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映画『水は海に向かって流れる』舞台挨拶で広瀬すずが語ったあるシーン

25日に、TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた『水は海に向かって流れる』の舞台挨拶を見てきた。2回ともチケットが取れたので印象に残った内容を書きたいと思う。

映画『水は海に向かって流れる』は広瀬すず作品にしては公開規模も大きくなく、興行収入としてもさほどではないかもしれない。でもたぶん、俳優のキャリアとしては重要な作品になっている。というのは、これまで演じてきた役柄と明白に違うからだ。

広瀬すずの10代の代表作はやはり『ちはやふる』の綾瀬千早だった。爆発するような生命力をスポーツに叩きつける天真爛漫な主人公。そしてもう一つは『海街Diary』で演じた浅野すず、悲しみと憂鬱を抱えた少女像。「なぜか私には親がいない役ばかり来る」と本人が言っていたこともあったが、浅野すずと綾瀬千早という正反対の「陰/陽」の少女像をまだ芝居を始めたばかりの中学から高校くらいで完璧に演じ分けることができたのはやはり卓越していて、他の役の演技はこの2つのバリエーションだったと思う。要は150kmのストレートとフォークという2種類の決め球を最初から持っていたわけだ。

日本のアイドル女優としては成功が約束されたようなポジションを獲得したにも関わらず、ここ数年の広瀬すずは迷い続けていたと思う。ほとんど生まれつき投げられた、多くの俳優志望者が渇望しても手に入らないような「決め球」を投げたがらないような所があった。

映画『水は海にむかって流れる』が広瀬すずにとって重要な作品になったと思うのは、映画の中で演じている役、投げているボールが、綾瀬千早、浅野すず、ストレートとフォークのどちらでもないからだ。映画の中で演じる榊千紗は、広瀬すずにとっての「第三の球種」になっていると思う。

過去に見せた演技の中では、野田秀樹の舞台『Q』の第二部で演じた生霊の演技が近いかもしれない。ミステリアスな、凄みのある目で考えを読ませない。もともと目に力のある役者なのだけど、今回の映画では今までの「少女役」ではない、高校生の主人公に対する年長者の役をよく演じていた。本人もかなり手応えがあった雰囲気で、舞台挨拶では心に残ったシーンをいくつか語っていたので月額マガジン部分ではそれと、それから映画の中で心に残った「広瀬すずが輝いていないシーン」のことを書きたいと思う。



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絵やイラスト、身の回りのプライベートなこと、それからむやみにネットで拡散したくない作品への苦言なども個々に書きたいと思います。

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