十のことを知らずに、一を省くこと勿れ
要領が悪いこと、無駄なこと、遠回りなことがキライなタイプなので、これまでの会社生活でショートカットをよく行った。
もちろん、ただ安易にやみくもに行ったわけではなく、自分なりに周りを観察し、時に先輩に相談したりしてだ。
例えば、費用対効果で不必要と思われる作業を減らしたり、違う部署への作業依頼でそこの面倒くさい(又は連絡が殆ど繋がらない)リーダーを介さずに直接 担当に依頼したり、部下や関連会社社員が帰るまでの付き合い残業をしなくしたり、等々。
それをすることで、上手くいったこと、逆にいかなくて怒られたこと、失敗したこと、色々と経験してきた。
そうやって経験していく中で、視野が広がっていき、これをしなくなる(又は怠る)ことでどこに影響が出るか、これをすることでどこの部分がスムーズに物事が運ぶのか、一から十のことまでが段々と把握できるようになった。
もちろん、その長い会社生活の中で経験してきた知恵や失敗の防止策は、後進に教えたり、組織の規則やルールに適宜反映されてきている。
けれども、組織改編で生え抜きの社員が少なくなったところ、畑違いの部署から来た社員が管理者になったところでは、過去の経緯を知らない人が安易に組織の規則やルールを変えてしまって問題が起こるというケースが多々ある。
また、若手などでは自己判断で作業を怠って、問題を膨らませるというケースも多い。
「何をしてるんだか」、そう思いながらカバー(尻拭い)をしないといけないことがマネージャーという立場上 わりとある。
一から十のことまでを知らないのに、一のことを省こうとするからそうなるのだ。
自分の部下がそういうことをした時には、なぜそれがマズかったのかを教え注意・指導をする。上司がそういうことをしようとした時には、一応これまでの経緯となぜそうしているのか話をする。
なぜそうするかというと、無駄がキライだからだ。
何かを変えよう、改善しようとすることは大事なことだと思う。
それで効率化できたり、無駄が省けるならウェルカムだ。
しかしながら、変える前になぜ今までそうなっていたのかを把握せず(確認せず)に変えようとするから問題が起こる。
把握することが手間かもしれないけれど、それをしないことで後々起こる手間を考えると、手間を惜しまない方がいい。
規則やルール、作業要領、慣習などは、色んな知恵や失敗事例を防ぐための施策が詰まっている。
そういう認識を持った上で、より良くしていくことが大事だ。
物事は色々と点と点で繋がっている。
その点と点の全体像を俯瞰して、把握することで、何を変えるべきか、何を変えてはいけないか、見えてくるはずだ。
料理人の世界でも同じではないだろうか。
「一から十まで素材を追求して足し加える、足し算の味(美味さ)を極めることで、そこから引き算の味を見出すことができる」ような。
言いたいことは、
十のことを知らずに、一を省くこと勿れ。
一通りの基本作業をできるようになってから、変革を試みること。
せっかく先輩方の知恵を織り込んだ、規則やルール、作業要領があるんだからそれをまずは忠実に実践してみればいい。
それをしてみて、見えてくる点と点を俯瞰して、変えた方がより良くなると思えるところが出てきたら思い切って変えること。
それが要領のいいやり方だと思うけどね。
遠回りして気付いた先輩からの後進へのメッセージ。
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