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社会保険労務士への道7

年収の壁 現実

こんにちは。やまだです。
国は、賃金を上昇させる方向に動いていますね。
地域別の最低賃金も上がっています。
アルバイトさん、パートさん嬉しいですよね。
でも、中にはそう思っていない人も・・・。


ドラッグストアの店長をしている。
スタッフの就業等管理も、とても大事な業務だ。
個人ごとの契約内容に沿い、
誰に、いつ、何時間、どの時間帯で勤務してもらうかなど調整する。
有給休暇なども法令通りに消化してもらわなければ・・・
など、同様業務に従事している人は、みな同じことを考えている。
そして、年収の壁について憤りを感じている。
(同職種の方は、ほぼ100%そう思っているのではないだろうか。)

年収の壁。
103万、106万・・・など、いろいろ聞く。
少し複雑だ。
(ちなみに年収とは、給与支給総額である。)

年収100万円
市町村などにより違いがあるが、
概そ、これ以上の収入になると住民税が徴収される。

年収103万円
これ以上の収入になると、所得税が発生。
また、扶養に入っている人の場合これ以上の収入になると、
扶養者が、配偶者控除や扶養控除を受けられなくなってしまう。

年収106万円
一定規模以上の企業に勤務している人は、
これ以上の収入になると、社会保険に加入しなければならない。
(社会保険加入要件は、その他全部で5つある。)

年収130万円
これ以上の収入になると、
企業規模に関係なく社会保険に加入しなければならない。

よく言われるのは上記あたりだろうか。

どれも大事なのだが、ここで着目するのは
年収106万円の壁だ。
これこそ「THE・壁」といっても過言ではないだろう。

店舗で勤務される、いわゆるパートさん。
大きく扶養内か否かに分かれる。
扶養に入っていないパートさんは、収入の上限はない。
しかし扶養に入っているパートさんにはその上限がある。
年収106万円を超えてしまうと、社会保険に加入しなければならない。
つまり、社会保険料を徴収されてしまうのだ。
(ちなみに、年収106万円 ≓ 月収88000円 だ。)

社会保険料は個人差はあるが、年間10万円を超える。
すると、下記のように歪な状況が起きる可能性がある。
①Aさんの年収105万円、控除額5万円とすると、手取りは100万円。
(扶養内ぎりぎりの収入。)
②Aさんの年収が5万円UPして、年収110万円
 控除額5万円、社会保険料15万円とすると、手取りは90万円。
収入がUPしているのに、手取り額が減ってしまう。

もちろん社会保険に加入すれば、
厚生年金制度への加入や傷病手当の給付など恩恵もあるが、
目の前の所得が減ってしまうことには変わりない。

さて上記Aさんは、元々年収105万円だったが
時給1000円で換算すると、年間1050時間勤務したことになる。
では賃金上昇を加味して、時給が1500円になったらどうだろうか。

時給1000円→1500円。
一見、嬉しいことと思ってしまう。
しかし、時給1500円で1050時間勤務すると、
年収150万円を超える。
社会保険に加入して、社会保険料を払わなければならなくなってしまう。
Aさんが社会保険に加入したくない(扶養内を希望)の場合は、
年収106万円以内になるように、勤務時間を減らさなければならない。

ならば勤務時間を減らせばいい、という単純な話に思えるが
ここで机上と現実の認識の違いが出てくる。

ドラッグストアのような比較的小規模の小売店には、
元々必要以上のスタッフがいない。
Aさんの時間を減らしたらその分、時間を充足させなければならない。
しかし、他のパートさんも年収の壁があったりで、増やせない。
扶養外のパートさんは年収上限はないが、
会社の就業規則や体力的な面で勤務時間を増やせない。
そして、新規募集をかけても
良い人材はすぐに見つからない。
(毎週・毎月固定された時間帯で、○○時間だけ勤務してくれなんて
なかなか適する人はいない。)

店舗管理者の視点で、店舗運営が困難な状況を話しているが
パートさん自身も困っている。
最低賃金が上がっても、
Aさんのような扶養内パートさんは、収入の上限額は変わらない。
勤務時間を減らすのみだ。
パートさんは、何年も同じ職場の仲間であることが多いから
仕事への責任感や、他パートさんとの助け合い精神がある。
そんな中勤務時間を削減して、
他パートさんや仕事に迷惑をかけてしまうことに対して
罪悪感をもってしまうのだ。
また、体調不良等で急な欠員が出た場合、
ありがたいことにパートさんたちは助けようとしてくれるが、
「壁」があることによって勤務できず、気持ちだけをいただくことも多い。
別日と交換する場合もあるが、困難な場合もある。
(感情論で書いてしまったが、人間が複数働く環境なのだから
感情をある程度くんでも然るべきではないか。)

もちろん、最終的には正社員が調整をかけるが
それは根本の解決にはならない。
中長期的ではなく、短期的に乗り切っているに過ぎない。

賃金上昇はありがたい反面、混乱も起きているのだ。
ちなみに、先日話題になった年収の壁・支援強化パッケージは、
弊社や同業他社数社では保留状態になっている。
適用された企業はいかほどあるのだろうか。


毎回最低賃金上昇のたびに、現場は本当に混乱します。
人件費予算もあるため、単純に雇用分母の増加も困難です。
少し現場の内情が入りすぎたかもしれませんが、
現実に現場で起きている話です。
ただ、これは同業種のみの問題の可能性があります。
全産業、全職種、全業界から見たときに、
少数派なのかもしれません。
(ここでマイノリティという表現は不適切でしょうか)
長々と失礼致しました。
本日もありがとうございました。

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