no.010 藍染め屋 aiya
010は、藍染め屋 aiya の南部歩美さん(富山県魚津市)です。
自然の恵み “発酵” の力で生まれる藍染めとリンクさせて、米麹の発酵によって生まれる “酒粕・みりん粕・米味噌” を使ったケーキを焼きました。
富山県魚津市の鹿熊(かくま)という地で、藍の種を蒔き、育て、染料となる蒅(すくも)を作り、里山が作る色【KAKUMA BLUE】を生み出しています。
「藍の色の美しさに惹かれたのが、一番最初のきっかけです。」
京都で暮らしていたとき、近所のおばあちゃんから藍染を体験させてもらったことをきっかけで、藍染めの世界に入り込みました。
2012年、まずは10日間、徳島県の藍染職人のもとで勉強をしました。
藍染めの奥深さと難しさも感じつつも、藍染めを仕事にしたいと思ったそうです。
その後は独学で染色を勉強しながら藍染めで人に出会う中で、
「もっと繋がりを広げたい、得意なことを生かしてもの作りがしたい!」という想いのもと、満を持して2015年に藍染め屋をスタート。
最初は自分の暮らしの中の身近なモノから少しずつ染めていきました。
今は衣類の染め替えや、工房での染め体験を主に行っています。
心地よい鹿熊での暮らし。
藍染めで自然や人と繋がり、ワクワクする気持ちを大切にしながら、20年後も鹿熊で暮らす未来を作っていきたいと考えている南部歩美さん。
たくさんのお話を伺いました。
自然と人に優しい選択を
いつでも染め液の様子を確認できるように、住居の中に染め場を構えました。まるで藍と一緒に暮らすように、毎日の生活の中に藍染めがあります。
藍染めで使用する染め液は、「天然灰汁発酵建て」という江戸時代から続く伝統技法で作ります。
藍の葉を発酵させた蒅(すくも)、灰汁(木炭から取った水を上澄み液)、貝灰、ふすま(小麦の表皮)、日本酒を原料としています。
それらを合わせてさらに発酵させて作る染め液は、まさに自然の恵み。
毎日染め液と会話をし(液を攪拌したりpHをチェックしたり)、必要があればご飯(炊いたふすま)を与え、まるで子育てをするように丁寧にコミュニケーションを取ります。
染め液も人間と同じで生きているのです。
同じ人間がいないように、染め液もそれぞれに染まり具合が違ったりと、頭を悩ますこともしばしば。
年老いた染め液は若い染め液よりいっぱいご飯を食べられなかったり、食べすぎると調子が悪くなって、うまく染まらなかったりします。
寿命がきて染まらなくなった染め液は、畑に流して土に還します。
また、たくさんのモノで溢れている暮らしの中でも欠かせない洋服。
汚れや色褪せてしまい、着たいのに着られないお気に入りの洋服を、藍で「染め替える」という選択を提案しています。
ずっと続く大切な暮らし。自然と人に優しい選択をしませんか?
つながるプロジェクト 〜みんなのsukumo〜
「鹿熊が大好きだからずっとこの地で暮らし続けたい、みんなにも住みたいと思ってもらいたい。」
そんな想いから、2020年から【つながるプロジェクト】という取り組みとして、学生さんや地域の方たちの協力のもと、村の耕作放棄地で染料の原料となる蓼藍(たであい)の栽培を始めました。
種まき、苗づくり、草刈り、刈り取りまで、みんなで一緒に育てています。
授業や研究の一環として富山大学や県立大学の学生さんたちと栽培に取り組んだり、藍で染めた布で衣装や小道具を作って地元の高校生たちとミュージックビデオを製作したり。
人とのコミュニケーション・繋がりは、異なる価値観に触れて新しい発見ができるので、ワクワク感がとても心地良いです。
コロナ禍の閉塞感のある中、「一緒に何かをしたくて、なんだか楽しそうだから」という気持ちをきっかけに、皆さんこのプロジェクトに加わってくださいました。
卒業後も足を運んでくれる学生さんがいたり、地域の方たちは見るに見かねて世話を焼いてくれたりと、純粋な気持ちでみんなで藍を育てる繋がりは、損得とはまた少し違った充足感や喜びを与えてくれます。
積極的に人と関わり、人の優しさに触れて生まれる温かさ、さらにそこから繋がりが広がる循環は、まさに人から得られる恵みです。
藍でつながる愛ある暮らし
鹿熊という里山の自然とたくさんの人の触れ合いの中で育まれて生まれる藍色は、KAKUMA BLUE。
「ほんと、一人では藍染めができないんです。みんなを巻き込んでいます。笑」
と、楽しそうに素敵な笑顔でお話をされる歩美さん。
持ち前の明るさと、思い立ったら真っ直ぐ進むパワー。
周りの人たちがどんどん巻き込まれて、時には憎まれ口叩きながらも関わる様子を聞いていると、きっとみんな楽しそうに巻き込まれているんだろうなぁと想像できます。
そしてそれは、きっと歩美さんの人柄なのだろうなと思います。
地球に優しく人に優しく、人と自然と繋がる。
全ては繋がっていて、良し悪しを判断するのでもなく全てを受け入れて、今たしかにある温かなものを大切にすることが、人の本来の幸せの一つなのかもしれないと感じました。
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