい」
楽「へへ、んじゃ!また!」
和人「待て!相沢!」

楽「俺の友達にも、ここよかったって紹介しておきますー!」

香花「ありがとうー!気を付けてねー!」

楽「はーい!」

楽去る。

和人「あいつ……」
香花「ふふ、いいお客さんができたわね」
和人「香花さんまで……」
香花「いいじゃない。一件落着して、しかもお客が増えるなんて、こんなに喜ばしいことはないわ?」
和人「まぁそうですけど……っというか……」
香花「ん?」
和人「なんであの時、思い出したんですか?」
香花「え?」
和人「ほら、アイツ、相沢が漫画の台詞言った時、えっと~」
香花「持つべきものは兄弟、友、ライバル?」
和人「そう!それ!ってそっか、兄弟があったか……なんでもないっす。仕事戻りますね」

和人、仕事へ戻る。

香花「(呟くように)……そうねぇ、思い出したのは。兄さんが、兄弟で、友で、ライバルだからかな」

完。

(文字数 8,559字)

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