見出し画像

Sansan Data HubとSalesforce/Pardotを連携する

⭐️旧連携から新連携への道のり

弊社では、SansanからSalesforceへの名刺取り込みに、Sansanの旧Salesforce自動連携を使っていました。名刺を読み込めばSalesforceに自動で取り込まれますので、人が都度書き込むより遥かに楽です。入力間違いもないですし、重複も基本は起こりません。

旧連携では、名刺がSansanでデータ化されると、そのままリードか取引先責任者のどちらか一方に取り込まれる仕様でした。その仕様に合わせ、「名刺をもらうということはほぼ案件開始と見なして良いよね」と腹を決め、名刺は全て取引先責任者に同期することにしました。(展示会等で頂戴した名刺の扱いは微妙なところでしたが、ここは思い切りなのです。)
従って、SalesforceリードはWeb流入以外にはほぼ使用していませんが、弊社はまだ組織も小さいため、これはこれで割り切ってしまえば、ABM的活動には非常に便利です。

名刺タグからのPardotオートメーションは便利❗️

もう一つ便利な機能がありまして、Sansanの名刺タグを使ってPardotのオートメーションを組むと、あら不思議、セグメンテーションリスト🗂が自動でできちゃいます。「お客さん」とか「パートナー」の分類は、名刺タグさえ正しく振れば、リストまで全自動で振り分けてくれます。
さらに、イベントでもらった名刺へ御礼メール📮を送りたい人だけ別なタグを付けるようにしておけば、名刺取り込み後はPardotのEngagement Studioが発動し、御礼メール📮も自動で発信してくれます。まさにピタゴラスイッチ状態。

さて、話をSansanに戻しまして、2019年にSansanの担当の方から旧連携が終わるというお話をいただきまして、事前に根掘り葉掘り聞き取り調査をし、諸々の条件が整ったため新連携に切り替えることになりました。

⭐️新連携Sansan Data Hub へ移行するメリット

前述の「名刺タグからのPardotオートメーション」は弊社にとって必須です。7月に名刺タグ取り込みも無事新連携に搭載されました。旧連携では名刺タグは初回のみSalesforceに取り込まれ、後から付与した名刺タグがアップデートされない問題があったのですが、新連携ではちゃんと後から追加・変更した名刺タグが反映されます。

さらに、鳴り物入りの機能として「Sansan Data Hub(旧称:顧客データHub)」があります。
表記揺れした入力があっても名寄せしてくれたり、帝國データバンクさんのデータもSalesforce上に取り込めるということで、これはこれで使い道の多そうな機能です。
もともと旧連携を使っていたので、そこまで名寄せに興味はなかったのですが、業種、売上規模、決算月など、手で入力したら更新だけでもえらい手間になってしまいそうなデータを自動で取り込み、アップデートしてくれるのはありがたいです。Salesforce上でレポートやリストを作る際にも使えますし、Pardotでグレードを決定する際にも便利です。

他にも新連携では、名刺が取り込まれる際に、該当の企業が取引先に存在しない場合だけリードに取り込むような機能もあり、新規で設計する会社にとっては便利だと思います。(我々は既に名刺は全て取引先責任者に入れると決めてしまったので使いませんでしたが…)

⭐️移行作業といくつかの壁

移行作業自体は、Sansanさんが作ってくれた手順書とガイドに沿って進めます。
そこそこ手順が多く、自分たちの環境に合わせてアレンジすることもいくつかあるので、それなりに時間がかかります。弊社では結局着手から完了まで全体で3ヶ月ぐらいかかりました。作業時間自体は全然それより少ないのですが、連携の作業待ちがあったり、Sandboxで試行してデータへの影響をチェックしてルールを変えたり、という時間をあらかじめ見込んでおく必要があります。

以下に、いくつか弊社が乗り越えた壁について共有しておきます。

💁‍♂️…っとその前に、以下の説明では「関連付け」という聞き慣れない言葉が出てきます。こちらは一度SansanからSalesforce上の名刺オブジェクトに取り込まれた後、名刺オブジェクトからリードや取引先責任者へ「関連付け(新規に取り込まれたり既存レコードに紐づいたり)」が起きる、という意味合いのようです。

壁❶|重複ルールの見直し

Sansanの手順2では、従来の重複ルールを無効化し、Sansanの重複ルールに置き換えることを推奨されます。Sansanの重複ルールは、Sansan独自の企業コード(以下、企業コード)と、人のユニークコードである"CI人物ID"の一致条件だけを見ています。
この方式の場合、2点ほど困ったことがあって、ひとつは手で入力することがある場合に、入力者が事前の検索チェックを怠ると、入力中に重複アラートが出なくなってしまう点。もうひとつは、Sansanのデータ関連付けが実行されるまで重複と見なされないため、Salesforceの標準機能で手作業の名寄せを行う際に面倒である点です。
この2つの問題を解決するために、弊社では独自の重複ルールを追加しました。例えば、取引先であれば{姓の完全一致&名の完全一致&Emailの完全一致}のような設定です。曖昧な一致条件はSansanに任せてしまい、「流石にこれは」と思われる重複についてはその場で弾けるようにしました。

参考までに、弊社で新しく設定した重複ルールを共有しておきます。

【取引先|重複ルール】
((取引先: Name完全MatchBlank = FALSE) ~ (取引先: BillingStreetあいまい: 町名・番地MatchBlank = FALSE)) 
または ((取引先: Name完全MatchBlank = FALSE) ~ (取引先: BillingCityあいまい: 市区郡MatchBlank = FALSE) ~ (取引先: BillingState完全MatchBlank = FALSE)) 
または ((取引先: Name完全MatchBlank = FALSE) ~ (取引先: BillingPostalCodeあいまい: 郵便番号MatchBlank = FALSE)) 
または ((取引先: Name完全MatchBlank = FALSE) ~ (取引先: Phoneあいまい: 電話MatchBlank = FALSE) )【
【取引先責任者|重複ルール】
(取引先責任者: LastName完全MatchBlank = FALSE) ~ (取引先責任者: FirstName完全MatchBlank = FALSE) ~ (取引先責任者: Email完全MatchBlank = FALSE)
【リード|重複ルール】
※リードへの連携は使用していないので今までの設定を残しています

⚠️ちなみにここで少し注意ですが、最初「従来Salesforceで設定されている重複ルールも残していいよね」と思い、Sandboxでそのままで設定を進めたところ、Sansanから取り込まれた名刺情報が、従来の重複ルールに引っかかってしまうと、エラーで名刺の自動関連付けがキャンセルされてしまうので、Sansan Data Hub上では他人と認識できていてもずっと名刺が取り込まれない、という問題が発生してしまいました。なので、一度重複ルールを見直すことをお勧めします。

壁❷|自動関連付けされないケースへの対処

データが一通り取り込まれた後、かなりのデータの自動関連付けが重複エラーで実行されませんでした。(実際には、リトライが起こっているのですが、毎回重複エラーが出て関連付けされない状態)
名刺オブジェクト側にちゃんとエラーメッセージが転記されるので、そのエラー項目で分類してみたところ、概ね次のようなパターンが存在しました。

ケース①:企業コード重複(吸収合併企業)

取引先のデータが一部古かったようで、大量の企業コード重複が起こりました。
企業の統合、吸収、合併、名称変更です。Sansan Data Hub上では、新旧の企業は全て同一の企業コードで管理されています。このため、自動関連付けを行う際、どちらの企業に関連づけて良いのかわからず、エラーになってしまうのです。
当然ながら、このデータは最新の情報を参照しながらマージしたり変更したり、といった地道な作業を行うまで、名刺オブジェクトの関連付けはお預けです。

ケース②:企業コード重複(会社名と屋号の揺れ)

弊社の場合、リテール系のお客様が多いため、同じ会社でも「会社名」の名刺の方と「屋号のみ」の名刺の方、双方が存在します。従来、これもブランディングかな、と思って両方を取引先として受容してきたのですが、これもSansan Data Hubでは同じ会社と見なすため企業コード重複が起こります。
とはいえ、いきなりどちらかに名寄せしてしまうと次のメルマガからいきなり会社名表記がガラッと変わります。営業さんも取引先責任者を探せなくなる可能性もあります。ここは担当の営業さんと相談して慎重に変えましょう。自動関連付けを諦め、変えないのも選択肢の一つです。

ケース③:企業コード重複(実在する会社同士が重複)

このケースは若干厄介です。ホールディングス会社とその子会社の企業コードが一致してしまうケースです。企業がホールディングス制に移行する際、多くは複雑な変更を行います。現在では別会社ですが、その過程で一度は同一の会社が分裂したり名称変更したりして、Sansan Data Hub内部で同一の企業コードを持ってしまうケースが多々あるようです。
このケースでは、Sansanさんに相談が必要です。実際、確実に現在は企業コードが違う状態が望ましいと思われる場合はデータの修正を行うようですが、まだ精査をスピーディに行う仕組みがないようで、まずは情報を提供することが必要です。

ケース④:企業コードがない

企業コードが割り当たらないケースです。個人事業主や法人でないケースなど、Sansan Data Hub上に存在しない屋号の場合は、企業コードがなく自動関連付けは起こらないため、手動で関連付けするか、関連付け自体を行わないように指定する必要があります。

壁❷ケース①~③の補足

ただし、①~③のケースは移行時だけで見れば大きな問題ではないです。というのも、名刺関連付けが起こらないだけで、データそのものは既にSalesforce上に存在するので即座に問題にはなりません。
ただ、この問題を放置すると追加で入ってくる名刺がリード/取引先に取り込まれないケースが多く発生します。いずれにしても、今後もエラーによる関連付けの停止は発生する可能性はあるため、その場合の回避策(手動関連付けや取引先の更新、名寄せの方法)は営業さんなど名刺を取り込んで実運用を行う人たちに知らせておくと良いでしょう。

壁❸|取り込み時間(リードタイム)

Sansanへの名刺取り込みから、Salesforce上のリードや取引先責任者にデータが全て揃うためには、リードタイムが発生します。
旧連携では割とシンプルでしたが、新連携ではそれが多段で発生するので注意が必要です。
実際に、名刺を取り込んでから、名刺タグを使ってPardotのEngagementStudioが発動するまでに、次のようなリードタイムが発生します。

1. 名刺をSansanに取り込む
2. Sansanがデータ化して確定状態になる|数分〜翌営業日(枚数制限等あり)
3. Sansan Data Hubへ取り込まれる|1時間に1回
4. 名刺データがSalesforceの名刺オブジェクトに取り込まれる|10分に1回
5. 名刺オブジェクトからSansan Appの自動関連付けが走り取引先責任者に取り込まれる|1時間に1回
6. 取引先責任者オブジェクトにSansanデータHub情報の名刺タグ情報が付与される
7. 名刺タグ情報を見てPardotがセグメントリストに入れる
8. リストに入るとEngagementStudioが発動

たまたま全てのタイミングがよければ1〜2時間で発動しますが、諸々引っかかってしまったり、自動関連付け自体がエラーになってしまうと、かなりの時間を要してしまいます。

⚠️さらに、少し注意しておきたいのが、自動関連付けの再実行時間です。
一度、重複エラー等で自動関連付けに失敗してしまうとその原因を取り除いても、次回実行されるまでにタイムラグが発生します。このラグは放置時間が長くなると徐々に増えていく仕様です。ただ、次回の実行時間は名刺オブジェクトに項目があり、変更も可能なので対処は可能なのですが、このことについて理解しておかないと、いつまで経っても名刺データが取り込まれない、ということになってしまいます。

⭐️移行を終えて改めてよかったこと

データのクリーニングがやりやすくなった

DMなどを発送する際のデータチェックが簡単になりました。
たまにご心配されている方がいるのですが、Sansanの連携を行っても住所などの顧客情報が全て上書きされるわけではありません。上書きする設定もできますが、前述のように何かしらの問題で別な会社で情報が上書きされても困りますので、基本はお勧め設定通りの場合、帝國データバンク(TDB)の情報1などは別項目に入ります。
この項目と、従来の項目を比較するようにすれば、住所移転や会社名の変更に気がつくことができます。

リストやセグメントがやりやすくなった

業種やその会社のキーワード(ブランド名や業界キーワード)が取れるので、ざっくりしたセグメントを作っておいて、その後、手動で選別してターゲットリストを作成する作業がやりやすくなりました。

Pardotグレード付けも正確に

まだちゃんとやってないのですが、Pardotのグレード設定も精度が上がりそうです。
従来名刺に頼っていたデータ以外に、リッチ情報として売上規模や業種、役職の数値による順列表示など、TDBのデータ1や付加データが得られますので、これをPardotのオートメーションルールを使って自動的にグレードの各パラメータに振り分ければ、フルオートでグレード設定ができます。
このグレードとアクティビティスコアを使えば、インサイドセールスのターゲットリストなどを作ることも容易です。
(もちろん、Einstein Scoreが使えればそれに越したことはないですが。)

(おまけ)Padrotで自動グレード付け


オートメーションルールで、

ルール:プロスペクトのデフォルト項目: 'Department' 次の値を含む '経営'
ルール:プロスペクトのデフォルト項目: 'Department' 次の値を含む '情報'
アクション:プロファイル基準を変更 プロファイル: 「Default」の条件: 「Department」が「一致」に設定されている

のような設定をしておくと、「経営なにがし」「情報なにがし」という部署の方はグレード値が一つ上がります。

これを「住所」に対して営業が廻りやすい都道府県だけ上げておくとか、今回の連携で得られる「(Sansan人物)役職ランク1」に対して行っておくと、全自動でグレードがついてくれて便利ですよー。

(これ、みなさん普通にやってるのかなぁ?当たり前すぎてどこにも書いてないのかな?)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?