夏、来ないで

夏ってどうですか?

青い空から照りつける太陽
隣家に置かれた朝顔のプランター
揺れる氷とだけ書かれた旗
自動ドアから漏れた冷気
持つ手に滴るキャンディアイス
何度見たか分からないサマーウォーズ
思い切り押し込んだら吹き出したラムネ瓶
見えない花火の遠音で知る祭り。




うるせーー!!!!!!

寒い時期に考える夏、暑い時期に考える冬って大抵5割増しで美化されてる気がします。僕は夏が大嫌いです。夏アンチです。

夏が嫌いな理由は1つで、昆虫が大苦手なんですよね。特にセミ。同時に動く3対6本の足や羽音、鳴き声なんかも小さい頃から全部苦手です。

けれど小学生の頃の僕はなぜか"虫が苦手である事"がものすごくダサいと思っていて、それがバレないように虫捕りについて行ってたんですが、セミを鷲掴みにした友達がそのまま僕に近づいてきた時「セミだって生きてるんだから可哀想だろ」と思ってもいないことで謎のキレ方をしました。多分これが僕の人生史上初のマジギレです。じゃあ虫捕りについてくるなよ




ごめんなさい、嘘です。


夏が嫌いな1番の理由は、数年前、友人に誘われ3人で花火大会に行った日。

いくら田舎と言えどその日は人でごった返す最寄り駅ではなく、1つ離れた駅で待ち合わせて、大した距離でもないのでそこから歩いて会場へ向かっていました。すると、友達が「タバコ無くなったから買いたい」と言い途中のコンビニに立ち寄り、特に欲しい物も無かったのとタバコが吸いたかったのもあり、もう1人と雑談しながら店外で待つことに。

ちらほら会場へと向かっているであろう人もいて、「ここから行く人もそこそこいるね」「駅にも何人かいたしね」と話しながらぽつぽつと歩いていく人を眺めていると、当時半年前まで交際していた女性が誰かと親しげに腕を組みながら歩いているのを見つけました。

別れてから時間が経っているのにすぐに相手に気付くのが、なんか未練があるみたいで格好悪くて嫌だなぁ、と思いながら一緒に歩いている男性を見ると、ゆるめの服の上からでもなんとなくわかる恵まれた体躯をしており、腕や首元の余白にはタトゥーが敷き詰められていました。

本能的に、この人と目が合ったらヤバいと思いすぐに握っていたスマホに目をやり、ホーム画面を意味もなく横にスライドし、意味も無く色々なアプリを開いたり閉じたりしてやり過ごしました。多分あっちは微塵も気に留めてないのに。

その日の、曖昧で陰鬱な敗北感で満たされながら花火を見上げた時の気持ちを思い出すから、僕は夏が嫌いです。

あとトイレの待ち時間長すぎて膀胱パッツパツになったからです。

夏になったら冬アンチにでもしましょうかね

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