ポケカがデュエマ化する時~サイドを取ることは不公平なのか~

はじめに

皆さんはポケカを遊んでいて『ポケモンを気絶させたとき自分のサイドを取る』という行為に疑問を感じたことはありますでしょうか。

勝っている側がアドバンテージを得られる設計になっているのはおかしくないか、デュエルマスターズだと相手に攻撃されるとシールドと呼ばれるサイドのようなものを自分の手札に加えられるのに、と感じたことはないでしょうか。

この記事はこのサイドを勝っている側が取るという行為について考えてみたいと思います。

公式の見解

――ポケモンカードでは、相手のポケモンをきぜつさせた側がサイドカードを取れます。有利な側がさらに有利になるルールですが、これにはどのような意図があるのでしょうか?

長島 相手のポケモンを倒してカードがもらえたら、うれしくないですか(笑)? 逆に言うと、やられたときにサイドカードを取るルールだと、“サイドカード=取りたくないもの”と認識してしまいますよね。すべてのプレイをポジティブにとらえてほしいので、相手のポケモンを倒したときにサイドカードを取れるようにしています。

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https://www.famitsu.com/news/201903/14173198.html?page=2

こちらは今から約3年半ほど前の記事でポケモンカードの開発担当者の方がファミ通のインタビューで答えられていた内容です。この引用に書かれているようにサイドをプラスのもの、いわゆる報酬としてとらえているようです。その証拠に海外ではサイドのことをプライズカード(報酬のカード)と呼ぶようです。

とはいえこの説明だけでは勝っている側がさらに有利になるシステムなのは変わらないじゃないかと思われるでしょう。

サイドを取るという行為に対するリスク

先ほどサイドは報酬だと書いたところですが、この報酬は無条件に得られるものでしょうか?答えは当然否です。

ポケモンを出し、ターン中に1回しかつけられないエネルギーをつけて、バトル場に出し相手のポケモンを攻撃して、気絶させて初めてサイドが取れます。もちろん、それまでにそのポケモンが倒されてしまったらまた1から育てなおさなければいけませんし、攻撃した後は相手のポケモンから攻撃されるリスクを伴います。

対戦の環境で使用されるデッキの大半は何らかの方法でエネルギーを複数つけるか、少ないエネルギーで戦えるデッキです。
これはこのサイドを取る行為に対してのリスクを減らすための自然な結論といえるでしょう。

閑話休題、サイドを取るという行為の裏でポケモンを育てる準備が必要であり、サイドを取るという行為はこのポケモンが倒される=ボードアドバンテージを失うというリスクを伴う行為であると考えられます。

更にここでサイドを取れなければ、ただ相手にサイド分のアドバンテージを与えるだけにとどまらず自身のアドバンテージを失うことになるのです。
しかし、逆に言えば自分のボードアドバンテージを失わずにサイドを取ることができれば有利に進みます。これがサイドを取った側が有利になるといわれる原因でもありますね。

ただこれは言い換えると積極的にポケモンで攻撃して報酬を得る、というゲームにのっとったものではないかと私は考えています。

ポケカのサイドがシールドになったら

ここまでつらつらと書いてきましたが実際にポケモンを気絶させたら相手がサイドを取るというルールになった時、どのようになるのか少し考えてみましょう。

まず前提条件として


テキストに書かれている自分のサイドと相手のサイドはそれぞれ入れ替えて読みます。例えばサポート『ツツジ』であれば次のように読み替えます。

このカードは、相手のサイドの残り枚数が3枚以下のときにしか使えない。
おたがいのプレイヤーは、それぞれ手札をすべて山札にもどして切る。その後、自分は6枚、相手は2枚、山札を引く。

このカードは、自分のサイドの残り枚数が3枚以下のときにしか使えない。
おたがいのプレイヤーは、それぞれ手札をすべて山札にもどして切る。その後、自分は6枚、相手は2枚、山札を引く。

また、かつて猛威を振るったグッズ『リセットスタンプ』についても同様に次のように読み替えます。

相手は相手自身の手札をすべて山札にもどして切る。その後、相手は相手自身のサイドの残り枚数ぶん、山札を引く。

相手は相手自身の手札をすべて山札にもどして切る。その後、相手は自分のサイドの残り枚数ぶん、山札を引く。

こうすることでよく言われるツツジやリセットスタンプなどのカードが最強になるということを防ぎます。
…まだおかしな挙動をするカードがある?それはご自身でこのルールで大会を開くときに別途検討してください。

このルールにおけるポケモン対戦の異質さ

このルールにおいてプレイヤーはポケモンたちを積極的に気絶させたがります。なぜなら気絶した時自分の手札が増えるから。その顕著な例としてクロバットVを挙げましょう。

クロバットVは皆さんご存じのように手札から場に出して使える特性『ナイトアセット』で手札を6枚になるように山札から引くことができます。通常、特性を使った後のクロバットVはただベンチを温めるポケモンになりますが、このルールでは違います。なぜならバトル場に出て気絶させられてサイドから2枚追加で引くという仕事が残っているから。

このようにポケモンが気絶することが自分にとってメリットになるのです。

環境はどうなるのか

先ほどのようにポケモンが積極的に気絶されたがるドМなポケモンばかりなこのルールにおいての対戦環境はどうなるのでしょうか。

真っ先に浮かぶのはコントロールデッキの台頭でしょう。LOデッキのようなサイドを取らないデッキはこのルールにおいて相手のアドバンテージを増やさないというだけで大きなメリットです。

またワンショットキル系等のデッキも増えそうですね。事前にダメカンをばらまいて一気にサイドを取るタイプのデッキも相手のアドバンテージを増やさずに勝つことができます。

あるいはひたすら耐久するタイプのデッキもいいかもしれません。サイド5枚分ポケモンが気絶するまでじっくり準備して最後の1枚を絶対に取らせないように立ち回ればいいのです。

これらのデッキに共通することとして、普通に攻撃してくるデッキに対して相手のアドバンテージが増えず自分は増え続けるということが起こります。

その結果行きつく先はお互いにポケモンが攻撃せずにバトル場で棒立ちするおかしな光景が各所で見られるでしょう。

結局このルールはどうなの?

このルールについて私の考えを簡単に述べましたが一概にこのルールが悪いとは思いません。とはいえポケモンというコンテンツをもとにして作られたポケモンバトルを再現するためのカードゲームが、ポケモン同士がワザを使って戦わないのは本末転倒であるように感じます。

結論

ここまでポケモンカードのサイドを取るという行為を正当化するための内容をいろいろと述べてきたわけですが、私の結論としてはサイドを勝っている側が取るというのは、ポケモンが戦うという行為を行わせるために必要なルールであると考えています。



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