3冊の本とTwitter

『京都で考えた』 吉田篤弘/著
非日常へ意識的に行くこと。非日常で考えること。内と外の境界に身を置くこと。京都は水の街だということ。
新しい考え方、自分を見つけ直すきっかけがたくさん転がっていて拾いながら読んだ。

最後の掌編は「考える」きっかけをくれる宿題みたいな感じがした。マルヤマの理想の世界に「 "悲しいこと"があること」というのが気になって、そこからいろいろ考えてみた。
悲しいことがある世界が理想と考えることに違和感を覚える自分は世界には悲しみがない方が幸せだと思っているんだろう。悲しみがない世界=みんな幸せな世界?誰かに必要とされて、希望を持って生きている世界。
この“誰か”、自分の世界が狭い人ほど見つけにくい。コミュニティが広かったり、ワールドワイドで考えられたりする人には“誰か”を感じられやすいのだと思う。
例えば人との繋がりが希薄な人はなかなか前述のような広い視野で考えることが難しいだろう。繋がりが全くなく、頼り頼られる関係にない人が、自分は誰にも必要とされていない、世間に見放されたと感じたら、生きる気力が出てくるのか、自信を持って答えられない。

このことを考えていて思い出すのはドラマ 相棒の「ボーダーライン」。資格を取っても職が見つからず、やっと見つけた寮付きの仕事では部屋がもらえず、親族からも見放され、行政にも助けてもらえず、試食で食いつないできたときに店員から容赦ない一言を浴び、他殺に見せかけて自殺した。

次に思い出した鎌倉市のTwitter。9月に学校へ行くのが辛い子どもたちに「逃げ場に図書館も思い出して」と呟いて話題になった。

本や図書館は、前述のボーダーラインの人(柴田)の救いになれるだろうか。
もしも自分が図書館で働く司書で、柴田が最後の望みを賭けて図書館へ来たらどうする?

私は、行政すら力にならなかったあとの最後の砦が本であってほしいと願う。
今は知識がないし経験不足だから何を紹介するか、どこに案内するかを具体的には出せないけれど、それでも何千年も前からの先人の知恵が綴られ受け継がれてきた考えや思いの結晶の中に、何万冊も毎年出版されている中に、たった1人を救える本がないなんて、そんなことはないと信じたい。

『古くてあたらしい仕事』 島田潤一郎/著
「ひとり出版社」を立ち上げた島田さんのお話。本物の仕事をする人ってかっこいい。道を追求すること、真実を求めること、人を裏切らない、気持ちに嘘をつかない。
相手の気持ちに応えたい、寄り添う、耳を傾ける、向き合う。ひとりよがりではなく、常に相手がいて成り立つこと、意識して忘れないこと。
出版業界に限らずどの業界にも本物の仕事をする職人はいるだろう。自分はそうあれているか?これからも自問自答の繰り返し。

島田さんは「本屋は弱者の側に立って励まし、こんな生き方や考え方もあると粘り強く教えてくれる」(P.191)と書いている。それは本に限らなくて音楽や映画、アニメ、喫茶店、古レコード屋などもそうで、素晴らしい作品は内側から支えてくれるのだそう。

ここでボーダーラインの問題に戻る。
この本を読んだ今時点では、「必ずあなたの支えになる本はあるから一緒に探そう」と言うこと。紹介する本の感想を教えてとお願いすること。
支えになる本は絶対にあるという希望。それに本は書いてあることは変わらないから裏切ったり見捨てたりすることはない。積み重ねが内側を支え、動き出す力になるとお互いに信じて。

Twitterで見つけたこの呟きが正鵠を射ているのかもしれない。

『ガケ書房の頃』 山下賢二/著
自分が今まで歩んできた人生とは全く違う人生を送っているのに、本を通してそれを知ることができることが運命的というか不思議。
やっぱりガケ書房がある頃に一度行ってみたかった。一度ホホホ座でお見かけした時に勇気を出して話しかけてみればよかった。
家出して1人だった山下さんの周りには今ではたくさんの人がいて、それはきっと山下さんの行動の先にいつもお客さんがいたから。それを応援する人が集まって今のホホホ座に繋がっているんだなあ。
何故か読後にエンディング曲のようにくるりの音楽が頭の中で鳴った。
「誰でも敗者になったときは、町の本屋へ駆け込んだらいい」(P.284)という心強い言葉。ホホホ座へ行きたくなる。

自分にとって本屋は安息の場所だと思う。学生の頃悲しくなったりストレスが溜まったりしたら恵文社一乗寺店に行った。あの空間は自分を落ち着かせるし、今の自分が無意識必要としている本に、言葉に出会うことができた。
ホホホ座は行くまでの道も含めてワクワクする。通りかかった公園の景色まで今も印象に残っている。いろんなジャンルがあって知らないという0の状態からこういう価値もあるんだという1の状態に変われるところだと思う。そこから1を増やしていくかは自分の興味にもよるけれど多様な価値観が示されてる貴重な空間だと思う。

この3冊を読んで、私は本の力を信じたい。本は最後の希望になると信じる。世間知らずの理想論かもしれないけれど。

よし!明日からもがんばろう!

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