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だから私は声と滑舌の講師をしている

ある日の夜。

家ではどうしてもはかどらないため外に繰り出し、お店で頭を抱えながらパソコンと向き合い苦手な書類づくり。
食べ放題のソフトクリームの甘さに助けられながら、苦手作業にも
なんとか私の脳はキリキリギュルギュルがんばっていた。

そこに年配の女性の店員さんが
「ソフトクリームの機械メンテナンスに入るので、その前にいかがですか?」
と声をかけてくださった。
ちょっと低めで太さのある声だけど明るさとまるみがあって温かく感じる声。そして滑舌のやわらかさと発音のお上品さと口調の穏やかさ。もちろんにっこり笑顔。
冷房の効いた店内でソフトクリームで冷えかけた身体にふわっとカーディガンでも羽織ったような温かい空気感。なんとも心地よかった。

つられて私も笑顔になったことでなんとなく我に返った気がした。
あ、私笑った、と妙に自覚したくらいだったから
おそらくそうとう顔をしかめながらキーボードをたたいていたのだと思った。

「ありがとうございます、では。」と2周くるくると器に盛った食べ収めのソフトクリームをほおばりながら再びパソコンに向かっている私。
さっきまでとは違って表情がやわらかいことが自分でもわかる。

すてきな声(話し方)だった。

こういうことなのだ。
こういう人を私は増やしたいのだ。
だから今の仕事はやめられない。

話すことで、聞く人をこんなふうに、あたたかかったり嬉しかったり優しい気持ちにできる人を増やしたくて、声の出し方や滑舌のトレーニング講師をしている。言葉遣いも大事だけどそれよりもたぶんもっとこっちの方が大事。

売上を上げるため。とか、ファンを増やすため。とか言っているけど、
この仕事を始めた根本的な思いはこういうこと。それは今も変わっていない。
私が今の仕事をするにあたり、最も、最も願うことだ。

やっぱり私は自分のこの仕事が好きだ。

そう、思わせてくれた店員さんだった。

そしてきっと私は他の店に浮気することなく
またその店員さんがいるこのお店に来る。