無題

wowaka(ヒトリエ)フォロワーのボカロP、及びリスペクトしているボカロ曲

先日、合成音声専門の音楽発掘サイトKiiteで wowaka(ヒトリエ)フォロワー、及びリスペクト曲 というプレイリストを作ったので、その補足がてら記事を書き始めてみました。kiiteでは書くスペースの無かった選曲の理由やwowaka氏を強く感じる箇所、できればフォロワーさんの楽曲全般のどの辺りにwowakaさんが影響を及ぼしてるのかまでつらつらと書いていきたいと思います(妄想の類ですが)。なお動画の並びは上から発表された順で、参照しやすいよう日付が近いwowaka曲のニコ動投稿日も一緒に並べて書いてあります。


2010.5 wowaka、ニコニコ動画に「ワールズエンド・ダンスホール」投稿

ハチ - マトリョシカ / 初音ミク・GUMI(2010.8)

ハチさんは2009~2017年の間、主に初音ミクを使ったポップミュージックをニコ動に投稿していたボカロP。2013年には"米津玄師"の名義でシンガーソングライターとしてもメジャーデビュー、TVアニメやドラマ、映画の主題歌起用に始まり、武道館ライブや紅白歌合戦への出場、他アーティストへの提供曲がレコード大賞受賞と一般にも大人気を博しました。
さてハチさんのボカロオリジナル13作目である本作について、自分はハチさんの「雨降る街にて風船は悪魔と踊る(ニコ動削除済)」の東欧的なセンスと「ワールズエンド・ダンスホール」のロックのリズムが出会って生まれた名曲だと思っています。それまでは主に幻想系のマーチドラム中心のポップソングを投稿していたハチさんが、ガラリと音の変わったこのロックナンバーを出してきたのは、当時ニコ動のランキングでお互いに切磋琢磨していたwowakaさんが三ケ月前に投稿した「ワールドエンド・ダンスホール」に影響された部分が大きいと思うのです(確信)。グリム童話のような物語世界からビートに乗って飛躍したハチさんはまさに無敵。「マトリョシカ」は「ワールドエンド・ダンスホール」やその他の人気曲を押さえ2010年のボカロ曲No.1ヒットに輝きました。そういう新しい音への挑戦を始めた曲であっても、この時点で既に"踊れるダンスロック"としての米津玄師の音が完成しているのは恐るべきところ。もし同じ伴奏を使って本人がミクやGUMIの代わりに歌って米津玄師のシングルとしてリリースしたとしても全く違和感ないでしょう。なお他のハチさんの曲では米津玄師名義の「ゴーゴー幽霊船」などからwowakaさんの影響を感じることができます。

ほぼ日P - ウオッチマンのうた / 初音ミク(2010.12)

時事ネタを皮肉ったコミックソングを数多く量産しているほぼ日P。ネタがバズった次の日に関連ソングを投稿するようなスピード感が魅力です。この曲は歌詞もメロディもいつものほぼ日Pで特にwowakaさんぽくはないですが、サウンドだけは『あ、今流行ってるあの曲(ワールズエンド・ダンスホール)な感じだ』と強く印象に残りました。

2011.5 wowaka、ニコニコ動画に「アンハッピーリフレイン」投稿

kemu - インビジブル / GUMI・鏡音リン(2011.12)

wowakaさんを追い掛けるように2011~2012辺りのボカロシーンを代表するボカロPの一人、kemuさん。ニコ動に投稿したオリジナル曲が全9曲、その全てが再生数200万回越え(2020年2月現在)など現在も圧倒的な人気を誇っています。デビュー曲「人生リセットボタン」からして炉心融解や東方サウンド、wowakaさんの曲などを咀嚼してkemu節に昇華しているような老練さを感じさせました。二作目となるこの曲ではAメロからスピードアップされたwowaka的早口歌唱を聴くことができます。kemuさんは六兆年と一夜物語みたくサビに入ると途端に民謡っぽいメロディになるのが面白いですね。

EZFG - とても痛い痛がりたい / VY2・VY1V3(2012.1)

EZFGさんはハードコアなデジロックにテンポ良いスピーディーな歌い回しが特徴的な楽曲を作る方。サウンド回りにはそれほどwowakaさんと共通点は見られませんが、ボカロオリジナル処女作「サイバーサンダーサイダー」と本曲(二作目)の早口で抑揚の少ないボカロ歌唱はwowaka作品の大ヒットがあってこそ生まれたものではないかと思っています。その後の作品では歌唱スピードは落ち気味の傾向にあり個人的には残念でしたが「じっっと見ている」「グルカゴン」辺りは初期の雰囲気のある嬉しい楽曲でした。

トヲルヲト - 妄想×妄想=現実逃避の日常 / IA(2012.9)

この曲は自分がwowakaフォロワープレイリストをkiiteで作ろうと思い立って色々調べるうちに動画シリーズ wowakaをリスペクトするボカロPたち(ニコニコ動画) で初めて知った曲です。

トヲルオトさんはこの曲が処女作。これまでにボカロオリジナル曲を三作ほどニコ動に投稿しており、そのどれもが伴奏全般、歌詞から歌の節回しに至るまでwowakaさんの影響が色濃い仕上がりになっています。御本人もファンを公言しているだけでなくwowaka周辺、例えばこの記事に載っているようなフォロワーの曲もよく聴いているようで、並々ならぬwowaka愛を感じるボカロPさんです。純粋な熱烈フォロワーは今の所彼が一番最初でしょうか。もしも彼より以前にwowakaフォロワーを宣言した人がいましたら是非コメント欄で教えて下さい。

セカイ系P - セカイ系少女は水槽で笑う / 初音ミク・歌愛ユキ(2012.10)

セカイ系Pこと、ぬえさんの曲は最近(2021年)知ったので、投稿された7つの動画のうち4つは既に非公開となっており、残念ながら残った3曲を聴いた時点での紹介になります。
ぬえさんの初投稿作である今作は冒頭のハウリング音から始まってイントロの印象的なピアノリフ、ユキの歌い回しや曲構成まで全体的にwowakaさんの影響を強く感じる内容になっています。また残りの2曲ともwowaka色の濃い仕上がりになっており、トヲルオトさんに続く純粋な熱烈wowakaフォロワーと言えるでしょう。

トーマ - アザレアの亡霊 / GUMI(2012.11)

トーマさんはちょっとラウドが入ったゴシック、耽美系のロックサウンドが魅力的な人気ボカロP。ノリが良く、跳ねたリズムに少し不気味で洒落た雰囲気のサウンドはwowakaさんとは別口で、後の蜂屋ななしさんやユリイ・カノンさんに繋がるようなトーマサウンドを確立していた感があります。さて五作目の「バビロン」でちらりとwowakaっぽいサウンドが散見されたもののその後はしばらく見ることもなく、トーマさんがしっかりとwowakaサウンドを咀嚼して自分のものにした感あるのが本作「アザレアの亡霊」でしょう。畳みかけるような早口に緩急付けたリズムがかっこいいです。でも今聴いてたら川本真琴とかの影響の方が濃いかもしれない…。

れるりり - 聖槍爆裂ボーイ / 鏡音レン(2013.8)

れるりりさんはしっとりバラードでもノリノリダンスミュージックでもどんな曲調でもバッチリ仕上げてくる職人気質の実力派ボカロP。スガシカオばりのファンクロックが得意です。そんなれるりりさんのこの曲は、再生数790万回超えの一作目「脳漿炸裂ガール」を筆頭とする超人気シリーズ〇〇〇〇(漢字四文字)ガール&ボーイの三作目。「脳漿炸裂ガール」はwowakaさんというよりどちらかといえばkemuさんやピノキオピーのイメージが強かったのですが「聖槍爆裂ボーイ」の方は十二分にれるりり流に咀嚼されたwowakaサウンドが存分に味わえます。流行りのサウンドを取り入れつつ『こういうアレンジだともっとカッコいいだろ?』とれるりりさんがニヤリとほほ笑む顔が見えるようで実にニクい出来です。

日向電工 - スパークガールシンドローム / 初音ミク(2013.9)

日向電工さんはボカロファン一般にはwowakaフォロワーとして一番市民権を得ているボカロPではないでしょうか。デビュー作から最新作まで一貫してwowaka的な音作りを続けており、なおかつ自身の熱烈なファンをもガッチリ獲得している点でとても稀有な存在です。それこそ”パクリ”などという言葉が吹き飛んでしまうような目覚ましい活躍ぶりです。活動休止期間にはファンによる日向電工さんごめんなさいシリーズ(ニコニコ大百科)というムーブメントすら起こしてしまう愛されっぷり。
さて、日向電工さんの人気の理由は、例えばコミックファンが人気同人作家に向けるような『本家も大好きだけどこういうifも読んでみたい』という期待を音で形にしている感じでしょうか。日向さんが持つ溢れんばかりのポップセンスがwowakaファンが見たかったwowaka作品の色々な顔を『これ!こういうのが聴きたかったの!!』といった風に聴かせてくれるわけです。日向さんのアレンジはとてもポップで賑やかで、音の楽しさに溢れているんですよね。wowakaさんの楽曲は虚飾の無い肉体のみのシンプルな感じなので、その辺の寂しさを埋めてくれる…というか、アンハッピーリフレイン以降発表されないwowakaさんのボカロ新作不在という穴を日向さんが満たしてくれた部分は非常に大きい気がします。

MARETU - 少女ケシゴム / 初音ミク(2013.12)

MARETUさんの動画は一見してMARETUさんと分かる、大きなシンボルマークが描かれたモノクロサムネイルが特徴。ゴシック・パンクな世界観でハードコアなロックナンバーを発表している人気ボカロPです。よくwowakaフォロワーとして名前が挙がるMARETUさんですが、全体を通してみるとあまり強い影響は感じられませんでした。むしろピノキオピーに近いような…?確かにモノクロのハートのシンボルマークを見るとどうしても連想してしまいますが。その中で明らかに意識してると思った楽曲がこの「少女ケシゴム」。MARETUテイストでしっかり料理されていますがイントロと歌い回しにwowakaさんを強く感じました。あとは「スヂ」「ミセエネン」辺りの歌い回しがそれっぽいかな?

Janfir - インディゴザムライ / 桃音モモ・松田っぽいよ(2014.12)

この曲は動画 wowakaをリスペクトするボカロPたち シリーズで初めて知った曲です。

ジャンファーさんのUTAUオリジナル曲三作目。UTAUカップルのデュエットが聴きどころのロックナンバーで、BPM早めのスカっぽいリズムとシンセのリフがwowakaさんを思わせます。ジャンファーさんは処女作の「グジャラートラッキーゲージ」からして”日向電工さんごめんなさいシリーズ”なのでフォロワーなのは間違いないですが、処女作と本曲以外の楽曲はミドルテンポのポップバラード中心でwowakaさん的な要素は無いので注意。どちらかといえば日向電工さんのファンかもしれませんね(今思った)。

この記事を読んでいただいたジャンファーさんご本人にTwitterでお話を伺ったところ、この曲のアレンジについて当時自分は伴奏に携わっておらず、アレンジ担当の芋犬ポテトさんがwowakaさんや日向電工さんのファンだったことが大きいとし、今現在自分にwowaka、日向電工的な音楽的影響が強いかというとそうとも言えない。でもwowakaさんや日向電工さんはよく聴きますとコメントをいただきました。ありがとうございます。

こんにちわ谷田さん - 落下ウサギと寡黙な傍観者の手記 / 初音ミク(2015.2)

こんにちわ谷田さんは2014~2018年の間、主に初音ミクと鏡音リンを使用したギターロックをニコニコ動画に投稿していたボカロP。2018年にはロックバンド「sajou no hana」のベーシスト"キタニタツヤ"としてもメジャーデビュー、ソロ活動としてもゲーム、アニメやドラマの主題歌を担当するなど活躍の場を広げている人気ミュージシャンです。そういえばwowakaさんの大学の後輩でもありますね。
さて谷田さんのボカロオリジナル曲6作目である今作。Aメロが「ワールドエンド・ダンスホール」ですね。暴れ回る太いベースラインがカッコイイロックナンバーです。この一つ前の投稿作「迷いヒツジと孤独な散歩者の夢想」がハチさんぽいマーチングポップだったので、この曲のwowakaっぽさは狙った感ありますね。なお次作の「散るカラスと静謐な白巨塔の崩落」はイントロのギターからハッキリとしたヒトリエぽさがあって、歌詞の語り口もwowakaさんの影響を感じるところがありました。

稲葉曇 - ループスピナ / 歌愛ユキ(2016.5)

稲葉曇さんは主に歌愛ユキを使用したハードなギターロックを投稿しているボカロP。グレースケールで描かれた渋い色合いの動画にバラードやポップな路線に逸れることなく常にキメキメのギターロックに徹するストイックな姿勢が非常にカッコイイ方です。この「ループスピナ」から続く「ナミダ電波」「パスカルビーツ」の三曲は随所にwowakaっぽいニュアンスの音が見られます。歌い回しというよりはギタリフ、リズム方面が大きいでしょうか。そういう意味で「ノンユース」「アンチサイクロン」辺りからも何となくwowoka味を感じたり。稲葉さんの曲は処女作「秘密音楽」から七作目「うつしあそび」まで曲タイトルがしりとりになっているのですが、wowakaさんも同じように処女作「グレーゾーンにて。」から七作目「ずれていく」まで曲タイトルがしりとりになっているので、その意識の程が伺えます。

ろくろ - 色喰いの鬼 / GUMI(2017.2)

ろくろさんの処女作はイントロのギタリフから分かりやすいwowokaテイスト。和メロな感じのギターロックが得意なろくろさんですが、バリバリのwowakaフォロワーというには他の曲からはあまりwowaka的なものを感じません。どちらかといえばハチさんやkemuさん辺りの影響の方が強いかも。これぞボカロ曲、という曲調をそれぞれ楽曲毎に試してるような、器用さや老練さを感じます。

appy - 読書対決 / 初音ミク(2017.4)

appyさんはディスコビートなリズム中心のポップロックを投稿しているボカロP。動画「wowakaマン」を作ってしまうほどのwowakaファンであるとともに、上記の”日向電工さんごめんなさいシリーズ”を二作も投稿している日向電工さんの大ファンでもあります。ちょっと上の方で紹介したボカロP、ジャンファーさんの初投稿作であり”日向電工さんごめんなさいシリーズ”でもある「グジャラートラッキーゲージ」のアレンジもappyさんが手掛けており、そのファンの程が伺えます。
さて、appyさんの初期の作風はどちらかといえばアンダーグラウンド寄りの自由なもので、今の作風に固まってからもたまに遊び心に溢れた動画を発表することも。さてwowaka曲からの影響としては2013年の「640」から始まって、2014年の「ワンショット・ワンダー」とポツポツと影響を感じさせつつ、2015年には「どうだい?」「私は道化」「本当の冗談」「雨乞いのダンス」と四作立て続けにwowaka系ダンスロックを発表しています。この辺りappyさんはホント「ワールドエンドダンスホール」が大大大好きなんだなあという感じです。そして2016年の「セーフティダンス」を経て2017年のこの曲「読書対決」が”過去最大級にwowaka(ニコ動のコメントより)”と言ってもいい決定版なナンバーでしょう。以降の作品はappyさんなりのwowokaさんの咀嚼が終わった感じで、ニュアンスはそこここに感じるものの借り物感はなく、appyさん自身の音として昇華されてる気がします。

かいりきベア - イヤガール / 初音ミク(2017.4)

かいりきベアさんは主にスピード感あるネガティブ少年少女のマイナー調ギターロックを投稿している方。代表曲「ベノム」と「アルカリレットウセイ」は再生数300万回越え、いくつかの作品は小説化されているなど勢いのある人気ボカロPです。wowakaさんぽい音は「セイデンキニンゲン」「マイナスレッテル」の歌詞や歌い回し、「ウルサイマン」「バラバラココロ」のギタリフなど曲のそこここに感じますが、kemuさんやハチさんなど各世代を代表する人気ボカロPからの影響も色濃くwowakaフォロワー色が強い、とは言い切れないところがあります。特に2017、2018年辺りの楽曲はハチさんの影響が強いと感じました。他にもれるりりさんやナユタン星人のアルバムに参加する時はちゃんとそれっぽい曲アレンジになっていて手練れの職人魂を感じます。この「イヤガール」はベアさんの曲の中では一番トータルでwowakaっぽいかなと思ったナンバー。軽快なギタリフに韻踏みまくりの言葉遊びな歌詞がいかにもな楽しい一曲です。

ていくる - プレイバックバース / 初音ミク(2017.8)

ていくるさんは動画のサムネイル(縮小画像)を一見しただけでそれと分かる、音もイントロを一聴して分かる通りのwowakaフォロワーのボカロP。独自色としては間奏の音遊びが挙げられるでしょうか。サンプリングボイスを連打して『うぇうぇうぇ』とやったり、ダブステップ的にワブルベースをぎゅわぎゅわやったりと、間奏がEDMタイムになってるのが処女作「デザイナーベビー」から6作目「ルシッドナイトメア」まで続く大きな特徴です。投稿を重ねつつ様々な音色を試して歌唱パートもwowaka色が薄れてきたかな…と思ってきたところで7作目の「デッドロイド」では間奏だけにとどまらないEDMとwowakaサウンドの絶妙な融合を果たしてくれました。この一曲でwowakaさんの単なる模倣から離れた、独自のていくるワールドが確立されたのではないかと思います。

2017.8 wowaka、ニコニコ動画に「アンノウン・マザーグース」投稿

椎乃味醂 - モノクロール / 初音ミク(2017.8)

この曲も動画 wowakaをリスペクトするボカロPたち シリーズで初めて知った曲です。

konaka(椎乃味醂)さんのニコ動初投稿作はグレースケールな画像にwowakaビートが相まっていい感じにwowakaリスペクトな一曲。二作目の「ループ・アクトレス」ではビートではなく主に歌い回しからwowakaテイストが感じられます。しかし三作目の音には残念ながらwowaka感は無し。その代わり2016年辺りからの新しいボカロックの潮流を感じさせるアレンジになっており、新鮮な気持ちで楽しむことができます。

watakushi - イミナン / 初音ミク(2017.9)

この曲も動画 wowakaをリスペクトするボカロPたち シリーズで初めて知った曲です。

watakushiさんのニコ動初投稿作で、少しゆったりめのミドルテンポのロックナンバーです。イントロのギタリフとサビ辺りの早口な歌い回しにwowakaテイストを感じられるはず。こういうシンプルで穏やかな曲の中にwowakaさんの存在を感じるのもなかなか悪くないもんです。なおwatakushiさんの二作目は幸福感ある明るめのポップスで、残念ながらwowakaさん色は見当たりません。

r-906 - 夢遊病ダンサー / 初音ミク(2018.4)

r-906さんは主に初音ミクを使用したテクノポップナンバーを投稿しているボカロP。初投稿作である今作は冒頭から全編に渡って流れるベースラインが耳に残る四つ打ちポップロック。イントロこそ目立った引用はありませんが、歌詞、歌メロ、曲構成と曲全体がwowakaメソッドで出来ている超リスペクト作と言えるでしょう。特に歌詞はwowakaファンならニヤリとする単語や語り口が頻繁に出てくるので楽しめること請け合いの一曲です。なおr-906さんの他の楽曲にはwowaka色は残念ながら見当たらず。

eye - ジョーカーダンス / 初音ミク(2018.8)

この曲も動画 wowakaをリスペクトするボカロPたち シリーズで初めて知った曲です。

eyeさんのニコ動ボカロオリジナル処女作は、全編に流れ続けるピアノ・シンセのフレーズが特徴的なwowakaリスペクト曲です。「ローリンガール」系と言っていいでしょう。三作目の「カラーブラインド」でもイントロや間奏で同じようなキーボードフレーズを聴くことができます。やっぱりこのフレーズには華があるので使いたくなりますよね。二作目で見せたようにクラブミュージック系の音も得意なようで、今後の活躍が楽しみなボカロPさんです。

mao sasagawa - パブリック・シークレット / 初音ミク(2018.10)

mao sasagawaさんは2013~2018年の期間に主に初音ミクを使ってギターロック及びエレクトロニカ楽曲を投稿していたボカロPで、後に”笹川真生”の名義でシンガーソングライターとしてメジャーデビューもしています。
本作はmao sasagawaさんのボカロオリジナル42作目にして最後のボカロオリジナルナンバー。歌詞やサウンド全編から漂うwowakaテイストから影響は言わずもがな、「アンノウン・マザーグース」以降の音な感じがします。フレーズとしては繰り返される歌メロのファ# ファ# ファ# ミ ファ# ミラ、ファ#のフレーズがかなりそれっぽいかと。ちなみにmao sasagawaさんの他の楽曲からはwowakaっぽさは感じられず。

ゐろは苹果 - ペンギンガール / 初音ミク(2019.3)

wyiroha(ゐろは苹果)さんはバリバリのwowakaリスペクトな音作りのボカロP。初投稿作の「ソリッドガール」からして濃厚なwowaka臭漂うダンスロックでした。二作目「アイソテーゼ・ハートレス」ではサムネイルが「アンノウン・マザーグース」を連想させるハート型シンボル、曲冒頭が「裏表ラバーズ」っぽいBeep音でリスペクトする箇所にもなかなかこだわりがありそうです。イントロがwowakaフレーズなリスペクト曲は珍しくありませんが、wyirohaさんのは歌い回しよりもサビの高音域で歌メロがwowakaっぽく聴こえてくるのが面白いなと感じました。この四作目「ペンギンガール」もwowakaリスペクトの一曲ですが、普通に完成度の高い曲に仕上がっていて、日向電工さんみたくポップな”if wowaka”として聴けてしまうのがスゴいです。2019年4月投稿の「赤」以降の曲はwowaka的な音やスピード感は鳴りを潜め、テンポを落としたマイナー調ポップロック中心の音作りになっていきます。

えいぐふと - インパルス・ダンスホール / 初音ミク(2019.3)

この曲も動画 wowakaをリスペクトするボカロPたち シリーズで初めて知った曲です。

えいぐふとさんは主に夜をテーマにした曲を発表しているボカロP。ピアノを使用したシティポップなバラッドやエレクトロニカ風味のポップソングが得意分野。近作「想像録」からはそこにラップ交じりのR&Bサウンドが加わり、楽曲の時代性や魅力を大きく増しています。さて、wowakaサウンドの影響を受けた曲としては三作目の「エンドレススクエア」と続く四作目「トモダチ化学反応」、そしてこの八作目「インパルス・ダンスホール」が挙げられます。こちらは曲タイトルからも分かる通り「ワールドエンド・ダンスホール」的な音作りの一曲。wowakaリスペクト曲の中では非常にソフトで丸っこい感じの、かわいいサウンドなのが特徴と言えるでしょう。特にAメロの左で鳴ってる木琴の音がマジかわいい。えいぐふとさんの楽曲全体を見てもロックビート的なものはこのwowaka系三作くらいしか見当たら無いので、えいぐふとさんの中にロック=wowakaぐらいの強い認識があるのではと(勝手に)想像してみました。

2019.4/5 wowaka 他界

すりぃ - テレキャスタービーボーイ / 鏡音レン(2019.4)

イントロがわかりやすく「ワールズエンド・ダンスホール」ですね。すりぃさんは2018年デビューでこれまでに発表した10曲のうち、この曲を含む2曲が100万再生を達成している人気ボカロPです。wowaka曲からの影響としては「メンヘラ取扱説明書」のAメロ歌唱部分や「表裏一体」のAメロから間奏までの歌い回しと間、そしてこの曲のイントロなどが挙げられます。三作目毎にwowakaリスペクトな楽曲を発表しているので、次の新曲(2020年10月現在)はもしかしたらwowakaリスペクト系の曲かもしれませんね。

追記:ふと気になってWikiを見てみたのですがwowakaさんのギター愛器はテレキャスターだったのですね。だとするとwowakaさんの逝去がアナウンスされた五日後に投稿されたこの曲は、そうとは書かれずともおそらくすりぃさんがwowakaさん追悼の意を表した一曲だったのでしょう。

こんな世界じゃもう 息ができなくて
さよなら告げた現実に 許してはくれないか 弱い僕たちを
また何処かで会いましょう

NIMONO - クラウドナイン / 初音ミク(2019.9)

NIMONOさんは主に激しめのギターロックな曲を投稿しているボカロP。NIMONOさんの曲は後半に曲調が変わるのが特徴で、そこが魅力の一つとなっています。この曲「クラウドナイン」はボカロオリジナル4作目。歌愛ユキを使用した前作、前々作「navy love」「Lorem」でもwowakaさんを思わせるテンポ良い早口な歌い方は見られましたが、この曲は分かりやすくギタリフが「ワールドエンド・ダンスホール」ですね。ギタリフに反して意外と歌い方は普通だな…と思ってると、しっかり後半で畳みかけるような早口歌唱が始まってwowakaファンもニンマリです。

カジャ - アンクローズ・ヒューマン / 初音ミク(2019.10)

この曲はカジャさん、傘村トータさん、ねじ式さん、cilliaさんというwowakaさんを尊敬してやまない4人のボカロPによる共作で、この年の4月に亡くなったwowakaさんへの追悼曲でもあります。「ワールドエンド・ダンスホール」をメインに色々なwowaka曲へのリスペクトを捧げつつ、ボカロ及びメジャーの音楽シーンを駆け抜けた故人を悼むメッセージに満ちた一曲となっています。アレンジも調声もクオリティの高い一曲ですが、音以上にインパクトあるのが傘村トータさんによる歌詞。普段はピアノ弾き語りなスタイルで自分の心情を切々と訴えるボカロ曲を投稿している方ですが、その実力を存分に発揮した素晴らしい弔辞となっています。

「あの声があなたに似てましたか」「あの音は同じ気しますか」
「あのリズムは同じでしょうか」「音づかいが似ていませんか」
いいえ愚か似ても似つかない! 真似するだけ無駄というもの
あの人を再現しようとして あの人のことを汚さないでよ!

……この記事を書いている自分には結構耳に痛い言葉です。ここだけ切り取ってしまうとwowakaリスペクトな曲やフォロワーの存在を否定した歌詞に見えてしまいますが、自分にはwowakaさんの作る音楽に似た曲や影響を受けた曲に対するファンの過敏過ぎる反応について書かれた一文として読めました。この続きではwowakaフォロワーや曲を作らない人も含めたファンを ”あなたが育てた「愛」知る人” と表現し ”蒔いた種は花に” とwowakaさんの影響を受けた人や作品を肯定する内容になっていきます。そして結びの一言ではwowakaさんのことを何と呼んでいるのか?それは是非自分の耳で確かめて下さい。なお”wowaka追悼曲リンク”タグで他のPによる追悼曲も聴くことができるので興味のある方は是非どうぞ。

Chinozo - ヘルヘイマ / 初音ミク(2019.11)

Chinozoさんは主に初音ミクとv_flowerを使用してバンドサウンド系のポップロックを発表している方で、代表曲の「グッバイ宣言」が再生数ダブルミリオン越えを果たしている人気ボカロPです。ボカロオリジナル三作目のこの曲はイントロが「ローリンガール」ですね。テンポのいい歌い回しに歌詞も述語の連発から韻踏みまくり、使われているグレースケールの(裏表ラバーズ的なレイアウトの)画像からもwowakaさんを強く意識した楽曲なのが伺えます。Chinozoさんはごく初期の作風だけにwowaka色が見られる感じで、この「ヘルヘイマ」の他には二作目の「セラヴィ」でwowaka的なサウンドを聴くことができます。

KinoS - 想像の破壊 / 初音ミク(2019.12)

KinoSさんのボカロオリジナル初投稿作はスピード感あるポップロックナンバー。イントロのチップチューン(ゲーム機の内蔵音源、俗にいうファミコン音源)からしてwowaka風ですが、チップチューンなせいかアンダーテール(2015年発売の人気PCゲーム)のBGM風だとコメントに書かれています。……言われてみるともしかしたらイントロはそちらの影響の線もあるかもしれないですね。もとい。この曲の言葉遊びのような繰り返しの歌詞と歌い回しは間違いなくwowoka印であると思われます。

シーソー 思想 思考 直ちに実行 事象希望 現世(うつしよ)に偽装

この下りはコトバのリズムの良さにシビレますね。シメの『人生経験 輪廻転生』の部分はハチさんの曲からの引用だと思われますが。wowakaさんの影響はさておいても、イントロ途中のキー下げに始まって後半部分の畳みかけるような早口ラップや間奏のダブステップっぽい歪みベース、アウトロの『くっく くっくっく』などアイデア満載でとても魅力的な一曲です。KinoSさんは二作目「ナイトメア・レイヴィーナス」でも音周りから画像まで随所にwowakaさんが感じられる作りになっておりオススメです。

気分屋の心延え - 享楽的エンドガール / 初音ミク(2020.2)

気分屋の心延え(雨木青)さんは主に音街ウナと初音ミクを使用したポップソングを投稿しているボカロPさん。2017年のボカロオリジナル処女作から数えて23作目のこの作品、実にスマートにwowakaさんぽさを醸し出していて私結構好きなナンバーです。グレースケールに図形と画像からして一見それっぽい感じがするものの、前曲「hakushi」も同じような画像でシティポップな楽曲だったので、あまり意識してるわけではないかもしれません。雨木さんのごく初期の曲には微妙にwowakaっぽさが感じられるものの、それ以降はこの「享楽的エンドガール」までそれらしい曲は皆無なので、wowakaさんの影響と言う意味では不思議な一曲です。楽曲自体は歌詞といい、音の重なりといい、Beep音といい、とても細かいところまで行き届いた感のあるwowakaオマージュで、ファンであれば楽しめること請け合いの一曲です。特に間奏がカッコ良くてお気に入り。

水野あつ - プレストアパショナート / 初音ミク(2020.2)

2019年デビューの水野あつさんはせつなかわいいポップソングを作る方。wowakaさんのフォロワーというよりはドが付くほどのヨルシカ及びn-bunaさんファンといった感じの作風です。水野さんはここ最近色々な曲調に挑戦しているようで、その挑戦の一つがこのwowaka系ポップロックなのかなと感じました。自分に合うスタイル、ファンが自分に求めるスタイルを模索しているような、そんな気がします。とはいえソフィストケートされたアレンジにどこかから持ってきた感は無く、自分なりのポップスアレンジに昇華している感じが良いです。

Sohbana - ハルシネイト・デイト / 初音ミク(2020.2)

Sohbanaさんは少し鬱屈した感じのパンキッシュなギターロックを投稿しているボカロP。この曲はボカロオリジナル6曲目、腰の入った踊れるリズムが気持ちいい一曲です。前のめりなBPM早めのリスペクト曲が多い中、ミクが早口にもなることもないこの落ち着き払ったリズムはちょっと楽しいですね。コメントにもあるようにニコ動のwowaka曲というよりはヒトリエの方の影響が強いように思います。5作目「Strider」ではもっと跳ねた感じの縦ノリのヒトリエ系ギターロックが楽しめるのでそちらも是非聴いてみて下さい。

Chirone - メレンゲドール / 初音ミク(2020.4)

碧波ちるさん(一部歌詞)とLonePiさん(その他全部)の共作による本作。全編wowaka的なリズムに満ちた軽快ポップソングです。wowaka的と書きましたが、わりとどの曲からの引用とかは明言しづらい、でもリズムもメロディもしっかりwowakaメソッドという不思議な楽曲なのです。強いて言えば「裏表ラバーズ」のメロディ辺りでしょうか。Chironeの二人がwowakaという存在を自分の中でじっくり咀嚼して消化した後にできた、そんな作品なのかもしれません。LonePiさんの楽曲では他に「ガラクタマインド」のイントロや「チャイルドロック」のピアノ伴奏などからwowakaテイストを感じることができます。

カンザキイオリ - ゼロ / 鏡音レン(2020.5)

2014年(当時17歳!)から主に初音ミクと鏡音リン・レンを使用したメンタル病みソングを発表しているカンザキイオリ(黒柿)さん。発表したオリジナルソング39曲のうち7曲が100万再生越えを果たしている人気ボカロPで、wowakaさんの処女作「グレーゾーンにて」をカバーもしています。
さてボカロオリジナル36作目となるこの曲、Aメロのリズムというかベースラインが「ワールドエンド・ダンスホール」ですね。それに曲乗りするようにテンポ良く歌メロが紡がれています。グレースケールの動画に特有の早口も繰り出されていて完璧な仕上がり。なおカンザキさんの他曲では「ループミスアンダー」「本ショー」等からwowakaテイストを感じることができます。

ほろゐ - 白鯨症 / v flower(2020.6)

ほろゐさんはv_flowerとIAを使用したバンドサウンドの楽曲を発表しているボカロP。7作目のこの曲ではイントロの特徴的なBEEP音からの激しいピアノ旋律で否応なくwowaka曲との関連性を感じさせます。難しめの熟語連発に加え韻を踏んだ言葉遊びとリズミカルな歌の節回しはほろゐさんの楽曲全般に見られるもので、フォロワーとまでは行かなくてもwowaka曲な曲調が強めなPさんと言えるでしょう。他にも「アクタゴト」「憧憬モルフォロジー」辺りの楽曲でwowakaさんぽさを感じることができます。ちなみに自分がほろゐさんで一番好きな曲は「夜と嘘」だったりします。

志田雛希 - カイマシンナリティ / 初音ミク(2020.6)

主に初音ミクを使用した機動歌姫ヴォーカリオン(少年向けアニメOP風楽曲に付くタグです)系のポップロックを投稿している、志田雛希(しだ ひなき)さんのボカロオリジナル7曲目。分かりやすくテンポの良い早口言葉でAメロが「裏表ラバーズ」な感じですね。サビメロはどちらかといえばNeruさんの影響の方が強めな気がします。バラードやトランス、和風曲など引き出しの広いPさんですが他の楽曲にはwowakaさん的な影響は見られず。

つーくん - 生存ステップ / 鏡音リン・レン(2020.10)

2012年頃からボカロPや歌い手、ミックス師など様々な活動をしているつーくんさんのボカロオリジナルソング21作目。この曲も「ワールドエンド・ダンスホール」からイントロとAメロですね。その後サビにかけて和風のメロディになっていく展開が意外ですが、これは和風曲を得意とするつーくんさんらしさと言えるでしょう。

ぷく - デキソコナイ / 鏡音リン(2020.11)

ぷくさんの初投稿作である和風メタルナンバー。wowaka作品の引用元としては最もポピュラーな「ワールドエンド・ダンスホール」から、珍しくイントロではなくAメロを持ってきているのが面白いです。上にある動画のサムネイル画像にもwowaka曲を強く想起させるハート型シンボルが描かれているのが見えます。

ナミダメ - 独白にエポック / 初音ミク(2021.1)

バンドサウンドのミク曲を発表しているナミダメさんのボカロオリジナル4作目。この特徴的なリズムは「ワールドエンド・ダンスホール」からですね。Bメロの畳みかけるような早口の熟語連発や韻を踏む、しりとり等歌詞の言葉遊びからもwowakaさんの影響を強く感じさせる一曲です。

らる。 - ロックアンド / 鏡音リン(2021.2)

らる。さんは2017年から鏡音リンを使用したマイナー調のロックナンバーを発表されているボカロP。バンドサウンドの中にピアノやキーボードの旋律が混ざるのが特徴です。15作目になるこの曲はリンちゃんがポンポンと言葉で煽ってくる軽快なポップロック。ノリの良さに加え合いの手もカワイイ一曲です。こちらはイントロとAメロがお馴染み「ワールドエンド・ダンスホール」ですね。

Mogaki - ベイカーベイカーパラドクス / v_flower(2021.2)

Mogakiさんは年一作のペースでギターロックなボカロ曲を発表しているボカロP。ボカロオリジナル三作目は疾走感あるポップロックナンバー。一、二作目は初音ミクを使用しておりflowerを使うのはこれが初めて。イントロのシンセフレーズが裏表ラバーズ+ローリンガールな感じでwowakaさんを思わせますね。歌メロ的にはじんさん辺りの影響が強めかもしれませんが、モノクロ基調の動画に加え、韻を踏んだ難解な熟語連発に感嘆符交じりの歌詞がwowakaリスペクト感あってとても良いです。

rei shirai - カドリール / v_flower(2021.4)

主にflowerを使用したマイナー調のロックナンバーを投稿しているrei shirai(となりの白井さん)さんのボカロオリジナル5曲目。イントロがお馴染み「ワールドエンド・ダンスホール」ですね。難しめの熟語連発の歌詞や特に歌メロのリズミカルな節回しがwowakaさんの影響を強く感じる一曲。こなれた具合のwowakaリスペクト感が洒落てて良いです。

柊マコト - メランコ・リリー / v_flower(2021.12)

柊(ひいらぎ)マコトさんは主にGUMIとflowerを使用したピアノポップを発表しているボカロP。ボカロオリジナル9曲目のこの曲はイントロのリズムから「ワールドエンド・ダンスホール」ですね。冒頭の低速再生があちらのハウリング音と対になっている感じでリスペクトを感じます。柊さんの他の曲としては、7作目の「ローリンダンスガール」がタイトルからしてwowakaっぽい感じですが特にそういうことはなく、全体的にはバルーンさんの影響が強いかなと感じました。

百夜カエル - 東京シノノメ逃避行 / 初音ミク(2022.1)

初音ミクを使用してポップソングやロックナンバーを投稿している百夜(ももよ)カエルさん。毎度キャッチーなメロディーと弾むようなリズム、全体的にクオリティの高い音作りでリスナーを楽しませてくれるアレンジ巧者のポップ職人です。
さてカエルさんのボカロオリジナル3作目である本作はイントロがおなじみ「ワールドエンド・ダンスホール」ですね。その特徴的なリズムのギタリフで曲終りまで持っていくかと思いきや、突然のウィスパーボイスからシンセソロ、EDM的なサウンドと思わぬ展開を見せアウトロまでしっかりと楽しませてくれます。メロディはポップでキャッチーでなくては!というカエルさんの熱いポリシーが感じられるような一曲に仕上がっています。なおカエルさんの他の作品では処女作「ズノリズム」で同じようにwowakaさんの影響を聴くことができます。

作者不明 - アンナンセンス・リゲイン / 初音ミク(2022.7)

ニコニコ動画上で2022年7月27~31日の四日間にわたって催されたソフトウェアシンガー限定の匿名楽曲投稿イベント、無色透"名"祭。応募曲の総数が3000曲を越えるなどボカコレに匹敵するような大きなイベントとなりました。開催期間が過ぎると名前を明かすPが大半でしたが、この曲のように名前を伏せたままのPも結構な数に上りました。誰の曲かは謎のまま、そのミステリアスさもこのイベントの魅力と言えるでしょう。
さて本作「アンナンセンス・リゲイン」。タイトルは「アンハッピーリフレイン」からでしょうか。Aメロの歌い出しが「裏表ラバーズ」風で全体的には「ワールドエンド・ダンスホール」を模倣した一曲となっています。歌詞も「~だわ」「~しようか」などwowaka常用表現がたっぷりと使用されておりwowakaファンも納得のリスペクト曲に仕上がっています。そういったwowaka印の曲でありつつ無色透名祭というイベントを思い起こさせる言葉も歌詞に入っていてなかなか洒落た一曲です。

椿 - パラダイム・バレット / 可不(2022.10)

椿さんのボカロオリジナル二作目は勢いを感じるハイスピードなロックナンバー。冒頭のイントロが「ローリンガール」で、その叩きつけるようなピアノリフで曲ラストまで走り切ってる感があります。とはいえ一本調子ではなく、曲のそこここで緩むリズムの緩急とか1:23からの早口歌唱など曲構成も凝っておりオリジナリティを感じる楽曲です。なお処女作の音周りにwowaka臭はありませんでしたが、虚空に問いかけるような歌詞スタイルと言葉選びに今作同様wowakaさんの影響を感じました。

るらるらるらら 目元以外見えないでくれ!
完全な顔面への設計図 もうBDD!BDD!いや

【初投稿】シュウケイキョウフshow!!/椿 feat.可不【オリジナル曲】より

五十嵐ハル - エンプティドール/ v_flower(2022.10)

主にv_flowerを使用したバンドサウンドの青春パンクを投稿している五十嵐ハルことぺむさんのボカロオリジナル15曲目。イントロのフレーズが「裏表ラバーズ」な感じで、A、Bメロの歌い回し等にwowakaさんを感じます。歌詞の『心内環境はグルグル回り切っちゃって』という下りはまさにwowakaメソッドですね。『心内環境』という単語は「裏表ラバーズ」からの引用なので、オマージュ曲としてのはっきりとした意思表示と言えるでしょう。
なおハルさんの他曲では「フクサヨウ」「アンサーレイン」などごく初期の曲の歌詞と歌い回しにwowakaさんを感じることができます。

wotaku - スカイスクレイパー / 初音ミク(2022.12)

wotakuさんは2018年辺りからVtuberのイメージソングやインストゥルメンタル、初音ミクを使用したポップソングを投稿、ロックやポップは勿論ジャズからメタル、クラブミュージックまで幅広いジャンルの楽曲制作を行っているボカロP。2019年に発表された「ジェヘナ」は200万再生を越える人気曲となりました。
さてそんなwotakuさんのボカロオリジナル(たぶん)52作目はハイスピードなロックナンバー。イントロのギタリフで一直線に最後まで走り切る感じがカッコイイ一曲です。一般的にwowakaリスペクト曲というとAメロの次は大抵本家のように間奏が入るのですが、そこに韻を踏んだ早口歌唱を詰め込むことで疾走感を増しているのが良いです。それでいて1番サビの後にリズムを緩めて緩急つけてきたり、ラストのBeep音もお洒落。正に手慣れた職人によるリスペクト曲と言えるでしょう。
なおwotakuさんの他の楽曲でwowakaさんからの影響を感じる曲は「ヸシュヌ」辺りかなと思いましたがコメントに”トーマさんの影響がつよい”とあったのでこの曲についてはそちらかもしれません。

ヨツバ - ガールスケープ・バイエスケープ / 初音ミク(2023.2)

ヨツバさんのボカロオリジナル3作目はテンポの良いリズミカルな四つ打ちデジロック。投稿コメントに『多方面にリスペクト』とあるようにリスペクトを捧げているのはwowakaさんだけではないかもですね。シンセ中心のEDMなサウンドの他、wowaka的な歌詞とその歌メロのリズム、歌い回しに強いこだわりを感じる一曲です。このいかにもwowakaさんが書きそうな純度の高いリスペクトサウンド、一聴の価値があります。

駄菓子O型 - 非虜徒 / 初音ミク(2023.12)

駄菓子O型さんはボカコレ2022秋からボカロ曲をニコ動に投稿し始めたボカロP。初投稿作ではtreowさんを彷彿とさせる変拍子ドラムンベースでリスナーの度肝を抜き、その後もコンスタントに高クオリティのデジタルサウンドを投稿し続けている期待の新人Pです。
さて駄菓子O型さんボカロオリジナル6曲目であるこの曲ですが、聴き慣れた早口のこの歌いまわしは裏表ラバーズのAメロからですね。裏表ラバーズよりもスピードを増したこのまくし立て感が、ノイジーでリズムや効果音を殊更に強調するジャンル、ハイパーポップのサウンドと相まって気分を高揚させてくれます。他、歌詞にはそれほどwowaka的な記号は発見できませんでしたが、繰り返される"独り言"という単語とヒトリエの相似、各コーラスの最後に来るカタカナ1文字の”サ”ネ”ム”の使われ方が裏表ラバーズの同じく1コーラス目最後の”生。”と似ているなと感じました。
なお駄菓子O型さんの他の楽曲にwowakaっぽいものは見られず。

背面8回宙返り - いろはうた / 結月ゆかり(2024.2)

背面8回宙返りさんは2023年からニコ動への投稿活動を始めたボカロP。主に結月ゆかりと初音ミクを使用したポップロックを発表しています。ラップよろしくテンポよく繰り出される弾むような歌メロが持ち味。
さてそんな背面8回宙返りさんのボカロオリジナル11曲目。次々と変化していくルールに従って五十音表を埋めていくという、ビジュアル的にも音的にも凝ったギミックが楽しいこの曲、リズムと歌いまわしはアンノウン・マザーグースからですね。言葉遊びが好きだったwowakaさんの意思を継いだような遊び心溢れる一曲に仕上がっています。