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わが心の近代建築Vol.1 旧安田楠男邸園

こんにちは!!
今回は初の投稿として、東京の千駄木界隈にある東京都指定名勝の旧安田楠雄邸庭園について記載しますが、この邸宅…
実は、東京メトロのポスター、最近だとNHKで放映されている朝ドラマ、「虎に翼」のロケ地にも使用されています。
まず、この邸宅のある団子坂上界隈は、江戸期は寛永寺の薪場で、1日に千本くらいの薪が採れたことから「千駄木」と呼ばれるに至り、明治期からは、数多くの学識者や銀行関係者の邸宅が立ち並んだことから、「銀行通り」と呼ばれ、発展しました。
今は解体されましたが、「新幹線の父」と呼ばれた十河信二さんの邸宅などもあった地区です。
この安田楠雄邸はもともと、実業家の藤田好三郎氏の邸宅で、1917年から2年以上かけ、1920年に完成した邸宅になります。邸宅の造りは総栂(ツガ)普請といった非常に手の込んだものになっています。現在のツガ材は輸入材が多く、国産のツガは、ほとんど手に入らない、非常に貴重な邸宅になっています。

藤田好三郎氏は、数々の事業に携わり、「としまえん」の創業者として知られており、普請道楽だった彼は、この邸宅も僅か3年で、手狭という理由で手放してしまい、安田善四郎氏に売却。
なお、安田善四郎氏は、安田財閥総裁・善次郎氏の娘婿にあたり、彼のあとは、長男の楠雄氏が受け継ぎ、彼亡き後は文化財として残したいという幸子夫人の意向のもと、日本トラスト協会に寄贈、(庭園含め)東京都指定名勝に選定され、2009年より、広くい一般公開、様々なパンフレットやロケ地に利用されています。

建物メモ
旧安田楠雄邸庭園
★竣工功年:1920年
★施工者:清水組(現在の清水建設)
★文化財指定など:(庭園含め)東京都指定名勝
★交通アクセス:メトロ千代田線「千駄木駅」より徒歩7分
★写真撮影:可(但しフラッシュ厳禁
★入館料:(建物維持費として)¥500
★公開日など:毎週水曜日、土曜日に公開

表門:
2009年春に、ほぼ創建当時の姿に復元されました。当初からの木材をできる限り使用し、無理な部分は、新材を当時の伝統的工法で接続しています。

表玄関:
玄関部分は平屋で、建物正面に突出した形で設けられています。
玄関の建具はガラス戸で、大正期になると、そうした部分にもガラスが使用されるようになりました。
また、玄関正面右側には、家族用玄関があります。

平面図:
平面図を見ると、迎賓棟部分と主屋部分、雁行型に並んでいます。
また、この2つの部分を長い廊下で結んでおり、横に長い、いわば「ウナギの寝床」となっています。
なお、庭園部分には、春と秋、期間限定で入ることができます。

玄関部分:
この家の当主と、格の高い客が使用する正玄関。大きな靴脱石に板敷の式台、杉板の柾目を市松に貼った格天井など、非常に格式高いものになっています。また、舞良戸の裏は襖仕立てになっています。


内玄関:
家族用の玄関で、表玄関の右側にあります。
表玄関に比べて規模は小さく、簡素にできていますが、天井の柾目の板を用いていたり、靴脱ぎ石があったりと、豪勢な造りになっています。


電話室:
ここに残されている電話機は、1927年に登場した「2号自動式壁掛電話機」になっており、これを改良した23号機は戦後まで普及しました。すでに大1925年に安田善四郎名義で小石川局に電話記載がある事から、安田楠雄邸にはこの電話機以前に、違う電話機があったことが推測されます。

応接室:
この邸宅唯一の洋間になっています。
近代建築では、和館と洋館を設けられましたが、時代が経つにつれ、和風建築の中に洋間を取り入れられることが多くなりました、
また、この邸宅はツガ造りでありますが、この部屋にはクルミが多く使われており、庭面にサンルームを設け、境目をガラス戸にしています。絨毯はアトスミンスター織と呼ばれるもので、当初のものは傷んでいたため。国内にあるアトスミンスター織機を使い再現。
漆喰天井は、落とし塗りと呼ばれるもので、花飾りは、寒天の型に石膏を流して作成されました。
また、家具類は、藤武治譜代のものと、安田家が仕入れたものが使用されており、緞子(どんす)とレースカーテンは藤田家時代のもので、都内で大正8年のものが残されているのは極めて珍しいものになります

応接間の暖炉部分:
こちらの暖炉はガスで付けられるものになっていて、いわば邸宅に暖炉をつけるのが当時のステータスでもありました。
暖炉には蛇紋岩が貼ってあり、両側に太い柱はシログルミ製になっており、上部ぬは、クルミをかじるリス、フクロウ、サルといった3種の動物が描かれています。
なお、暖炉上部に掲げられている油絵は、黒田清輝(くろだ‐せいき)と同時期に活躍した、須田揮洲(すだ‐きしゅう)という画家さんの作品になります。

サンルーム:
応接間に付随した部分で、何性格の日のあたりの良い場所にあり、庭面を一望できます。壁・天井共に漆喰塗で、床材には2015年に復元されたゴム製のモザイクタイルが敷き詰めらています。

廊下部分:
玄関部分と主屋部分をつなぐ長い廊下で、東京メトロのポスターなど、様々な企業のポスターやドラマのロケ地に利用されており、人によっては、見おぼえがあるのではないかと思います。
畳と細い板敷部分に分かれていますが、来客時には、来客者が畳部分を歩き、使用人は板の間を歩きました。

残月の間:
畳敷き1畳の間は、京都の表千家の残月亭を写したもので、残月床と呼ばれています。残月床には、安不だけから寄贈された雛飾りや五月飾りなどが期間限定で公開されます。
また、狆潜り(床の間部分の大きく開いた部分)は創建当時のデザインではなく、地震などで多少の被害があったため、デザインのアレンジがあったものと思われます。
また、照明部分は鋳物製。よく見ると、2羽の鳥が透かし彫りではめ込まれています。2本ずつの紐で釣り、内側部分は電気コードになっています。

縁側部分:
天井部分は杉の木目をみせた化粧天井で、西側の一部分は、一抹の網代になっています。また、床(ゆか)の下部分には、時代を背景してか、防空壕になっており、期間限定で公開されています。

茶の間:
家族の憩いの場になっています。障子部分は猫間障子になっており、ちょうど座ってみると、庭の景色が画面あkら切り取ったように見えるようになっています。
また、畳と同じ高さの「踏み込み床」になっており、床柱にはアカマツの皮付き丸太を使用。
また、庭側には、一間幅の庇が張り出して、ガラス戸は無い濡れ縁になっています。

茶の間 反対側の水屋:
茶の間の反対側の襖を開けると、水屋が設けてあり、写真ではわかりづらいですが、天袋部分には墨で梅枝や鉄銀の花が描かれており、日常的に茶を愉しむために設けられました。

台所:
台所部分は、安田楠雄邸のなかで、唯一改造された部分になっていますが、天井の採光部分は、竣工当時からのものになっています。
昭和4年、楠雄/幸子結婚時に改造された部分は、大正期に鈴木商行がアメリカのキッチンを参考に発案/発売した台所を参照して作り替えられました。
戸棚は現在は食器類がしまわれていますが、竣工当時は、蝿帳になっており網戸や引き戸も朗報から開く便利なものになっています。

化粧室:
木の欄間部分は、水の揺らぎをイメージしたものになり、その下の流しは、女性が髪を洗髪する際に用いられ、その際には女中の方も付き添ったそうです。
なお、障子の向こうが母、仏間になっていますが、現在は非公開になっています。

浴室:
ホロ場はゆったりした造りになっており、浴室脇には、シャワーがついており、天井部分の換気口や無双窓から湯気を抜いていました。また浴槽はヒノキ製になっています。


庭園側から主屋を臨む:主屋部分は2階建てになっており、庭園部分は春と秋、期間限定で降りることができます。また、この位置から主屋部分を臨むと、邸宅全体が、雁行型(雁が飛ぶような姿)に配されているのがよく分かります、

2階予備室:
この部屋は、竣工当時は何の用途に使うか不明だったため、このように呼ばれています。全体的に華奢な造りで雪見障子が入っています。

2階予備室反対側:
襖は松林の模様を雲母で描いてあり、光が当たると、やわらかい銀色に光ります。
また、こちらの壁には聚楽壁が用いられ、上部の松の千利休の高弟・吉田織部が考案したとされる織部床が用いられています

2階水屋:
2階で客にお茶を提供するために用いられた部屋で、天井部分は矢羽根の網代になっています。天袋の引戸には「水ごろも」と呼ばれる襖紙で、薄い絹をひっかいて柄をつくり、銀紙に貼ったものになっています。

2階客間:
安田楠雄邸の中で最も格式のある部屋で、床柱には栂(ツガ)の四方柾を使用。右側に天袋付きの違い棚を。左側には、2畳の小間風に付書院が設けられ、縁側との境目には、火灯窓が付けられています。
また、天井も高く、部屋中央には和風の照明が付けられ、天井板は木目の色違いの板目板がつけられています。

2階客間の付書院:
客間の付書院で、細かくタスキ状に入れた組子に花模様の断片板を付け組子の欄間が花模様に見える欄間になっています。

2階次の間:
2階客間と対になる部屋で、注目したいのが欄間部分で、筬欄間(おさらんま)と呼ばれるもので、組子を縦に細かく並べ、横組子を中央に2~3筋、上げ端に1~2筋設けられた欄間で、機織りの筬(おさ)をイメージしたものになっています。
また、客間と次の間の畳には、大正8年竣工時に付けられた民が現在も使用されています。

2階入側から庭園を臨む:
安田楠雄邸は庭園部分も含め、東京都の文化財になっていますが、2階入側から庭園を臨むと、春は桜、秋は紅葉を愉しめます。

2階下り階段前の「竹の節欄間」
本来の「竹の節欄間」とは違い、黒漆塗りの束の左右に透かし彫りの桐板を嵌め込んだものになっていて、桐他の透かし彫りには、大黒様の袋、打ち出の小槌、扇面(末広)が描かれた、おめでたいものになっています。

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