「空の青さ」について

色々煮詰まっている世界観の場合には、どうにも説明を始めるのが難しい。なぜならその世界観の説明するところが広く、また世界観における要素同士が複雑に助け合っているために、どれか一つを取り出して「これが出発点だ」と宣言することが難しいからである。それは蜘蛛の糸の網を持ってきて「どれが最も重要な糸か」と問うようなものである。この難題に対して私はあえて糸の話から始めることを諦めようと思う。ここではまず、私が世界観を構築するにあたっての切っ掛けとなった問題という虫眼鏡を扱うことで、蜘蛛の糸を観察しようという次第である。

さて早速その問題について触れていこう。
まず切っ掛けの切っ掛けとして「空は何色であるか」という単純な疑問文を与える。
これに「青色だ」というように返答しよう。実際私はふと浮かんだこの疑問にこう答えた。
しかしこれは正確には誤謬であることが明白だろう。
それは、空の色は青に定まったものでないからである。夕焼けには美しい橙色をするだろうし、あるいは夜の闇には藍めいた黒色をしているだろう。
日常言語の段階では「青色だ」で十分であるが、真理としては不十分な物言いである。なぜなら問いにおいて時間や位置の指定がなされていないからである。
それゆえにまず、「空が青色だ」という言表は一意に真であるとは言い難いように思われた。
この解決は単純であり、「空は時間によって複数の色を示す。例えば青色、例えば橙色、云々」とすれば十分だろう。あるいは、こうした列挙ではなく、何か条件を付加したり内包的定義を行ったりすることで示すことも可能であるように思われる。
さて、ここで私が至った問題こそ私の世界観構築の切っ掛けとなった問題である。
つまり「空に青色は内在するか」という問いである。
結論から言えば、私はこれに対して否定を行う。つまり、空自体に何か「青さ」というような形相が内在しているのではないと主張する。
それは「実体である情報においての色彩という情報質について、それは青色という情報を持たず、単に知覚段階で精神領域に結合するような『像』としての情報質であるから」という理由付けで解決できよう。
恐らく何を言っているのか分からないと思う。それは実体、情報質、知覚段階、結合、像、といった語が何を表示・名指しするのかが不明であるからであろう。これらは私の世界観における謂わば「わたしのことば」であり、世界観を立脚する上で重要な要素たちである。ここであえてこうした言葉遣いをしたのは、これからの断片でこれらを説明していく、という前借のようなものである。いつか断片が十分に集まったとき、ここに立ち返れば上記の言表が十分に理解できるだろう。
さて、先ほどの理由付けは何を言っているのか分からないという話であった。詳細は次に書く記事に任せるとして、ここでは簡単な解決をしておく。
まず、空に青色は内在しない。ではどこに内在するのかと言えば、我々の精神、心と呼ばれる領域である。我々は対象について知覚したとき、それは見たままの単なる像しか認識していない。その後で、その像に「青い」とか「きれいだ」といった情報を結び付けていく。ここでは、青色という普遍は対象となる像には無く、むしろ心の中にあるように思われる。我々の心の中にある「青色」といった性質を、知覚した対象へ結び付けることで、対象が青色である、と言うのである。厳密に言うと、ここでは対象が「青色」を持つことを否定するわけではない。対象が「青色」を含んでいて、しかも我々の観念において対象を青く認識するのだ、という主張は可能である。この主張は後に説明する公理などによって排除するが、とりあえずの私からの反論は、例え対象が「青さ」を持っていても、我々の知覚は物自体に及ばず観念(表象と言ってもいい)を認識するのであって、その内在を明白に主張するにはそうした公理を持ってきて措定しない限り宣言できない、ということである。そして、その公理は私の世界観においてはありえないということである。これを承知しておいてほしい。つまり、この「空に青さは内在しない」といった類の「対象に性質は内在しない」という言表は、ある種の第一原理として捉えていてほしい。厳密にはこれが第一原理という訳ではなく、これの前提となる公理は存在することは断っておく。
上記の説明を言えば、その上の情報質云々と言っていた説明に対する解像度も上がったかもしれない。もちろん、判然としないことは承知している。
とりあえずのところ、以上のようなことで空に青さが内在しないことを説明した。もちろん、納得をする必要はない。また、理解を十分にする必要もない。ただし納得を強いることは無いが、理解についてはこれからの記事で十分なものを与えたいと思う。

以上が導入とも言うべき断片だ。
次回の記事では私の認識についての思想の概観を与えたい。これが今回の問題に対するより詳しい説明となるだろう。


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