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川瀬あやめさんと過ごす最後の3ヶ月 その①

2023年9月26日18時00分

「川瀬あやめ 卒業のお知らせ」とだけ書かれたツイートが目に入ってきたときの時間が止まった感覚は、今でも鮮明に覚えている。

最初は何かの間違いだと思った。「ああ、あやめちゃんがレギュラーを務めている何かの番組から降板するってことかな?ひとりふんどしとか」と、思考を逃避させたりしてみた。もちろんそんなわけはなく、ツイートのリンクをクリックした先には「川瀬あやめは2023年12月一杯でukkaを卒業、スターダストプロモーションを退所し、芸能界から引退する」ということが一切誤解の余地無く記述されていた。

率直に言って信じられなかった。「アイドル・川瀬あやめ」という人物像と、「卒業・引退」という事象とが、私の頭の中で全く結びつかなかった。

ももクロに憧れ、アイドルになるために芸能界入りし、演技などアイドルがよくやる歌と踊り以外の仕事には一切興味が無いと断言する、ナチュラルボーン・ライブアイドル、それが私の中の川瀬あやめだった。

いつかの配信(おそらく運営に卒業を相談し始めるよりは前のタイミング)で、「10年後はどうしていたいか」という話題になったときに「わからないけど、少なくとも歌は歌っていたい」と話していたのを覚えている。あやめちゃんのことだから、アイドルを辞めても何らかの形で人前で歌うことは続けるんだろうなという確信があった。

でも彼女の決断は「ももクロのいるスターダスト以外で芸能活動をするつもりは一切無い」という潔い、潔すぎるものだった(グループを自発的に辞める以上、スタダにとどまってソロ活動をするという道は元よりあり得なかっただろう)。

卒業をマネジメントチームに相談し始めたのは昨年(2022年)の春頃だという。22年春といえば、りなるり加入後最初の新譜(MORE!×3)がリリースされ、メジャーデビューが決まった頃。ukkaが再び上昇気流に乗り始めたそのタイミングで卒業を決めていたというのが、私にとってはさらに信じがたさを増幅していた。

さらに言うなら、2022年春というのは、ちょうど私がukkaの現場に足繁く通い始めるようになった時期と一致する。卒業を決めたところにノコノコ現れた新規に対し「おせーよ」と思ったかどうかは知る由も無いが、そう思われたところで仕方ないタイミングだった。

卒業を決めた理由として「ukkaのためにできることはもう何も無いと思った」と語っている。その言葉の真意を探るのは簡単ではない。「ukkaのためにと言うけれど、あやめちゃん自身はどうなの?もうアイドルでいたいとは思わなくなったの?」と聞きたい欲求に駆られたが、それは一介のオタクが踏み込むべきことではないだろう。案外、『川上アキラのひとりふんどしGirl』(2023年10月2日放送回)で冗談めかして言った「私、ももクロになれなかったから辞めるんですからね!」というのが本音に一番近いのかもしれない。たとえそうだとして、ここまで8年以上もアイドルでい続けてくれたことに感謝こそすれ、誰が責められようか。

一つだけ証言できることは、「卒業を決心してからも、仕事に手を抜いたことは一度もない」という言葉に嘘は無いこと。むしろ手を抜いてあのパフォーマンスだったら逆に天才すぎる。

12月30日に開催される卒業ライブまでの3ヶ月間を後悔無いように過ごすこと。卒業発表当日に行われた個人配信を通じて、それは私達ファンとあやめちゃんとの間で暗黙のうちに結ばれた約束となった。


9/30 ukkaワンマンライブ「cresc.」

それから4日後の9月30日にはukkaワンマンライブ「cresc.(クレッシェンド)」が控えていたが、わずか4日では心の整理ができようはずも無かった。あれほど楽しみにしていたライブなのに、渋谷の駅に着いてもまだ、いったいどういう気持ちでライブに臨めばいいのかわからないままだった。

Veats Shibuyaに集まった人々はみな、少なくとも表面的にはいつものように、物販列に並び、入場待機列に並び、完売御礼となった満員のフロアでovertureを待った。私もそうした。

レア曲『わたしロマンス』で幕を上げたこの日のライブの4曲目に『TAiLWiND』が来た。今年春に発表された「新生活応援ソング」はこの日、全く異なる響きをもって届いた。

僕らが選んだ道は少し 違ったけどね 今もまだ
同じ気持ちでいるコトを 忘れたくないんだ

ukka『TAiLWiND』より

歌詞の「コト」はカタカナ表記となっているが、これは実はあやめちゃんが文を(手書きで)書くときの癖でもある。まあこの歌詞を作るにあたってそれが意識されていたとは思わないが、こういう符合を見つけて勝手にエモくなるのはオタクの習性なので許してほしい。

続く5曲目はあやめちゃんフィーチャー曲の『ファンファーレ』。心なしかいつもより多くの緑ペンライトが灯った気がした。

フルエモーション
だけどきっと サヨナラはいつの間にか
訪れて 次のストーリー
僕に鳴り響くファンファーレ

ukka『ファンファーレ』より

後日の発表であったが、あやめちゃんの卒業ライブのタイトルは「次のストーリー」と題されることとなった。「(芸能界)引退」という言葉は、オタクにとっては「終わり」に等しい。でも人間・川瀬あやめにとってはまだまだ「次」がある。そんなことを教えてくれる良いタイトルだと思った。

序盤のうちにこの2曲を披露したことは、「泣きたい奴は今泣いとけ、残りの時間は全部『楽しい』で溢れされてやるからよ!」という宣言だったのかもしれない。

cresc.のタイトル通り、尻上がりに盛り上がっていくセトリにひたすら身を委ねる時間が実に心地良かった。

その途中には、新曲『ティーンスピリット』も披露された。「まわる」というキーワードが名曲『まわるまわるまわる』との繋がりを想起させる、今という青春を生きる若者の心のきらめきが映し出されたukkaらしい楽曲。それが第一印象だった。

本編ラストは『Viva La Vida』。会場に向かう電車の中で、もしこの曲が今日来たら泣いちゃうなと思っていた曲なのだが、実際には泣き笑いのような変な顔にこそなったが涙がこぼれることは無かった。

「どうか今日は楽しいという気持ちだけを持ち帰ってほしい」そんなukkaからの、言葉ではなくセトリとパフォーマンスに込められた思い――それはあくまでいちオタクの想像にすぎないけれど――がしっかり届いたような気がした。

ライブを終えて外に出ると、それまで頭の中でぐるぐると渦巻いていた「川瀬あやめはなぜアイドルを辞めるのか」ということにまつわる行き場の無い思考が、きれいさっぱり洗い流されているのを自覚した。

左脳的な「情報」ベースでのああだこうだなんてのは、右脳的な「体験」で簡単にひっくり返る程度のものだって、知っていたはずなのに改めて教えられた1日だった。

この先3ヶ月にわたる、あやめちゃんの卒業・引退という動かし得ぬ事実を自分の中で消化していく作業の、大きな一歩をこの日踏み出せた、そんな気がした。


その「cresc.」が明けた10月1日。今年3月に乃木坂46を卒業し、その後芸能活動を休止していた鈴木絢音さんが活動を再開することが発表された。

去る推しあれば帰ってくる推しあり。「悲喜こもごも」とは、まさにそのときの私のためにあるような言葉だった。


10/9 ukkaメジャー1stフルアルバム リリースイベント@光が丘IMA

9月30日のライブ中、新曲『ティーンスピリット』の披露に先立って、この曲が収録されたukkaメジャー1stフルアルバムが12月20日に発売されることがアナウンスされており、そのリリースイベントが10月9日から開始された。

初回となる10月9日の会場は光が丘IMA。もう何年前か忘れたが、ここの上階にあるIMAホールでブラスアンサンブルのイベントに演者として参加したことがあって、その時以来の来場となった。まさか次に来るときにはドルオタとしてやってくることになるとは、その時には想像もしていなかった(笑)。

cresc.の時には特典会(抽選制)に参加できなかったので、ここがあやめちゃんの卒業発表後始めてあやめちゃんと直接話せる場となった。

1部のお話会であやめちゃんへの感謝の気持ちを伝えた。湿っぽい話はあやめちゃんは嫌いだと思うので、これを区切りに残りの3ヶ月はひたすら「楽しむ」ことを心に決めた。

ありがたいことにこの先にもたくさんのリリイベが組まれている。リリイベとしては初めての遠征参戦も計画した。すべては後悔無くその時を迎えるために。


10/14 ukkaワンマンライブ「déjà-vu」

10月14日にはukkaワンマンライブ「déjà-vu(デジャヴ)」が、東京キネマ倶楽部で開催された。

このライブについては、事前にメンバーから「普段のライブとは全く違う、コンセプチュアルなライブになる」旨が予告されていた。

その予告通り、この日のライブでは、キネマ倶楽部の舞台環境を活かした「AYAME BAR」を舞台とする寸劇と昭和の名曲のカバーを組み合わせたパートが多くの時間を占めた。(私自身は観覧していないが)同じキネマ倶楽部で開催された「東京やかんランドvol.3 鶯谷のばら」で男役を演じ好評を博したりじゅちゃん初め、各メンバーとも熱演・好演を見せてくれた。

中でも個人的に印象的だったのは、もあちゃんのあまりにもかわいすぎる『プレイバックPart2』。他のメンバーがオリジナルの百恵ちゃんよろしくクールにこの歌を決めた後にもあちゃんが登場し、曲に似合わない「かわいい」全開モードで歌う。普通だったら「いやいやこの曲はそんなかわいいものじゃないよ」とツッコミたくなるとろだが、もあちゃんの有り余るアイドル力で、曲そのもののイメージをひっくり返してしまった。アイドル界のコペルニクス。

他にも、りじゅちゃんとるりちゃんの高飛車お嬢様(?)同士の「グリコ」対決、もあちゃんによる「元祖アイドル」南沙織の名曲『17歳』カバー、空ちゃんの普段まず見られないブリブリアイドル全開の『年下の男の子』、郷ひろみルックで登場したりなちゃんの『言えないよ』(ゴチャの伏線回収!)とそのバックで見事なダンスを披露したあやめちゃん、そしてカバーブロックの掉尾を飾り次に控える『ガールズナイト』の世界観へと見事に繋いだあやめちゃんの『キッスは目にして』など、見どころ満載のブロックだった。

この寸劇&歌謡曲ブロック、単にいつもと毛色を変えてみようというだけでなく、「個の力」をより引き出し見せつけようという意図もあったんじゃないかと推測している。あやめちゃんがやや控えめな配役になっていたのは、来年以降ukkaの中軸を担うことになる5人を見せたい、という意図だったのかもしれない(あるいは単純にあやめちゃんが「演技」にNGを出したからかもしれない)。

かくして、ukkaのこれからを紡ぐ5人がこんなにも輝けるということを存分に見せつけた上で、「いつもの」ukkaの名曲・盛り上がり曲を畳み掛け、あやめちゃん卒業発表直後の9/30ではあえて序盤でさらりと流した『ファンファーレ』をラストに持ってくるというセトリの妙。

後ろ向きな気持ちではなく、「これからもukkaは輝き続けられる」という確信に満ちた気持ちで聴くファンファーレは実に爽快だった。

ダブルアンコールに応えてステージ上にりなちゃんとるりちゃんが戻ってくると、このライブを観覧に来ていたスタプラ研究生の宮沢友ちゃんと坂井小春ちゃんがステージ上に呼ばれた。私服ではなく、白の衣装に身を包んだ2人の姿に、何かを予感したオタクは多かっただろう。その場ではりなるりと他愛もない会話を交わすのみで、ステージ裏からのもあちゃんからの呼びかけに応じる形で4人がハケていく。誰もいなくなったステージ上のスクリーンに「宮沢友・坂井小春 ukka加入」「2024年1月21日 恵比寿LIQUID ROOMワンマンライブでお披露目」 の旨が映し出されると、フロアは大きな拍手に包まれた。

この新メンバー加入の知らせを私は「ukkaはまだまだ守りに入るつもりは無いよ」という宣言として受け止めた。「今のukkaの姿」も「目指すべきukkaの姿」も、生々流転と変わり続けていく。だからこそ「今」の彼女たちを一瞬たりとも見逃してはいけない。改めてそんな気持ちにさせられた。


10月22日 メジャー1stフルアルバム リリースイベント@ダイバーシティ東京プラザ

人生で2度目の最前列をゲットしたこの日の2部、『WINGS』を間近で目と耳に焼き付けられたことは僥倖だった。

あやめちゃん渾身のラスサビは、早くも日が傾きかけたお台場の晴れ空に、どこまでも高く羽ばたいていった。

きっともうすぐ、また一つこの楽曲は重みを増すことになる。そうだ、この曲はukka版『きっかけ』なんだ、と乃木坂兼オタの私は思った。


2023年10月25日、川瀬あやめちゃんは22歳になりました。あやめちゃん、おめでとう。

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