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史料を読んでボロ泣きした話

泊まりがけの出張があると、近くに図書館がないか探して、図書館の蔵書もざっと調べておく癖がある。

特に郷土資料などは現地にいかないと読めないものなので、行ったら貪るように読む。

忘れもしない、2010年の5月27日。

私は池袋の図書館でとある史料を読んでいた。その史料を地元では読む事が出来なかったので、嬉々として図書館へ向かったのだった。

図書館司書の勉強をしたことがあると解るが、図書館で一番多いのは「トイレはどこですか」という通称「トイレファレンス」。

そして涼しくて静かな図書館は、ホームレスの方達が多く集う場所でもある。

彼らは多分、気を遣って、図書館の中でも利用者が少ない場所にいたのだと思う。そして私は、利用者の少ない史料を読む女だった。

読みたい箇所は、大体あたりがついていた。

巻数をしらべ、ざっと読み進めていく。

読みたかった場所に差し掛かったので、一旦止めて、前後を読む。

読んだ史料は日記だった。

数百年前の人物が書き残した日記。それを貪るように読む。《事件》の前後数年間。

読み進めていったとき、気が付いたら、私はボロ泣きしていた。

近くに座っていたホームレスさんたちが、心配して、声を掛けてくれた。あの方達は、結構優しい。まだ使ってないから、と英会話スクールか何かの宣伝が書かれたポケットティッシュを貰った記憶がある。

あの日記を読んで、ボロ泣きした理由は今は多分、説明できる。

私は、あの時、その日記を書いた人に対して、泣くほど怒っていたのだ。なんで!? と。数百年前の人物に対して、私は、本気で怒り、悔しくて泣いていたのだった。

そして、私は、財布を宿に忘れてきたことに気づき、必要な箇所は書き写して、タイムリミットギリギリまで図書館にいた。

泣きながら宿に戻り、そして、絶対に小説書かなければと、強く思ったのを今でもあの時のいかりと悔しさと共に鮮やかに思い出せる。

あの烈しい感情を、どうやって小説にしていいのか、まだよく解らない。

件の史料は全巻を揃え、現在私の書架に収まっている。いまも、数ヶ月に一度、読み返して、唇を噛む。

ps.件の史料は、全十数巻。1冊あたり平均二万円くらいしたのは、家族には内緒だ・・・。


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