アイアンサイド

映画狂いの26歳。映画について思いついたことを書いてます。

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はじめまして

昨今のウィルスのせいもあり、世界はますますデストピアに接近しています。   テレビもネットも嫌なことで埋め尽くされており、毎朝、目覚めるとメディアに触れるたびに怒りと悲しみが湧き上がります。 「あの映画とか本とかと状況が全く同じだ!」って考えることだけが楽しみですが、暗い結末の話が多いので考えすぎない方が得策ですが。(明るい映画をいっぱい見ましょう。) まぁ、そうは言っても僕もただ生きていくことしかできないわけで、自身の息抜きとしてただ好きな映画についてああだこうだ記して

    • 琥珀色よりも暗く『闇の閃光』

      とタイトルに書いたが映画には琥珀色の目をした人間は出てこない。ジョン•D・マクドナルドの原作(「琥珀色の死」)にだけだ。トラヴィス・マッギーというビーチバムを主人公としたそのシリーズのタイトルにはいつも色の名前が与えられている。で、なんだという話かもしれないが、芸のない邦題『闇の閃光』よりかは関係なくてもリリシズム溢れる英題「Darker Than Amber 琥珀色よりも暗く」が好きなのだ(だから以降これをタイトル表記とする)。 じゃあこの映画が繊細なのかというとそうなの

      • 『ゼブラ軍団』白黒つけろ!

        レイシストのマッドサイエンティストは余命いくばくもない。彼は双頭の実験に取り憑かれており、2つの頭を持つゴリラを作り出すまで成功していた。次は人間だ。というわけで元気な実験体に自身の頭を移植する。頭が体に馴染めば本来の頭の方を切除し、自分の体にしちまえばいい。だが、彼が移植されたのは元死刑囚の黒人だった! かつては恐ろしく馬鹿馬鹿しく、かつモラルのかけらもない映画が存在した。『Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男』(1972)もその1つだ(タイトルからしてアウトだが)。怪奇映

        • その男、ニセ警官につき『オフビート』

          公開当時「コメディの登場人物にここまで共感を覚えたのは久しぶりだ」と映画評論家ロジャー・イーバートから絶賛された『オフビート』(1986)だが、結果としては興行的にも批評的にも散々な成績だった。 図書館員としてうだつの上がらない日々を過ごす主人公ジョーは警官の友人エイブラハムの代役として警察官によるチャリティー・ダンスショーのオーデションを受けることになる。早々に落第すればいいと思っていたジョーだったが、女性警官レイチェルに一目惚れしそこに留まることにする…。 ひたすらに

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        はじめまして

          復讐を乗せてイエローキャブが駆る『ジェイソン 地獄の綱渡り』

          朝焼けのロサンゼルス。帰路につく車。ジェイ・チャタウェイのすこぶるジャージーなスコアが被さる。素晴らしくクールなOPクレジットだ。 すると一転、どこかの一室に場面転換。ソファに座り強張る女と子供。彼女らを囲むガラの悪い男たち。ショットガンを構えるジョー・スピネル!嫌な予感しかしない。ドラッグディーラーだった旦那は彼らを裏切ったらしい。待ってましたとばかりに帰宅した旦那の土手っ腹に火を吹く銃。それを阻止しようとした子供諸共彼らの体は壁に吹き飛ばされる。狂乱の隙に逃げ出す女は、

          復讐を乗せてイエローキャブが駆る『ジェイソン 地獄の綱渡り』

          ジム・トンプスンと暗黒映画たち(前編)

          今更ですが、新年あけましておめでとうございます。今年はもっとマイペースに書いていこうと思っていたら、1月ももう半ばになってしまいました。が、そんなことは気にせず今後もダラダラと駄文を連ねていきます。 というわけで、新年一発目は僕の大好きな作家ジム・トンプスンと彼の原作映画についてです。 ジム・トンプスンとは18の頃に出会った。「おれの中の殺し屋」と題された彼の代表作はまさしく暴力的で、シニカルで狂っていた。僕は瞬く間にそのおぞましさにノックアウトされ、翻訳されている彼の作

          ジム・トンプスンと暗黒映画たち(前編)

          『殺人ブルドーザー』は死せず

          年の瀬に俺は何を見ているのだろうか。 アフリカの孤島で地均し工事を行う作業員たち、だが、落下した隕石に付着する未知の生命体は工事現場のブルドーザーに宿り、殺人ブルドーザー(キルドーザー)と化して人間に攻撃を開始する・・・。 そのものズバリなタイトルの『殺人ブルドーザー』(1974)はユニバーサルが製作したテレビムービーだ。この頃ユニバーサルはテレビムービーに力を入れており、多種多様な作品が生まれてきた。そんな中でも指折りの傑作として名高いのは若きスティーヴン・スピルバーグ

          『殺人ブルドーザー』は死せず

          『ハリー奪還』プロは誰もいなかった

          友人と共にスイス銀行から大金をちょろまかしたバーニーたちだが、すぐさまその金はギャングの隠し財産であることがわかってこりゃ大変だというわけで、ただの一市民が奴らに対抗する術なんて持ち合わせていない。ヒットマンの足音が刻一刻と近付く中、バーニーたちは自分たちで奴らと戦うことを決意するが、このままでは負けてしまうのは明白。そこで彼らは1人のベテラン傭兵を雇い、次々と戦闘準備を開始してゆく・・・。 軽妙でタフな犯罪劇が持ち味のトニー・ケンリックの小説群はどれもパルプ感満載で大好き

          『ハリー奪還』プロは誰もいなかった

          ドラゴンになった男たち『シンデレラ・ボーイ』

          かつて地上にドラゴンが舞い降りた時があった。李小龍またの名をブルース・リーというそのドラゴンは、わずか32年の間に数々の伝説を作り上げ、天高く昇龍していった。 彼の映画は決して潤沢な資金で製作されたわけでも、超一流の監督が指揮をしたわけでもない。反感を承知で言うが、ストーリーなんて使い古された安っぽいものばかりだ。名作『燃えよドラゴン』(1973)だって基本的には『電撃フリント』や『サイレンサー』と同様、007シリーズの亜流映画のひとつなのである。だが、そのどれもが最高に面

          ドラゴンになった男たち『シンデレラ・ボーイ』

          CGと虚構の世界『ルッカー』

          実験的なコンピュータ・アニメーションの先駆者ジョン・ホイットニー・シニア。コンピュータの演算処理による彼の幾何学グラフィック作品は、どれも目がくらくらするほどサイケでイカしたものだ。それにいち早く目を付けたのはサスペンスの神様ヒッチコックで、ヒッチコックはホイットニー・シニアを新作のタイトルバックの演出に起用した。それが、有名な『めまい』(1958)のオープニングだ。 『めまい』のタイトルを担当したのはこちらも伝説的なグラフィックデザイナーのソウル・バスだが、アップで映され

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          奴らを喰らい尽くせ!『ソサエティー』

          残念ながら我々庶民は、人口の1%にも満たない金持ちたちに食い潰されている。その支配構造は今に始まったわけではないが、特権階級と政治の癒着がまるで中世のようにあからさまな極めて腐敗した国に生きている身としては大きな憤りを感じるものだ。 僕たちは蟻のように働かされ、雀の涙の給料からごっそりと税を抜かれる。反面、奴らはその金で下品なパーティを夜な夜な繰り返し、高級な酒と一流シェフの料理をしこたま胃に流し込む。明日になれば糞しか残らないというのに! 享楽的で快楽に浸りきった暮らし

          奴らを喰らい尽くせ!『ソサエティー』

          『ダーティキラー・狂った逃亡者』あばよ、ジャネット!

          世の中には忘れられた物が必ずある。もちろん映画にもそれは存在する。誰にも知られず消えてゆくかもしれない映画が。カナダ製の低予算スリラー『ダーティーキラー・狂った逃亡者』(1975)は正にそのひとつだ。 本作は日本では全くもって認知されておらず、これだけ発達しているというのにインターネットには殆ど情報が載っていない。僅かな情報から推測すると、かつてこの映画がテレビで放映されていたことがわかる。邦題が付いているのも、その放送時に題されたものなのだろう。だが、テレビ放映がどのエリ

          『ダーティキラー・狂った逃亡者』あばよ、ジャネット!

          『ブラック・エース』特上肉を召し上がれ

          『ブラック・エース』(1972)という邦題は、響きだけで付けたようで、よく考えるとなんだか意味がわからないのだが、この映画の原題は『Prime Cut』という。訳すと「特上の肉」といったところだ。 だから、映画はもちろん食肉工場から始まる。ブーブーと豚たちの鳴き声が響き、「Prime Cut」のタイトルが左からスライドしてくる。中央で止まったそのクレジットは、ガチャンという効果音と共に「Cut」の部分だけ切断され、下にずれる。なんとも粋なオープニングだ。 ラロ・シフリンの

          『ブラック・エース』特上肉を召し上がれ

          変な映画〔第8回〕

          第8回目『殺し屋ハリー/華麗なる挑戦』(1974)これを書き始めた今現在は10月27日。インターネットというものは便利なもので、今日はポップアーティスト、ロイ・リキテンシュタインの誕生日と知らせてくれた。 彼の絵はアメリカンコミックスの1コマを超絶拡大したような正にポップなアートで、簡潔ながら力強い線とベタ塗りの鮮やかな色使い、印刷インクのドットまでも再現した奇天烈でイカした作品ばかりなのである。 僕が彼の絵を意識し始めたのは、容赦ない酸っぱさが売りの(元々は眠気覚ましが

          変な映画〔第8回〕

          この街にあるのは『800万の死にざま』かもな

          摩天楼が立ち並ぶニューヨーク。空撮された映像は神のようにこの町を見下ろす。そして、「これまでの映画とは少し趣向が違います」というナレーションで始まるのが『裸の町』(1947)だ。 警察映画の元祖ともされるこの映画は、殺人事件の解決に向かって行われる殺人課の捜査をリアリスティックなスタイルで描いた名作だ。 タブロイド紙のカメラマン、アーサー・フェリグ(通称ウィージー)が1945年に出版した写真集「Naked City」は、大都市ニューヨークの血なまぐさく物騒で、スキャンダラ

          この街にあるのは『800万の死にざま』かもな

          アメリカに生まれて『ボーン・イン・イースト・L.A.』

          ブルース・スプリングスティーンがドナルド・トランプが再選されるようなことがあれば、オーストラリアに飛ぶとインタビューに応えた記事を見た。彼の言葉がどこまで本気かわからないが、これが本当だったら大変なことだ。アメリカは“ボス”を失うのだから。 “ザ・ボス”ことスプリングスティーンは、アメリカを象徴している。舞台にはいつも国旗を掲げ、ブルーカラーたちを主人公に歌う彼の曲は、愛国者たちのテーマソングとされてきた(トランプも集会で彼の歌を流している)。 だが、彼の曲の歌詞をよく見

          アメリカに生まれて『ボーン・イン・イースト・L.A.』