元カノの教育
「女の子の日に、それを理由にする女が嫌いだ。」
これはあまり大声では言っちゃいけないので、文字にするだけに留めておく。続けて、
「まあ、辛さの程度は人によるから一概には言えないけど」と添えて、自分の好感度を守ってみたりする。
最近良い感じだった(と私が勘違いしていた)人に、アプリで彼女が出来たと聞いて、やけくそに私もアプリを始めた。人生初。学生時代からアプリを使いこなす女友達は、取るに足らないチャットを複数人と同時並行し、その中で気の合う人と食事に行く、トーナメント方式で彼氏選抜に勤しんでいる。1人合わなければまた1人、と1on1スタイルな私に、「そんなん効率悪いよ」と彼女は呆れていた。
「週末はアプリの人とご飯なんだ」
「聞いてよ、こないだ飲みに行ったんだけどさあ」
選抜の進捗を、彼女は逐一報告してくれる。
「久々に誠実な人引いたかなと思って、家呼んだら手出されたから、断って寝た」
聞くと、選抜チェックリストには
☑︎家に呼び、多少距離を詰めても一線は超えない
という項目があるという。ここで大半が落選していくし、その結果に彼女も不服そうである。
ここで選抜落ちした彼らに、私は同情する。正直彼女はスタイルがいいし、それを自覚していることがボディラインのビタビタさに出ている。それに、なんてったってチューはさせてくれるってんだから。こんなvs理性の状況で勝てるような男性は、既に誰かのものなのではないだろうか。
「それはあんたが悪いわ」
私はそんな彼女に友達として忠告する。
「でもお家デートしたいんだもん。けどやりたくはないの。でもみんなそうなの、なんでそういう男ばっか引いちゃうんだろ」
彼女も彼女で、被害者みたいだ。
戦闘態勢の男を放置するなら、女の子の日にお腹が痛いとか言わないでほしい。数回会っただけで、手を出してくることは容認できないが、家に呼ばれてこれではさすがに不憫だ。男友達がそんな仕打ちで帰ってきたら、「私だったらしないのに」なんて言ってしまいそうである。
「女の子の日?大丈夫?あったかくして休んでな」
なんて言う奴は、なんだかいけ好かない反面、元カノの教育が行き届いているな、と感心してしまう。まあ、辛さの程度は人によるから一概には言えないけど。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?